SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】508 アフリカ&米国の首脳会議そしてEU危うし
- 2022年 12月 18日
- 評論・紹介・意見
- EUサハラ国連平田伊都子西サハラ
2022年12月12日、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、13日から3日間バイデン大統領がアメリカ・アフリカ首脳会議を主催すると、発表しました。
その中で、大統領はAUアフリカ連合をG20に参加させる意向だと、述べました。 翌12月13日、即、林芳正外相はアメリカの意向に反応して、AUアフリカ連合のG20参加について「前向きに検討を進めている」と、同調しました。
「日本が担っている役割には深い失望しかない」と、ロシアが反発しました。
その一方、EUはワールドカップがらみの汚職にまみれています。
① アフリカ・アメリカ首脳会議:
アフリカ・アメリカ首脳会議でバイデン米大統領の7兆5000億円アフリカ支援金発表に先駆けて、ウクライナ・ゼレンスキー閣下はG7に緊急ウクライナ越冬金会議を開かせた。ゼレンスキー閣下の鶴の一声で、バイデン米大統領以下G 7 の面々がビデオ会議を開いた。「今年は世話になった。来年もよろしく」と、閣下は越冬支援金の確約をさせた。
ウクライナ越冬支援金を日本などのG7諸国に押し付けて、バイデン米大統領はアフリカ諸国に金をちらつかせ、得意になってプーチン・ヘイトスピーチをぶち上げた。ヨーロッパの植民地支配から独立した時から現在にいたるまで、アフリカ諸国の多くがロシアの支援を受けている。バイデンはロシアへの裏切りをそそのかした。さらに、<3年間で総額7兆5000億円の支援金>を連呼し、「民主主義の後退に立ち向かうための投資をする」と、中国が進出しているアフリカ経済界に、殴り込みをかけた。
「首脳会議参加国に3年間で500億$」と誘われて、断るアフリカの国はない。みんな、金がないのだ。威張って施しを受けるプライドの高さは、ウクライナ・ゼレンスキー閣下に負けていない。イスラム教には<喜捨>という教えがある。字が示すように、金を持っている人は<喜んで>金を持ってない人に<捨てる>行為を指す。持ってない人は<喜んで拾えばいい>ということらしい。
原油産出国で大金持ちのアルジェリアは、アイメヌ・ベンアブドゥルラフマーン首相率いる代表団をアフリカ・アメリカ首脳会議に参加あさせた。アルジェリアの原油を狙うバイデン政権は、他のアフリカ諸国とは些か違う対応を取った。12月14日、アイメヌ首相はジーナ・レモンド商業長官と、15日にはジョン・ケリー長官気候変動大統領特使と、会談を重ねた。
アフリカ49か国が、アフリカ・アメリカ首脳会議に参加した。ブルキナファソ、マリ、スーダン、ベニン、そして独立途上にある西サハラは招待されなかった。アフリカ最大の経済大国、南アフリカは参加しなかった。
② アメリカのお仲間、EU危うし!:
2022年カタール・ワールドカップは、フランスが優勝戦に残って些か盛り上がったものの、数々のスキャンダルに見舞われた。中でも美貌のEU議会副議長を含む4人が12 月9日にベルギー首都ブリュッセルで逮捕・起訴された事件は、ワールドカップ開催国カタールへの誘致問題などが絡んでいるだけに、ヨーロッパのマスコミに火を点けた。
12月12日、ロイターなどが、「ベルギー検察当局は9日、ブリュッセルで16カ所を捜索し、現金60万ユーロ(63万1800ドル)を押収。11日には声明で、4人の容疑者を犯罪組織への参加、マネーロンダリング、汚職の罪で起訴した」と、発表した。12月13日のロイターは「-欧州議会が13日、議会本会議で採決を行い、サッカー・ワールドカップ開催国のカタールから金品を受け取ったとして逮捕されたエバ・カイリ副議長を解任した。採決で議員625人のうち、1人が反対、2人が棄権」と発表した。 カタールは、ワールドカップ移民労働者死事件の調査を開始したが、<死因は自然死だった>と結論づけた。
カイリ氏は14人いる副議長の一人で、カイリ氏の弁護士はテレビで「彼女は無実を訴えている。カタールから断じて何も受け取っていないというのが彼女の立場だ」と述べた。カタールも不正行為を否定している。
カイリ氏一派が、カタールのワールドカップ誘致と、ワールドカップ会場建設労働者の人権問題もみ消しに関与していた事実は。まもなく明確になる。が、EUの闇は深まった。
<建設労働者の人権問題>とは、2010年にFIFAがワールドカップ開催地をカタールに決定して以来、10年間で6500人以上の移民労働者が現地で死亡した事件を指す。サッカーの統括組織FIFAとカタール政府は、労働改革と労働者の保護を約束した。が、人権団体は強制労働の域に達する移民労働者の搾取を警告し続けた。エバはカタール政府を擁護し続けた。
逮捕された他の3人は欧州議会元議員のピエール・アントニオ・パンツェリ氏、国際労働組合総連合(ITUC)のルカ・ビセンティーニ書記長、カイリ氏のパートナーのフランチェスコ・ジョルジ氏。いずれもイタリア国籍だそうだ。また、ロイターが確認した文書によると、ベルギー当局はイタリア国内にいるパンツェリ氏の妻と娘の逮捕状も取った。同氏はカタールとモロッコから金銭を受け取って欧州議会で影響力を行使しようとした疑いがあり、妻と娘もそれを認識していたという。
モロッコはEU議会のエバ副議長に何のもみ消しを頼んだのだろうか?
パンツェリ氏は、深刻な人権侵害に対する責任追及と国際司法を促進するために設立された国際NGO(非政府組織)「ファイト・イムピューニティ(刑事免責)」の会長を務めていた?? ただし、このNGOはEUに登録せず、ロビー活動をしていた。
③ 最後のアフリカ植民地・西サハラ:
ロシア外務省で、日本を含むアジア太平洋地域を新たに担当することになったルデンコ外務次官はロシアのサンクトペテルブルクで開かれた国際フォーラムで記者団に、「現在の日本の指導者が追求する政策では、平和条約の交渉だけでなく、ほかの多くのプロジェクトや合意を再開することは不可能だ。状況が変わるのを待ってから、次にどうするかを考えたい」と述べ、ロシア側が北方領土問題を含む平和条約交渉を中断するとした3月のロシア表明を、再強調した。
12月9日にモスクワで、ハトリ・アドウ西サハラ国連交渉団長とシディ・オマル西サハラ国連代表・兼・MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団) 西サハラ側担当者が率いる代表団が、ミハイル・ボグダノフ・ロシア外務副大臣でプーチン大統領中東特使と会談した。両者は、西サハラ国連和平交渉を支持することを、再確認した。その上で、ロシア外務副大臣は、「平和解決に向けてポリサリオとモロッコ、両当事者の直接交渉が欠かせない」と、強調した。
ロシアのモスクワで会談した、左からハトリ西サハラ国連交渉団長
ミハイル・ロシア外務副大臣兼プーチン中東特使、オマル西サハラ国連大使
12月14日、世界脱植民地化の62周年記念日に、西サハラ国連代表・兼・MINURSOミヌルソ (国連西サハラ人民投票監視団) 担当者であるオマル博士は「ポリサリオ(西サハラ難民政府)は、1960年国連総会が全ての被植民地人民には、脱植民地化に向けての権利がありその独立運動は容認されるとした、歴史的憲章を尊重し順守する」と、声明を出した。
12月15日、第77回国連総会は「西サハラは、植民地支配の下にある地域で、当該地の人民には独立に向けての脱植民地化運動が容認されている」とする、No. 77/133決議の55項を決議した。国連総会は2022年10月4日の「西サハラは脱植民地化地域」という国連事務総長報告を参照にしている。
「ワールドカップに参列した国連事務総長のEU汚職事件に対する見解は?」と、イタリア人ステファノ記者が12月14日の定例記者会見で質しました。
「汚職は検察当局が調査報告するもので、国連が知るところではない。この手の汚職事件は絶えずどこかで起こっている。国連の関与はない」と、フランス人ステファン報道官が逃げました。 ステファノ記者は、UNも絡んでいるのでは?と食い下がりました、
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年12月18日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12648:221218〕
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