「安保3文書」閣議決定への抗議声明なお続く 法曹界、学会、消費者団体からも
- 2022年 12月 28日
- 時代をみる
- 国防安保3文書岩垂 弘憲法
12月21日付の本ブログで、岸田政権が同16日に「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」など安保関連3文書を閣議決定したことに抗議・反対声明や閣議決定撤回要求声明が相次いでいることを紹介したが、そうした動きはその後も絶えず、日がたつにつれて広範な分野に波及しており、この問題に対する国民の関心が高いことをうかがわせる。
今回は、前回で紹介した声明後に発表されたものの一部を紹介するが、そこに共通しているのは、まず、安保3文書に明記された「敵基地攻撃能力の保有」や「防衛費大幅増」が、日本国憲法と戦後日本の国是である「専守防衛」を破壊しかねない、という強い危機感であり、さらに、国家にとって重大な問題でありながら、国民的な議論を経ずして政府が一方的に、しかも急いで戦後日本の防衛政策の大転換に踏み切ったことへの強い反発である。
日弁連「敵基地等への攻撃は再びこの国に戦争の惨禍をもたらす」
日本弁護士連合会は、12月16日付で「『敵基地攻撃能力』ないし『反撃能力』の保有に反対する意見書」をとりまとめ、同19日付で内閣総理大臣と防衛大臣宛に提出した。同連合会によると、意見書の趣旨は以下の通りだ。
「政府は、2022年12月16日、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画を閣議決定し、相手国の領域内にあるミサイル発射手段等を攻撃するためのいわゆる敵基地攻撃能力や、更には、攻撃対象を『敵基地』以外に拡大することになりかねない、いわゆる『反撃能力』の保有を進めようとしている。
しかしこれは、憲法9条の下で個別的自衛権の行使を認める従来の政府の憲法解釈においても、自衛権の発動の要件、とりわけ実力の行使は日本に対する外国からの武力攻撃の排除のために必要な最小限度のものに限られ、他国の領域における武力の行使は基本的に許されないとする原則に反し、また、相手国の領域に直接的な脅威を与える攻撃的兵器の保有として『戦力』の保持に該当することも明らかであって、同条に違反するものである。
さらに、当連合会が一貫してその違憲性を指摘してきているいわゆる安保法制が施行されている現状において、集団的自衛権の行使などを通じて日本が戦争当事国になる危険が拡大している。その安保法制の下で日本が『敵基地攻撃能力』ないし『反撃能力』を保有した場合、それが他国のために用いられて戦争に突入することとなる危険性がより一層高くなる。
そして、個別的自衛権の行使にせよ集団的自衛権の行使にせよ、相手国の領域を直接攻撃する『敵基地』等への攻撃は、当然に相手国の反撃を招いて武力の応酬に直結するものであり、その結果は多大な国民の犠牲と広範な国土の荒廃を伴って、再びこの国に戦争の惨禍をもたらすことになりかねない。
このような破局的結末を避け、この国の存立を維持するためには、国際社会の平和、とりわけ経済的、文化的に緊密な関係にある近隣諸国との武力紛争を防止して、平和的な外交関係を構築する以外に方法はない。政府は、武力に依拠するのではなく、日本国憲法が掲げる恒久平和主義、国際協調主義の原理に基づき、関係諸国との間で主体的な役割を果たし、国際平和の維持のために最大限の外交努力を尽くすべきものである。
よって、当連合会は、国が『敵基地攻撃能力』ないし『反撃能力』を保有すること及びそのための準備を進めることに反対する」
立憲デモクラシーの会「抑止力を高めることがさらなる軍拡競争をもたらす」
立憲主義の回復を目指す政治学者らの集まりである「立憲デモクラシーの会」は12月23日、「安全保障関連三文書に対する声明」を発表した。
声明は言う。
「政府は敵基地攻撃能力の保有により『抑止力』を高めることが日本の安全に不可欠だと主張する。しかし、一般に抑止という戦略は相手国の認識に依存するので、通常兵力の増強が相手国に攻撃を断念させる保証はなく、逆にさらなる軍拡競争をもたらして、安全保障上のリスクを高めることもありうる」
「政府は日本が攻撃を受ける事態の意味について、『敵国』が攻撃に着手することを含むかどうかについてあえて曖昧にしている。すなわち、日本に向けたミサイルの発射の前に日本から攻撃を行う可能性を否定していない。そもそも、『敵国』が発射するミサイルが日本を攻撃するためのものか否かは、発射された後にしか確定し得ない。『先制攻撃』と自衛のための『反撃』の区分はきわめて不明確であり、敵基地攻撃能力の保有は専守防衛という従来の日本の防衛政策の基本理念を否定するものと言わざるを得ない」
「政府の打ち出した防衛費増額についても、それが日本の安全確保に資するものかどうか、疑問である。来年度から5年間の防衛費を43兆円、GDPの2%にすると政府は表明した。しかし、今回の防衛費急増は、必要な防衛装備品を吟味したうえでの積み上げではなく、GDP比2%という結論に合わせた空虚なものである。すでに、第二次安倍晋三政権がアメリカから有償武器援助で多くの防衛装備品を購入しており、その有効性についての検証もないまま、いたずらに防衛費を増加させることは、壮大な無駄遣いに陥る危性をともなう」
日本子どもを守る会「敵基地攻撃能力は子どもの未来を破滅させる」
日本子どもを守る会は26日、岸田政権が安保3文書を閣議決定したことを受け、平和憲法に反する大軍拡・大増税を阻止して、子ども・子育て予算の増額を求める声明を発表した。
その中で、敵基地攻撃能力の保有については「日米安保条約のもとで日本が米国と一体となって戦争に突入する危険にさらすもので、国民生活の平和を根底から脅かし、子どもたちの未来を破滅に導くものだ」と、防衛費を今後5年間で43兆円とする岸田政権の計画については「国民の生活を押しつぶし、福祉・教育・文化への施策を後退させる」としている。
その他、日本消費者連盟、日本国民救援会などが同様の声明を発表している。
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