くらしを見つめる会つーしん NO.223から 2022年12月発行
- 2023年 1月 16日
- 交流の広場
- 村山起久子
インクルーシブ教育
インクルーシブとは英語で「包み込む」という意味がある。障害があってもなくても、それぞれが適切な配慮(合理的配慮)を受けながら、すべての子どもが通常学級で学ぶことができる教育をいう。ここ数年、よく聞くことばだ。
私は重度の聴覚障害を持っている。小学校就学時に地元の校長から「聾学校へ」と。聾学校からは「普通校へ」と言われ、両親は悩んだそうだ。今でいう特別支援学級(難聴学級)が市内で設立された時で、通級しながら普通校と難聴学級でインクルーシブ教育を受けた。小学校の成績表が残っている。コメントには「もっと手を挙げましょう」「大人しいです」の内気だというコメントばかり。聴覚障害者は、音声言語や環境音が聞こえないので「もっと手を挙げましょう。」とあっても先生や友だちの問いかけや話が全く聞こえないので理由なく手を挙げることができない。何故手を挙げるかの質問を聴覚障害の子どもに配慮をする必要があった。昭和四十一年当時は、合理的配慮ということばもなかった。当時の考えは「障害とはその子がもっているもの」であり、今の考えは「障害は社会がつくる」と変化している。今なら聴覚障害を持った子どもには、音声認識による文字表記を出したり、補聴器へ直接に声が入るように先生が専用のマイクをもって話す等、合理的配慮が行われるようになっている。それでも友達の発音はマイクを持たないことがある等、課題は多い。聴覚障害は見えない障害なので、どのように伝わっていないか常に見えてこないので置き去りにされることが多い。この状態で幼稚園から大学まで通った。合理的配慮はほぼなかったが、通学できたのは友人のお陰であった。隣の子が音読のときは教科書をなぞってくれた。大学では常にノートを貸してくださる友人がいた。テスト前には友人のノートのコピーをとって勉強した。何時も友人に恵まれたことにとても感謝している。今の私なら、先生にこうして欲しいとお願いができるが、当時は、自分の障害や、配慮を伝えることが出来ていなかった。先生はちゃんと障害を理解していたのかなと当時の先生に確認してみたい。
最後に。音声言語を文字に変換するアプリ「UDトーク」と「YYProbe」みなさんのお手許のスマートフォンにダウンロードして使っていただけるとマスク社会でも会話が弾む。「障害は社会がつくる」みなさんの意識で社会を変えてくださるとこの上なく嬉しい。
羽田野裕子
……中略……
♪こんな本いかが?
ワクチンの境界 國部克彦著 アメージング出版
新型コロナワクチンを軸に、社会や政治、それに対する個人としての在り方を考える本著。コロナ禍で世界的に(人類に未知の遺伝子)ワクチンが推奨され、やがて義務化する国も増えた。ワクチンが人類に及ぼす影響もまだわかっていないのに、基本的な疑問までデマや陰謀論として封じ込めワクチンを普及させようとする行為は、科学でなく宗教と同じだと著者は言う。コロナ禍で、健康や延命を理由にすると人々はどんな権利の制限も受け入れることがわかった権力はどんどん勢力を拡大しようとする。全体主義の本質は自分で考えようとせず全体に合わせようとする人間の行動であり、抵抗しなければ人は権力の操り人形になってしまう。ワクチンに限らず、緊急事態だからと政府や専門家の言うことを従順に受け入れ、他人にも強要してしまう人間の危うさ。ワクチン接種後の死者や後遺症は少数の他人事と切り捨ててしまう心理やシステムの怖さ。リベラルほど強行にワクチンや制限を求め独裁化しがち・・といった考察も興味深い。今後の社会の在り方を考える上でも、読んでおきたい一冊。
【編集後記】
10月に続いて11月3日にも、北朝鮮のミサイルに注意を呼び掛けるJアラートが発信され、TVは地上波もBSも全てのチャンネルが通常番組を中断して避難を呼びかけました。ミサイルは日本の領空でもない宇宙の領域を飛んでいっただけで、日本に落下する危険性などなかったのに、恐怖を煽り、新幹線まで一時停止させるなんて異常です。落下を言うなら、米軍機や自衛隊機の方がずっと危険です。実際、米軍機による事故で住民が死傷する事故は後を絶ちません。さらに、住民が避難を要する危険という点で原発事故が想定されますが、トラブルがあっても隠されることも少なくないし、まともな避難計画も立てられていません。政府が本気で人々の命を守ろうとするなら、米軍や原発事故の危険についてもっと広報し、そのリスクを減らすことこそすべきではないでしょうか。マスコミは、Jアラートがミサイル通過後に出されたことを批判した程度で、それ自体の問題はほぼ指摘しませんでした。最初に額ありきで「防衛費を2倍にする」と、国会より先に米国に約束し、米国の言うまま高額の兵器を買って自衛隊を米軍傘下で戦わせる準備に余念がない政府。Jアラートで人々に恐怖心を植え付けたらしめたもの。マスコミも無批判でむしろ応援・・。政府が「米国」や「財界」でなく「国民」を本気で守ろうとするなら防衛費倍増でなく、外交努力を惜しまず、食とエネルギーの自給率を高め、格差是正に力を入れるはず。Jアラートに騙されず、防衛費増を食い止めたいです。 (きくこ)
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