SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】519 食料高騰と断食月
- 2023年 3月 11日
- 評論・紹介・意見
- サハラ国連平田伊都子断食月西サハラ食料
月が夜空から消えると、世界中のイスラム教徒が断食を始めます。 日の出から日没まで飲み食いを絶つという、辛い一か月の<行>、それがラマダン・断食月です。 ところが、この断食月の食料品消費量が、ダントツに上がるのです。 それは、日が沈んだ途端、家族親類縁者が一堂に会し食事大会を始めるからです。 優しいイスラム教徒は、見知らぬ人も歓迎します。
かくして、お祭りの断食月には、食品の値段が高くなっても、食料需要は上がるのです。
① 世界的食糧高騰を救えるのか?国連黒海穀物取引(別名イニシャチブ):
2023年3月7日の国連定例記者会見で、「総長は8日にゼレンスキー大統領と会い、黒海穀物取引やその他の関連問題について話し合う、、出発前に、事務総長はロシア外務次官セルゲイ・ヴェルシニンと電話会談をした」と、国連事務総長副報道官が発表した。「電話で、事務総長はモスクワ行きを打診したのか?、、断られたのか?」との質問に、「違う。来週、ロシア連邦の代表団がジュネーブに来る。そこで、黒海穀物取引に関しての交渉をやるからだ」と、副報道官が答えた。「トルコ外相は、交渉は困難だと言ってる。 黒海穀物取引を更新する見通しがあるのか?」との突っ込んだ質問に、「黒海穀物取引はウクライナ、ロシア連邦、そしてより広い世界に利益をもたらした、、」と自画自賛した。
黒海穀物取引は昨年、ウクライナ産農産物の輸出を助けるため、国連事務総長がトルコも巻き込み、ウクライナ産だけでなくロシア産も扱うと騙ってロシアの合意を取った。おかげでウクライナ産穀物は黒海を出発して、ヨーロッパの港を経由し世界に流れ、大儲けをした。一方、ロシア産穀物や肥料は、仮に黒海を出てもヨーロッパの中継港で妨害される。アンモニアの臭いがするとか、、様々な風評被害を流してロシア産を世界の市場に極力流さないようにしている。ロシア産穀物の遅滞を追及されると、国連は、「黒海穀物取引は商売取引だから国連の枠外だ」と、責任回避をしてきた。
ロシアが「アフリカなど食糧不足の国々に、ロシア産を人道的に無償援助する」と提案しても、ロシアに非人道的国家のレッテルを貼った国連事務総長は、取り合わなかった。国連定例記者会見で、ロシアや中国だけでなく欧米の記者もロシア産流通の遅滞を質してが、「事務総長は解決の努力をしている」とおざなりな返事を繰り返すだけだっだ。国連事務総長は、ウクライナだけに儲けさせればいいのだ。バイデンに与するグテーレスは、差別主義者だ。
3月8日のウクライナ大統領と国連事務総長の会談後に、両者は「3月18日に期限切れとなる黒海穀物取引は、人道的に再延長されなければならない」と、<人道>という言葉で欧米を誘い、延長に同意しない可能性があるロシアを牽制した。本当に<人道>を唱えるのなら、ウクライナもロシアに倣って食糧難のアフリカに無償援助をすべきだ。資金は、グテーレス得意の集金能力で、アメリカや欧米やユダヤ金融界に頭を下げればいい。
② 西サハラ難民キャンプの断食月:
国連事務総長の差別主義ややる気のなさと関係なく、断食月はイスラム教徒の西サハラ難民キャンプにもやってくる。MAP-Independent(独立系の西サハラ難民SNS) は、断食月特集を出した。
MAPは、断食月は自分自身を修練できる最高の機会だと言う。現代医学は、絶食が「自然現象」であることを証明し、断食は不可欠だとも主張している。
西サハラ難民キャンプの断食の一日は、西サハラ難民キャンプでもモロッコ占領地・西サハラでも、<砂漠の民>の伝統に従う。空腹を忘れるために長い昼寝をした後、家族や親類は一堂に集まる。日が沈んで断食から解放されると、まず砂漠の民の習慣である一杯のお茶が出てくる。最初の食事は、暴飲暴食をせず、穀物のスープ、ナツメヤシ、牛乳、乾菓子ぐらいで済ませる。時間をおいて、ラクダ肉のローストが置かれ、食事は続く。それから全員が礼拝し、コーランを読み、モスクや集まりに出かけ説話を聞く。そして、家族や友人を訪問し、チェスなどのベームや楽器を演奏したり楽しい時を過ごす。一方で、サハラ問題の政治的論争、占領地での若者による独立蜂起の話、モロッコ軍による家屋への度重なる攻撃、などなどが真剣に討論される。断食月はたっぷり時間があるから、心おきなく思いや考えを交換できる。
ナツメヤシのは勧めるのは、ナツメヤシの砂糖が血中にすぐに吸収されるため満腹感が得られ、エネルギーを生み出すからだとしている。さらにMAPIndependentは断食の効用を、「断食は、驚くべき減量効果があり、体内の脂肪を減らすため、コレステロールを減少し脳卒中を防止する、、」などと、並べ立てている、、
砂漠の命・ナツメヤシを抱える少年、モスク・イスラム教礼拝所で
③ 西サハラ難民キャンプの食料援助をするアルジェリア、妨害するモロッコ:
3月8日、モロッコは、「西サハラ難民キャンプを庇護するアルジェリはWFP(世界食糧計画)などの援助食料品をネコババしている」との批難声明を、また、出した。筆者がWFPアルジェリア支局長にインタヴューをした時、質したが、「モロッコの嫌がらせ」と答えた。
アルジェリアの港で荷揚げをした難民キャンプへの支援食料品は、アルジェリア赤新月社が届ける。国連はアルジェリア赤新月社の46年にわたる尽力に感謝を述べたばかりだ。
2024から25年にかけて、食糧の自給自足達成を目指すアルジェリアは、モロッコのように食料難ではない。アルジェリアは自らも、難民キャンプへ緊急食糧を届けている。まもなく断食月支援食料を積んだコンボイが出発する。
2023年3月4日にアルジェリア水産養殖会議所で、マグロ缶詰工場と水産養殖会社が「生産者から消費者まで」という直販事業協定に調印した。この協定は、「断食月に開かれる市場に、タイ、マグロ、イワシの缶詰製品を全国規模で工場価格で。提供する」と、謳っている。消費者は安価で断食月買いだめをすることができる。
因みに、日本のイワシ類漁獲量一位は福島県のお隣り茨城県。農林水産省2020年度統計によると229,602 トンで、全国漁獲量944,027トンの約4分の一を占める。放射能汚染水を流せば当然、茨城イワシは汚染される。3月9日の記者会見で日本の総理大臣は「今年の春から夏にかけて福島原発事故による放射能汚染水を海に流す」と、発表した。国連事務総長は、国連海洋保全条約を掲げて、「海洋生物多様性の保全と海洋の健康が破壊状態だ!」と、ヒステリックに叫ぶ。が、日本の海洋放射能汚染には声を上げない、、なぜ?
日本のイワシ缶に政府は直販制度を採り入れないから中間搾取は膨れ上がり、店頭価格のタイ産イワシ缶一個は、100円ショップでも100円だ。が、なんたって65グラムで少ない!
3月8日、アルジェリア肥満代謝性疾患学会の内科部門責任者であるテバイビア教授が、断食開始)の1か月前に糖尿病患者は医療相談を受けることや、高血糖または低血糖を引き起こす可能性のある特定の食品の過剰摂取を避けるように呼び掛けた。レブジイリ博士は、吐き気、発汗、または嘔吐の感情の場合には直ちに断食を中断することを勧めた。
本日、2023年3月11日で、東日本大震災から12年経ってしまいました。 放射能汚染水ひとつをとってみても、解決どころか、その汚染水を海に流すんだって!?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
――――――――――――――――――――
Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2023年3月11日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12889:230311〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。