<横浜ウォーキング>に参加してみようかと(1)
- 2023年 3月 30日
- カルチャー
- 内野光子
いきなり、きつい、雨の谷戸坂
横浜のKKR(国家公務員共済組合)の宿、ポートヒルが企画する「横浜三塔をめぐるウォーキング」というものに参加してみようか、ついでに近代文学館にでも寄ってみようということになった。その企画には、ランチと夕食までついているので、日帰りは無理かと、前泊ともども二泊の予約もとれた。ただ、予報では三日間とも雨模様なのと私の脚が不安ではあった。
3月23日、みなとみらい線も久しぶり、2019年の「松本清張展」以来か。終点の元町・中華街から地上に出るとかなりの本降りの冷たい雨。早めながらランチをと、夫はお目当ての店を探すが、イラストマップではわかりにくい。カラの台車を押す宅配の人ならと呼び止めてしまう。マップをヨコやタテにしながら親切に教えていただく。その店は、傘を差しながらも若い人たちは並んでいる。もうどこでもいいよ、と少し大きな構えの店に入った。仕切られた個室風のところには、すでに二組の家族が入っていた。ランチのコースに満足、ひとまずは宿に向かうのだが、夫は、アメリカ山の脇の坂道に入り、左手の高い石塀に沿って進む。途中、石段にかわったりするが、私には、とにかくきつい。つい最近、循環器科のいくつかの検査で、問題なしの診断を受けた身ながら、苦しかったのだ。宿のある港が見える丘公園への違う道があるはずなのにと、ようやく登りきった左手がKKRの宿であった。向かいが交番、そうそう、港の見える丘公園の展望台が目の前だった。
チェックインには、まだ間があったが、お願いしての入室、熱いお茶で一休みできたのがありがたかった。
県立神奈川近代文学館常設展をひとりじめ?
宿を出て、イングリッシュガーデンを進めば霧笛橋、時間がたっぷりとれる今日のうちにと文学館に入る。神奈川にゆかりのある作家たち、神奈川を舞台にした作品が、作家別に展示され、最初は丁寧に見ていたが、後半は、関心のある作家のほかは素通りに近かった。それにしても、平日とはいえ、入館者は、私たちだけ? シニア料金の110円にも、感動さえ覚える。大佛次郎記念館とも連携しているので、半券を見せれば、やすくなりますよ、とも声をかけていただく。
常設展では、中島敦が、横浜高等女学校で、八年間も教師を務めていたこと、大佛次郎が、住まいは鎌倉ながら、横浜のホテルニューグランドを仕事場にしていたことなどを知る。また、作家たちの書簡に見る達筆ぶりには驚きながら。
企画のコーナーの「夏目漱石の絵はがきコレクション」には興味深いものがあった。漱石あての絵はがきの一部ながら、友人や教え子、読者たちからの作品評や旅の便りなどさまざまである。漱石は、書簡の類を引っ越しのたび、大方は処分していながら、絵はがきは残していたらしい。写真も電話も、まだ普及していない、一世紀ほど前の通信手段であった「絵はがき」、パソコンやスマホ世代にはほど遠い、ぬくもりのある世界に浸った。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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