【5.6】玉木俊明「商業と国家の世界史―なぜイギリス・アメリカが、資本主義世界の覇権国家となったか(前編)」オンライン・フォーラムのご案内
- 2023年 4月 10日
- 催し物案内
- 世界資本主義フォーラム玉木俊明矢沢国光
●主催 世界資本主義フォーラム
●日時 2023年5月6日(土) 午後1時30分~4時
*後編は、6月3日(土) 午後1時30分~4時です
●開催方式 zoomによるオンライン
●テーマ
「商業と国家の世界史――なぜイギリス・アメリカが、資本主義世界の覇権国家となったか」 前編
【前編・趣旨】
イギリスは、18世紀後半に世界最初の産業革命を実現したが、貿易収支が黒字になることはほとんどなかった。すなわち世界最初の工業国家イギリスは、工業製品で儲かった国となったことはほとんどなかったのだ。
19世紀末になると、イギリス経済の中心は、金融業やサービス業となった。そして、世界の商品を輸送したのは、商船隊が発展したイギリスであったばかりか、国際貿易の決済が、イギリス製の電信を用いてロンドンでなされた。
19世紀末から20世紀初頭にかけてのイギリス経済を支えたのは、電信であった。イギリスは、電信により、世界経済の覇権国になったのである。イギリスは、インビシブルなものを商業の媒介としたのだ。電信はまた、コミッションビジネスを大きく変え、イギリスに膨大な手数料をもたらすことになった。
【前編・目次】
消費財の増加
大西洋経済と綿花
イギリスの海運業発展とオランダ
イギリスの海運業発展
イギリス海運業の発展とラテンアメリカ諸国――ラテンアメリカ諸国はなぜ独立に成功したのか
アジアの物流を支配したイギリス
なぜイギリスにだけ非公式帝国があったのか?
電信はどれほど重要か
電信が縮めた世界
イギリスのヘゲモニー――コミッション・キャピタリズムの国イギリス
おわりに
●講師 玉木俊明(京都産業大学経済学部教授 ヨーロッパ経済史)
▲研究テーマ 『海上ルートによるヨーロッパの拡大の歴史』
アジア諸国は主として陸上ルートでさまざまな地域を征服していった。ヨーロッパはなぜ海上ルートで領土を拡大し、世界を制覇したのか。そのために重要だったのが、商人と国家の役割です。近世のヨーロッパでは、国家とは無関係に、商人がどんどんと海外に出てゆきました。やがて、商人の活動を国家が保護するようになる。商人と国家は、どちらが欠けてもヨーロッパが世界を制覇することができなかった、重要な要素なのです。(京都産業大学ホームページより)
▲著書
『北方ヨーロッパの商業と経済 1550-1815年』知泉書館 2008
『近代ヨーロッパの誕生 オランダからイギリスへ』講談社選書メチエ 2009
『近代ヨーロッパの形成 商人と国家の世界システム』創元社 2012
『海洋帝国興隆史 ヨーロッパ・海・近代世界システム』講談社選書メチエ2014
『ヨーロッパ覇権史』ちくま新書 2015
『歴史の見方 西洋史のリバイバル』創元社 2016
『〈情報〉帝国の興亡 ソフトパワーの五〇〇年史』講談社現代新書 2016
『先生も知らない世界史』日本経済新聞出版社 2016
『先生も知らない経済の世界史』日本経済新聞出版社 2017
『物流は世界史をどう変えたのか』PHP新書 2018
『人に話したくなる世界史』文春新書 2018
『逆転の世界史 覇権争奪の5000年』日本経済新聞出版社 2018
『ヨーロッパ 繁栄の19世紀史 ─消費社会・植民地・グローバリゼーション』ちくま新書 2018
『拡大するヨーロッパ世界 1415-1914』知泉書館 2018
『世界史を「移民」で読み解く』NHK出版新書 2019
『移動・交易・疫病 命と経済の人類全史』星海社新書 2020
『「世界史×日本史」エピソード100』星海社新書 2021
『16世紀「世界史」のはじまり』文春新書 2021
『金融化の世界史 大衆消費社会からGAFAの時代へ』ちくま新書 2021
『迫害された移民の経済史 ヨーロッパ覇権、影の主役』河出書房新社 2022
●参加方法 どなたも参加できます
(1)5月4日までに、sekaiforum@jcom.zaq.ne.jpまで、
・「5.6参加希望」と書いて
・氏名[所属・立場、できれば電話番号、など]をお知らせください。
・事前にZOOM接続情報と当日の報告資料を送信します。早めに申し込みください。
(2)当日朝 9時までに ZOOM接続情報を「リマインダー」(再送信)します。届かない方は、正午までに、矢沢090-6035-4686まで連絡ください。
(3)参加費 500円[あと払い]、支払い方法は、世界資本主義フォーラムのサイトをご覧ください。 https://www.worldcapital.online/
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後編予告 6月3日(土) 午後1時30分~4時
【後編・趣旨】
アメリカのヘゲモニーは、イギリスのヘゲモニーとは異なる。それは、精巧なコミッション・キャピタリズムを形成したイギリスと比較すると、国際機関を設立することでヘゲモニー国家となったアメリカは、経済成長による成果をイギリスほどには手に入れられなかったからだ。
アメリカのヘゲモニーを確立したのは、1944年のブレトンウッズ会議であり、1オンス=35ドルに固定される金本位制、固定相場制に依存していた。それは、アメリカの経済力が他国よりも圧倒的に強いからこそ維持されるシステムであった。それは、1971年のニクソンシュック、1973年と1978-79年の石油ショックにより、終わりを迎えた。しかしアメリカの経済的支配はIT産業の発展により復活したが、それはまた大英帝国の在り方と関係している。
現代世界では、タックスヘイブンを巧みに使用することにより、本来納めるべき税金を納めていない企業もあるのも事実である。製造業よりもIT企業にそれはより多く見られ、そのため一般の人々は、必要以上の納税を強いられているのかもしれない。またタックスヘイブンは、大英帝国と関連した地域が多く、それは大英帝国が金融の帝国であり、政治的帝国はなくなったとしても、イギリスの金融力はまだまだ世界に強い影響力をおよぼしているからである。しかもそれは、イギリス王室の特異性と関係している。
アメリカの経済力の復権は、じつは大英帝国が生み出したシステムと関係していた。アメリカの金融力は、大英帝国が築き上げたものを利用していると言って、問題あるまい。近代世界システムという観点から見るなら、この二つのヘゲモニーは、基本的にイギリスが生み出したシステムをアメリカがうまく利用したからだと言えそうである。そのようなシステムは今後とも続くのか、それとも終わるのか、私なりの結論を出してみたい。
【後編・目次】
アメリカのヘゲモニーの特徴
大衆消費社会アメリカ
ブレトンウッズ体制
アメリカ時代の終焉
イギリスの国制
金融帝国としての大英帝国
王室属領とタックスヘイブン
したたかなイギリスのタックスヘイブン優遇政策
イギリスの国葬と金融の関係
EU諸国の銀行とタックスヘイブン
無形資産の増加
租税回避とGAFAMの問題点
ヘゲモニーは変わるか 持続的経済成長の終わり?
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