くらしを見つめる会つーしん NO.225から 2023年4月発行
- 2023年 5月 24日
- 交流の広場
- 村山紀久子
ゲノム編集はサスティナブル?食料危機を救う?
2023年2月14日、ゲノム編集トラフグを宮津市のふるさと納税返礼品から削除することや海上養殖の禁止を求め、市民が署名を提出しました。このトラフグは、食欲抑制ホルモンが働かなくなるよう、特定の遺伝子を壊して育てられ通常の約2倍に成長します。ゲノム編集と言えば、成長ホルモン抑制遺伝子を壊して、ずっと成長ホルモンが働いたままにした肉厚のマッスル真鯛の写真もよくみかけます。
そもそもゲノム編集のゲノムという言葉から分からず、調べてみました。遺伝子にはたんぱく質を作る機能と自己複製の二つの機能があるそうです。遺伝子はDNAにあり、DNAにある一つ一つの文字を塩基といい、全てのDNA、遺伝子総体をゲノムというそうです。遺伝子組み換えは、基本的には他の生物の遺伝子を挿入して生物を改変する技術で、基本的にはその生物が持たない遺伝子をプラスする技術。それに対してゲノム編集は、特定の遺伝子を壊して生物のバランスや調和を壊す技術、意図的に障害や病気を作り出す技術といえるようです。
遺伝子が破壊されて細胞のなかのミトコンドリアが減り、運動能力が低下したマッスル真鯛。成長ホルモンが抑制されないと男性の前立腺がん、女性の乳がんを増やす物質が作られる恐れもあります。脳の働きにも影響があり、稚魚の生存率が低下する研究結果もあります。
ゲノム編集は編集効率を上げるため、標的1個あたりに数百万個~数千万個のハサミをいれるため、標的と類似の塩基配列も破壊するオフターゲットという副作用がおこります。ハサミには抗生物質耐性遺伝子がつかわれますが、その除去が確かではなく、腸内細菌が抗生物質耐性になる可能性があります。加えて、最近の研究で進化に関わるエキソンという遺伝情報が破壊されることへの危惧もいわれています。
ゲノム編集食品も従来の遺伝子組み換え食品もどちらも遺伝子操作食品です。植物以外のゲノム編集食品を流通可能しているのは日本だけです。遺伝子はお互いに相互作用しています。思いがけない形で悪影響がおこらないとはいえません。まずは、全てのゲノム編集食品の表示と規制を求め、選ぶ権利を守ってほしい。そして、本当にこれがサスティナブルなことなのか、食料危機を救うことなのかを訴えたいです。(池上素子)
――中 略――
♪こんな本いかが?
「ルポ・食が壊れる」堤未果著 文藝春秋
現在、ゲノム編集食品や人造肉などアグリビジネスが巨大資本によって(国連も動かし)SDGSの名の下、どんどん進められている。このまま進めば、「食」が一部の資本家によって支配され、食や人々の暮らしも壊される。「環境や動物福祉を考え、持続可能な食を確保するため」と言われると多くの人が共感してしまいそうだけれど、食は単なるモノでなく、豊かな土壌や水、人の手によって生み出されるもの。世界中で、豊かな土壌が除草剤や農薬など化学物質によって劣化し、健康な植物が育ちにくくなっている。土壌こそが生態系を守り地球のバランスを整えている。その重要性を認識した国連は2020年に小規模農家を増やすと舵を切ったのに、2021年に巨大資本の巻き返しでリセットしてしまった。大きな力(資本)によって歪められる食。絶望的な気持ちになるけれど、後半紹介されている、土壌を大切にした農やそれを広げようとする人々の存在が希望。今止めないと本当に取返しがつかなくなる。地産地消、顔の見える関係を大切に、本来の食が壊されないようできることを考えたい。
〈編集後記〉
常に他国に攻め入って軍需産業を潤し、戦争で支えてきたと言える米国経済。日本がその傘下に入るのを食い止めてきたのが憲法。米国から要請があっても専守防衛を盾に自衛隊は参加できないと突っぱね、他国の戦争に参加することなく経済を優先させてきました。それを大転換し、他国へ先制攻撃できるようにして防衛費も大増額するというのが「防衛関連3法」です。このような憲法も無視した大転換を国会での議論もなく決め、防衛費は増額ありきで中身も問わない政治。満足に報道しないマスコミ。増額される防衛費の多くは型式が古い米国産大型兵器購入で、ローンや維持費を含め将来への重いツケになります。そもそも、貿易額でトップとなる中国との関係が悪化し輸出入が止まれば、食料・エネルギー共に自給率の低い日本の庶民の暮らしは破綻するでしょう。今も満足に食事を取れずお腹を空かせている人がたくさん居るのにこれ以上武器にお金を費やして、福祉や教育の予算を削ればどんな悲惨な社会になるか。先の戦争も世論やマスコミが支持して泥沼化し甚大な被害をもたらしました。戦争を煽るかのような軍備増強は危険。憲法を守って外交を尽くすことこそ政治家の使命です。(きくこ)
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