団結と勝利は祖国と社会主義の現在と未来である 再選されたディアス=カネル・キューバ大統領の就任演説
- 2023年 5月 30日
- 評論・紹介・意見
- キューバ岩垂 弘社会主義
キューバのディアス=カネル大統領が4月19日の人民権力全国議会(国会)で再選され、そこで就任演説をおこなった。以下は、ラテンアメリカ現代史研究家の新藤通弘氏による翻訳の一部(全体の約3分の1)だが、同氏は「キューバの困難な経済状況と、それに挑む国会議員、若者たちの課題が率直に語られている」と注目している。
下を向いて官僚が書いた演説文を読むどこかの国の首相とは随分違うので、少し長いがご参考までに紹介する。
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本日は 勝利の記念日ですので、すべての人に祝意を表します! 1961年4月19日、プラヤ・ヒロンの海岸で、キューバは、アメリカ帝国主義を初めて打ち破りました。したがって、現在 この日を祝うことができているのです。 この勝利は、不正に対する正義の勝利、巨大なゴリアテに対する小さなダビデの勝利、帝国の鼻先での社会主義革命の勝利でした。
その勝利はあまりにも壮大なものであったため、62 年経った今でも敗者は私たちを許すこ とができないでいます。
アメリカ合衆国による1823 年 12 月のモンロー・ドクトリンの声明から今日までの 200年間、強力な隣国の政策は、たとえ二つの政党 が交互に政権をとっても、同じものでした。 少なくともキューバにとっては、両者を区別 することは非常に難しく、例えば、共和党のドナルド・トランプが実施した封鎖強化策は、 政敵である民主党のジョー・バイデンが維持しています。
「ヒロンを忘れるな 」と、1961 年以降、新たな侵略の脅威が生じるたびに、私たちの両親は警告を発してきました。 このスローガンは、大衆の想像力の中で生き続けています。なぜなら、傭兵の態度というものは、依然として同じだからです。侵略者は傭兵をフロリダのエバーグレーズで訓練し、ソーシャルネットワークの洞窟から私たちを脅迫しています。強力な隣国は、革命を破壊するために「援助を与えているもの」には引き続き寛大であり、毎年、キューバの国内秩序を破壊することを申し出る人々に、対面であれインターネット 経由であれ、数千万ドルを供与しています。この数年間、経済と社会、そして国民全体の日常生活と進歩の夢に対するこの布告なしの 戦争の打撃を感じなかった日は一日もないでしょう。
私たちは、パンデミック状態の中で強化された封鎖の残酷さ、すべての金融ルートを封鎖するために想像上のテロ支援国リストにキューバを加えている悪名高い行為、街の反乱を奨励する一方で、貿易や融資のあらゆる可能性を閉ざし、私たち への支援を妨害していることを思い出します。 国民は、これらの戦いから勝利を収めつつあり、ヒロンの時と同様に、私たちは、引き続き勝利することを、私は信じて疑いません!
ことわざがあるように、結局は、間違ったことは続きません。いつか遅かれ早かれ、覇権主義的政策を止めなければならないでしょう。多国間主義がそれに代わり、圧力 や封鎖からキューバが解放されれば、明確な目的のもとに団結した、高貴で創造的で才能 ある人々の国キューバが、どこまで発展できるかを証明することができるでしょう。 今、脚と手を縛られている私たちにできることに集中しましょう。
直近では、主要な政策は、食糧生産、遊休生産能力の活用、外貨収入の増加、社会主義国営企業に求められる改革、投資過程の効率化、経済主体の相互補完性、外国投資の参加です。これらすべては、財とサービスの供給を増やし、インフレを抑制することを目的としており、経済戦争において主要な優先事項です。 この巨大な課題に、落胆することなく挑まなければなりません。
封鎖の激化、世界的危機、そして私たちの無能力によって、わが国の経済・社会状況はより困難になっており、私たちが決してあきらめない夢、計画、企画は減速しています。時には、それらが実現することはないだろうと思われることもあります。しかし、この 5 年 間の動きを検討すると、最悪の状況と犯罪的な圧力の下で、私たちは自らの努力と才能でパンデミックから身を守った数少ない国のひとつであったことがわかるでしょう。
これほど多くの問題に立ち向かう楽観主義はどこからきているのかと問われれば、私はこ れらの偉業を思い浮かべます。それと、何百もの解決策や提案のそれぞれの中に、嘆きや非難に満たされるのではなく、身近の問題の解決策を見つけるために知性とエネルギーを注ぎ込む人々を私は見るのです。
国会議員の皆さん
キューバ国民の真の敵は、キューバを手中に入れ、キューバを私たちがすでに経験し知っている新植民地時代に戻すために、社会が暴発するように仕向けています。この敵は、家族法の国民投票、代議員選挙、そして国会議員選挙という最近の投票のそれぞれを、政府の正統性に対する 攻撃の重要な機会と捉え、高い棄権率の可能性に 希望を託しました。でも、投票率は75.8%に達しました。これは、革命に対する国民の信頼がなければ実現しなかったでしょう。市民意識を示したものでしたが、また愛国心、何よりも政治意識の高さを示すものでした。今、私たちはこの信頼を裏切って はなりません!この信頼は、私たち全員をより献身的にさせるに違いありません。
私たちは、キューバ全体を代表して、国全体のために働くことが義務づけられているのです。もし私たち国会議員が基礎行政区や地区で組織的に活動し、自治体の機能に取って代わることなく自治体に寄り添い、引き続き人々の声に耳を傾け、地域の可能性を超える問題をより高いレベルで解決していくならば、私は、これらの問題の解決に向けて日々前進していけると確信しています。
私たち全員が大衆の基盤の一員をなし、私たち全員が大衆の基盤にお世話になっています。私たちが大衆の基盤と常に交流するなら、問題が深刻化し、苛立ちを覚えるようになる前に解決することができることが示されたのです。
経済に対する外部からの障害だけでなく、官僚主義、無関心、原則からして是認できない汚職によって生じる深刻な困難の中で、この国が前進するかどうかは、国会議員一人ひと りが、封鎖の解除されるのを待たずに封鎖を克服するという、私たち自身が提起した歴史的な課題に献身的に取り組むかどうかに大きくかかっています!
同胞の皆さん
このように国会が若返ったことを大変うれしく思います。ここ数カ月、数年の最大の関心事のひとつが、人口の高齢化と、私たちの社会の若い層を巻き込む移民の多さでした。 私は、キューバの若者たちの激励に感謝したいと思います。しかし、同時に若者たちの献身と模範的行動にも感謝したいと思います。それは、私たちが達成したことすべてを可能 にするにあたり、決定的なものでした。
若いキューバ人たちは、この国を作り、この革命を支え、私たちが行っていること、そして将来行うことの夢を支える人たちの一員です。すべてのキューバ国民と同様に、彼らは経済的需要とその恐ろしい結果に苦しんでいます。 しかし、彼らはまた、封鎖を乗り越え、 不足を乗り越え、未来の理想を持って日常生活を送り、内側からも外側からも、キューバをより良い国にする決意がある若者たちでもあるのです。より良い国を作ることは常に可能であるという考えは、特に困難な時代や希望を失わせる報道の影響下においても、決して捨て去ることはできません。私たちキューバ人は諦めないことを学んできました。なぜなら、私たちは困難を障害としてではなく、課題として捉 えているからです。 そして、私たちは、それに立ち向かっていきます。その気質は、私たちの国民性の特徴でもあります。
若者たちは最高の革命家です。なぜなら、彼らは日々の困難を認識し、それに立ち向かい、 変えようとし、何度も成功するからです。 逆境にあっても、引き続き彼らは微笑み、引き 続き愛し、より良い国の可能性を信じているからです。中には彼らを参加しないように、 破壊するように、憎しみを持つように誘うことがあってもそれは変わりません。彼らは、より良い世界を実現するためには、他者との違いを受け入れ、包摂的であり、あ らゆる種類の差別を廃止することが必要であり、公平性はどのような社会においても培わ れるに値する実現すべき価値であることを理解しています。
私たちは、私たちの若者たちに、祖国で自己実現が可能であることを納得させなければなりませんが、何よりもそれを証明しなければなりません。 彼らが考えや計画を提案し、 より良い国のためにその有効性を実践で証明するのです。
一方、私たちは、敵が操っているキューバ人移民の政治化に加担することはできません。 私たちは、キューバ人移民との関係を守らなければなりません。それは、私たちが彼らの 成功を賞賛し、彼らの祖国が彼らを尊敬し、彼らを誇らしく見つめ、彼らの帰還を待っていることを彼らに明らかにし、彼らが、自分たちが生まれ、愛によって彼らが成長した土壌を尊敬し守ることを、私たちは熱望するだけなのです。もちろん、私は、哀れな反共のマッカーシズムのショーでキューバの人々の痛みから利益を得て、悪魔に魂を売った人たちのことを話しているのではありません。世界のどこに住んでいても、キューバとの関係においてさまざまな理由でもってあるいは理由なしで、山ほどの障害に直面しているにもかかわらず、自分の出身国キューバへの愛と、キューバの 発展を願う気持ちを持ち続けている人たちのことを指しているのです。
社会主義は、若者たちにより近いものです。社会主義は完成されたものではなく、毎日作られているものであり、若者のエネルギーと自然な大望がこの仕事の基本だからです。
なぜ革命なのか、なぜ社会主義なのか。しばしば、私たちは革命を目的、ゴールと考えることがあります。革命は手段であり、可能な限りの社会正義とすべての人の幸福 を達成するための方法です。このことは、福祉が豊かさと結びついている別の制度では達成できません。そこでは一方の人々がごく少しの富をもっているか、あるいは事実上何ももっていないかであり、他方の人々は貧しい人々によって作られた大部分の富を手にしているからです。
私たちが提案する国の計画は、他のモデルとは異なる、より良い相乗効果を見出すことを 目的としています。それは、個人的にも集団的にも、より高いレベルの公平性と実現をも たらし、私たちが社会として共有するいろいろな価値観が刻印されており、さらに持続可 能性と繁栄も組み込んだものです。
私たちが歴史的な状況の中でこの時期を迎えたのは、奇跡ではありません。1868 年に始まった革命で、独立と主権、そして奴隷制の廃止を求めて、当時最も強力な帝国を相手に、 ほとんど武器を持たずに戦ったのです。小さくて、病気で、貧しい人間が、普遍的なヒューマニズムの思想に啓発され、その夢を叶えることができなかったすべての世代を団結させるための戦いでした。
要約すれば、キューバ国民は、戦うことに飽きることのない英雄的な国民であり、その英雄性が、ほぼ 2 世紀を経た今もなお、人々を鼓舞し続ける指導者を生んだのです。すべての継承者であり、すべての世代をつなぐ、マルティとフィデルが登場したのです。10 キューバ革命の指導者であり、闘いの伝統の継承者であり、またわが国で最高の責任を担う私たちの導き手であるラウルへ、あなたの支援と信頼に感謝します! 私たちは決して信頼を裏切りません。
今日、私は、情熱と責任感をもって、一心不乱に、最後の結果まで皆さんに仕えることを誓います。同志の皆様、皆様はこう言いました。団結と勝利は希望であり、団結と勝利は祖国と社会主 義の現在と未来であると! 祖国か死か! 私たちは必ず勝利する!
(新藤通弘訳)
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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