本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(412)
- 2023年 6月 2日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
世界的な信用消滅
現在の「世界的な金融混乱」については、「信用の消滅」という言葉が。ぴったり当てはまる状態のようにも感じているが、この点については、過去を振り返りながら、より詳しい説明が必要な状況とも言えるようである。つまり、「戦後の26年サイクル」、すなわち、「1945年8月15日から1971年8月15日までの26年間」に関しては、「実体経済の成長期」であり、また、その後の「1997年8月13日までの26年間」に関しては、「経済の金融化」の時期だったことも見て取れるのである。
別の言葉では、「実体経済の成長」よりも「民間金融機関の残高」が増えた期間であり、このことは、「犬のしっぽ」の役割を持つ「マネー」が、「犬の身体」を意味する「実体経済」を振り回していたような状況を表しているのである。しかも、この後の展開としては、「民間金融機関が簿外で保有するデリバティブの大膨張」という異常事態が発生したものの、実際には、この事実がほとんど報道されず、いまだに闇の中の状態となっているのである。
より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が意味することは、「約8京円の規模にまで大膨張したデリバティブのバブル崩壊」であり、また、その後の「世界的な量的緩和(QE)」については、「デリバティブが創り出したデジタル通貨の食い潰し」を表していたものと理解できるのである。つまり、「中央銀行が民間から資金を借りて、国債の大量買付けを実施し、超低金利状態を作り出した事態」のことだが、この点についても、いまだに、ほとんどの人が認識できない状況となっているのである。
そのために、今回の「米国発の金融混乱」についても、現在、「ほとんどの人が、全く理解できない状態」となっているようにも感じられるが、実際には、「世界的な信用消滅」という言葉のとおりに、「根のない切り花が枯れ始めた事態」とも理解できるのである。つまり、「現代の神様」のような地位にまで祭り上げられた「デジタル通貨」が、急速に消滅を始めるとともに、「神から紙への変化」を見せている状況のことである。
そして、今後の展開としては、「80億人の換物運動」が想定されるものの、実際には、すでに、「金や銀などの貴金属が手に入りにくい状況」となっており、しかも、「過去20年間で、金価格が約8倍の上昇」というように、「通貨の価値が、金に対して、約8分の1にまで下落した状態」であることも見て取れるのである。つまり、「インフレへの対策」としては、現在、すでに「手遅れの状態」となっており、このことが、「100万人に1人も気付かないうちに、インフレが進行する展開」を意味しているものと考えている。(2023.5.6)
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米国のFednow
7月からスタートする「FRBの即時決済システム」、通称「Fednow」には、大きな注意が必要だと感じているが、その理由としては、「実質上の紙幣増刷」となる可能性が指摘できるからである。そして、この点を理解するためには、「過去数十年間の世界的な金融情勢」、そして、「現在の米国の資金繰り」などを分析する必要性があり、具体的には、「全ての金融主体が資金難に陥っている可能性」の検証である。
より詳しく申し上げると、「FRBのQTと連続利上げ」がもたらしたものは、「民間部門のバランスシート不況」であり、実際には、「資産価格の急落による不良債権の急増」とも言えるのである。その結果として、現在、「1929年型の大恐慌」、すなわち、「金融引き締めによる金融機関の連鎖倒産」を引き起こす可能性が高まってきたために、今度は、反対に、「1923年のドイツのような大インフレ」を目論んだ状況とも考えられるのである。
別の言葉では、「紙幣の増刷」により「市場への大量資金供給」が実施される可能性のことでもあるが、この時の問題点は、以前から指摘しているように、「金融界の白血病」、すなわち、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない状況」とも言えるのである。つまり、現在は、「デジタル通貨の全盛期」であり、その結果として、「世界的な決済が、ほぼ瞬間的に実施可能な状況」でもあるが、一方で、「弊害」としては、「預金の引き出しが、きわめて短期間に実施される状況」も指摘され始めているのである。
そのために、「FRB」としては、現在、「資金難に陥った米国の民間金融機関」に対して、「Fednowを通じた、大量のデジタル通貨の資金供給」を目論んでいる可能性も想定されるのである。つまり、これから予想される「OTCデリバティブがもたらす巨額損失」に関して、「FRBによる資金供給」が考えられる状況でもあるが、この時の問題点としては、やはり、「国民の換物運動が始まる可能性」も指摘できるのである。
具体的には、「貨幣価値の急減」」を危惧した国民が、一斉に、「実物資産を購入し始める可能性」であり、この時には、「終戦直後の日本人」のように、「持っている資金を、即座に、実物資産へ転換する動き」が高まるものと想定されるのである。つまり、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」と「紙幣」との経済的効果については、実質上、ほとんど違いがない状況が想定されるとともに、この時、最も大きな影響力を持つのは、やはり、「国民の政府や通貨に対する信用」であり、現在、この数値は、ほとんど「ゼロ」に近づいている状態とも思われるのである。(2023.5.6)
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大都市の貨幣と知性
シュペングラーの「西洋の没落」では、「大都市住民の特徴」として「貨幣(富)と知性」が挙げられているが、この点については、私の仮説である「共同体の規模拡大がもたらす富の増加」が当てはまるものと考えている。また、「大都市の市民階級」に区分される人々は、現在の状況からもお分かりのように、「知性的、かつ、裕福な生活」を望む傾向があるようにも思われるのである。
そして、この反対の状況としては、「血と伝統」、あるいは、「神と本能」が指摘できるものと感じているが、実際のところ、「血縁を基にした小さな共同体」においては、「伝統」が重んじられるとともに、「大自然の脅威」などを経験することにより「神への畏敬心」が強まるものと思われるのである。別の言葉では、「知性」よりも「本能」が重要視される環境のことでもあるが、反対に、現在のような「大都市の巨大空間」においては、「社会の部品となった疎外感」や「知性重視の状態」などにより、「生命力の枯渇、そして、本能の渇望」が特徴として挙げられるものと考えられるのである。
このように、現在の特徴としては、「民主主義と中央銀行」、あるいは、「都市化現象である政党政治」などが指摘できるものの、今後は、すでに始まった「貨幣の敗北」により、「共同体の分裂」が加速する展開も想定されるのである。つまり、現在の「米中の対立構造」については、すでに、「グローバル共同体の分裂」、そして、「富の残高が急減している状況」を表しているものと考えられるのである。
そして、今後は、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と同様に、「財政赤字がもたらすインフレ」により、「大都市での生活」が苦しくなり、その結果として、「民族の大移動」、すなわち、「海外や地方などへの移住」が始まる状況も想定されるのである。別の言葉では、「800年間も続いた西洋的な奪い合いの時代」が終焉し、今後は、「東洋的な分かち合いの時代」が、今後の800年間にわたり継続する状況を想定しているが、実際には、「11次元にまで進化した自然科学」が「三次元に留まっている社会科学」を進化させる展開が期待できるものと感じている。
より具体的には、「お金の謎」や「時間のサイクル」、そして、「心の謎」などが解明されることにより、「無駄のない効率的な社会」が形成される可能性のことでもあるが、実際には、最初に、「未曽有の規模での金融大混乱」により、「既存の常識や価値観が完全崩壊する事態」が想定されるものと感じている。(2023.5.8)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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