【7月22日(土)】第六回 ヘーゲル研究会のお知らせ
- 2023年 6月 27日
- 催し物案内
- ちきゅう座会員ヘーゲル研究会滝口清栄野上俊明
これまで二回の「市民社会」論の講読から見えてきたことを、自己流ながら簡単にまとめます。
普遍性と特殊性の論理的概念を使って、ヘーゲルは市民社会を成立させている個の契機と共同性の契機の相互関係を明らかにします。個の契機とは、個人がおのれの欲求の充足を求めて活動することですが、市民社会の構成員全員がそうすることによって、各人は無意識ながらに相互に補完し合い相互に欲望の充足を助け合うことになり、結果として市民社会の総体性は維持されます。なるほどそれは確かにA・スミスのいう「見えざる手invisible hand」の哲学的な換骨奪胎であるには違いないのですが、しかしそこには見逃してはならないヘーゲルらしさ、ヘーゲルのオリジナリティがうかがわれます。
確かに市場―商品関係は個々人をして自動的に総体性・普遍性の水準に押し上げます。その限りでは、人々はかつての共同体における生(なま)の人格的な相互依存関係を脱して、同市民的な関係に入ることになります。しかし人々は商品という物象が織りなす関係(外的法則)の受動的な項である限り、まだお互いに市民になったとは言えない。市民が市民らしい市民になるためには、ヘーゲルは「より高い解放のための労働」が、つまり市民の自覚的な自己形成の契機として、「陶冶・教養(Bildung)」が必要なことを強調します。ヘーゲルによれば、教養とは、お高くとまった知識誇りとは無縁の、自己を厳しく磨き上げる労苦の過程です。教養(を積む)とは、今日風に言えば、「社会化」に近い概念です。人間が市民社会の一員になるためには、社会的な規範を内面化し、成熟して自律的に規範に沿った行動ができるようになることを言います。ただしヘーゲルの教養は、既成の社会規範への非自律的同調―M・フーコーが厳しく批判した―とは異なり、過去の世界史的な精神的な遺産を内面的に再生産し、わがものとする労苦に満ちた行為を意味するものと思われます。
ヘーゲル流の市場論の本格展開はこれからですが、端緒的なところでもヘーゲルらしさがうかがわれてこれから先の展開にいっそう興味が湧いてくるところです。
記
1.テーマ:ヘーゲルの市民社会論
テキストー中央公論社「世界の名著」の「ヘーゲル・法の哲学」から
第二章 市民社会(§182~§256)を講読会形式で行ないます。今回は§189からです。
★国内では数少ないヘーゲル「法(権利)の哲学」の専門家であり、法政大学などで教鞭をとられた滝口清栄氏がチューターを務めます。
<先生の著作・翻訳> ヘーゲル『法(権利)の哲学』―形成と展開(お茶の水書房)。共著/ヘーゲル「精神現象学」入門 (講談社学術文庫)、共訳/イェーナ体系構想―精神哲学草稿1・2(法政大学出版局)など
1.とき:2023年7月22日(土)午後1時半より ―7月のみ第4土曜日です。
1.ところ:豊島区東部区民事務所・集会室2(3階)
――JR大塚駅(北口)より、徒歩5分(巣鴨警察署横)
1.参加費:500円
1.連絡先:野上俊明 E-mail:12nogami@gmail.com Tel:080-4082-7550
参加ご希望の方は、必ずご連絡ください。
※研究会終了後、近くのレストランで懇親会を持ちます。
以上
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