ていこう原理 20 なぜ《夜間》中学でなければいけない?
- 2023年 8月 11日
- 時代をみる
- 夜間中学長谷川孝
◆公立夜間中学は44校と増えているが
いわゆる教育機会確保法による公立の「夜間中学」が増えています。2023年4月現在、17都道府県で44校、さらに14県で計画が進められているそうです。同法によれば、学齢期を過ぎていて就学の機会が提供されず学ぶ機会を希望する者にその機会を提供する、夜間(夕方から夜9時ごろまで)に通学して対面授業を受ける中学校です。
夜間学校といえば定時制高校が思い浮かびます。働く若者に学ぶ場を提供し、多くの優れた教育実践が報告されています。じつは夜間中学も多くありました。戦後の混乱期にさまざまな理由で学校教育を受けられなかった人の学ぶ場として設けられ、1954年には全国で89校があったそうです。
しかしその後、減っていましたが、必要とする人がいなくなったわけではなく、各地で自主夜間中学の取り組みが行われていました。そこに公立の夜間中学開設 を進めたのが教育機会確保法でした。
◆オンライン=通信教育を活かそう!
ところで、通学対面授業ではなく、通信教育で中学校の卒業資格を取れる「通信制課程」の中学校が、1校だけあります。中学校通信教育規定(昭和22年文部省令)による課程で、千代田区立神田一橋中学校に併設されています。もともとは、戦後の新制中学校に通えず高校進学資格のない人が対象で、近年は入学対象者がほとんどいない事態になっていました。
千代田区教委は、「貴重な学ぶ場を残して」という多くの要望を受けて、課程の存続を決め、戦後の混乱の影響等により中学校で十分に学べなかった65歳以上の人に入学対象者の枠を広げたのです。その結果、現在の在籍者が18人です。通信教育を望む人が少なくないわけですが、ただし都民しか入学できません。
さて、広がる公立夜間中学ですが、なぜ「夜間」でなければいけないのでしょうか。オンライン学習、つまり通信教育が広がり、通信制高校に通う生徒も増えている今、高齢者や不登校経験の10代の子が、夜間の通学を強いられることに問題を感じないのでしょうか。
既存の夜間中学は、夜間である必要がありました。働く通学者や授業の場(教室)の確保などです。でも今、予算も教室も教員も公的に保証されるのですから、夜間である必要は全くありません。
夜間中学ではなく、通信課程と昼間定時制課程を、自治体は積極的に取り入れるべきだと思います。中学校通信教育規定により、文科省の認可を受ければいいはずで、併設も一案です。
◆法の規定は「夜間その他特別な時間」
教育機会確保法は夜間中学について、「夜間その他特別な時間において授業を行う学校」と規定しています。「特別な時間」というこの時間は、どんな時間でしょうか。放課後の時間?始業前の午前5時から8時?むしろ、昼間定時制的な時間ととらえれば、夜間にこだわらなくてもいいように思われます。個々人の都合に合わせる自由な時間です。
国の法が、文科省が、「夜間」というから、ともかく夜間中学。しかも、文科省は小中学校での通信教育は認めていないから、通信制・昼間定時制なんて無理だ。……じゃなくて、地方自治の独自の発想や解釈で、身近な住民の学びの必要に大胆に応えてはどうか(読者)
初出:「郷土教育769号」2023年8月号より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye5095:230811〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。