露シア烏クライナ戦争――兄弟殺しと腐敗、もう厭だ。先ずは撃ち方止め。――
- 2023年 8月 17日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征
ISF、すなわちIndependent Speach Forum、「独立言論フォーラム」なる電子言論団体がある。そこに安斉育郎氏が詳細なウクライナ情報を毎日提供している。北米西欧日本の市民社会主流メディアの伝えるウクライナ・ロシア情報に多面性欠如を感じる者は、視聴するに値する。そこの7月22日ウクライナ情報に次の一文を読んだ。
「私たちは消滅するかもしれないし、ウクライナは全く残らないかもしれない。ウクライナもウクライナ人も。世界は3日間泣いて、彼らは翌日には元の世界に戻るだろう。」(ISF、2023年7月30日、強調は岩田。)こう語った人物は、ウクライナ大統領府元顧問オレクシイ(アレクセイ)・アレストヴィチだと言う。情報の出所が明記されていないので、たしかな事は言えないが、この発言がまことにアレストヴィチの口から出たとすれば、まことに驚きである。
私=岩田は、「ちきゅう座」「評論・紹介・意見」(2022年5月19日)で「ウクライナの対ロシア大戦事前戦略――ウクライナ大統領側近の2019年テレビ・インタビュー――」http://chikyuza.net/archives/119456 で公然と語られたアレストヴィチの対ロシア全面戦争論/NATO加盟論を具体的に紹介しておいた。
首尾よく、プーチン大統領をウクライナ侵略=戦争犯罪へ誘導して、国際政治的に大勝利したはずのウクライナ好戦集団の一員が、対露軍夏季反攻作戦の挫折最中とは言え、4年半後の今日、上記のような超悲観的弱音を吐くとは! ウクライナ民衆への責任は、プーチン露国同様重い。情報の確認が必要だ。
日本市民社会主流の露烏戦争テレビ討論を視聴していると、絶滅危惧日本固有種のような親露政治家が露烏戦争停戦論を説くと、繁栄する外来侵入種のような―クリントンNATOのセルビア侵略がまったく念頭にない―研究者・解説者一同、停戦提言がプーチン露国の侵略事実を容認する事になってはいけないと、正論を一斉に強調する。結局は、ウクライナ軍の次期反攻大作戦の成果に期待する戦争持続論だ。
ウクライナの東南黒海沿岸の四州をロシアが事実上占領している事実の承認と、万国公法上領土編入する行為の承認とは異なる次元である。停戦は前者のみにかかわるテーマである。
ここで、私=岩田は、1999年のNATOによる対セルビア侵略戦争の終結事例を想起する。
NATO侵略によって、セルビアは自国領の15パーセントに当たるコソヴォを事実上もぎ取られた。しかしそこがNATO軍の事実上支配下にある事を承認した。その後も、北米西欧の市民主義諸国は、コソヴォ・アルバニア人の国家建設を推進し、国際承認の拡大に努力する。コソヴォ新国家は、母国アルバニアとの統一に努力している。
セルビア国家は、かかる事実を承認しつつも原則を譲ってはいない。今日に至るまでコソヴォ国家の国際法的存在を承認していない。断固拒絶している。だからと言って、NATO軍とコソヴォ・アルバニア軍と再戦しようと努力している訳ではない。
同様の停戦・非交戦状況がウクライナとロシアの間にも再現できるはずだ。その場合、ウクライナが侵略されたセルビアの立場、ロシアが侵略したNATO(とアルバニア)の立場、東南黒海沿岸四州がもぎ取られたコソヴォの立場に相当する。
かかる万国公法的にはすっきりしない非交戦状態が実現できたのは、700対1と言う超極端な戦力格差の前に「私達は消滅するかもしれないし、セルビアはまったく残らないかもしれない。」とセルビア大統領ミロシェヴィチが実感したからだ。因みにセルビアの武器支援要望をロシアは無慈悲に拒絶した。そして、外政内政的に玄人政治家であったミロシェヴィチは、自己の現状把握にもとづいて、国家意思を決断できた。
ウクライナ大統領の脳内における戦力格差は、米英に約束された武器供給のゆえ、幻想上で1対2、相対的にウクライナは有利なのかも知れない。また外政内政的に素人政治家であるゼレンスキ―は、万国公法的にすっきりした戦争状態を選択しやすいであろう。それがウクライナ常民にとってマイナス、米英の深層国家と深層市民社会にとってのみプラスであるとしても・・・。
令和5年8月15日(火)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion13185:230817〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。