本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(425)
- 2023年 9月 1日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
最後の藁一本
現在の「世界的な金融大混乱」に関して、大きな注目を浴び始めているのが、「何が、ラクダの背骨を折る最後の藁一本になるのか?」ということであり、実際には、「どのようなきっかけで、約600兆ドルのOTCデリバティブと約330兆ドルの世界債務という、目に見えない金融ツインタワーの崩壊が始まるのか?」ということである。つまり、「2022年11月9日」に発生した「FTXの破綻」は、私の想定どおりに、「金融ツインタワーに突撃した最初のジェット機」だったものの、「2機目のジェット機」に関しては、私の想定とは違い、「2023年3月10日」から発生した「シリコンバレー銀行などの破綻」だったようにも感じられるのである。
別の言葉では、「現在が、依然として、『目に見えない金融ツインタワーの炎上中』の状態ではないか?」ということでもあるが、この点に関する最近の報道としては、「利上げにより、欧米諸国の金利負担が急増する可能性」のみならず、「世界的なドル離れ」や「米国に対する信用失墜」までもが指摘され始めているのである。つまり、「BRICS諸国による新たな通貨制度の設立」などのことでもあるが、この点については、「過去のハイパーインフレ」が参考になるものと感じている。
具体的には、「マネーの大膨張」の後に「金融大混乱」が発生するものの、その後は、「リフレーション政策」を経た後に「大インフレ」が発生し、その結果として、「デノミ」や「新たな通貨制度の成立」へとつながる展開のことである。つまり、「膨大に膨れ上がった債務残高が、ハイパーインフレで減少しない限り、新たな時代が始まらない可能性」のことでもあるが、現在は、ようやく、「ハイパーインフレが発生しかかっている段階」とも言えるのである。
そして、この点に関して気になる出来事は、「リスクマネーの最後の供給減」と言われている「日銀」が、「7月の金融政策決定会合で、きわめて曖昧な態度を取った事実」のようにも感じている。つまり、「世界中の投資家が疑心暗鬼になるような状況」を引き起こした結果として、「デリバティブの本格的な崩壊」や「世界の債券市場が、急激な下落に見舞われる展開」などが想定される状況のことである。
別の言葉では、「戦後の26年サイクル」のとおりに、「2023年8月15日前後に、本格的な金融大混乱が始まる可能性」のことでもあるが、この点に関して忘れてはいけない事実は、「時間の経過とともに、世界の債務残高が膨張している状況」だと考えている。(2023.7.31)
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西ローマ帝国の崩壊
「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」という「目に見えない金融ツインタワー」の崩壊後に、「東西文明交代の後半部分」も入るものと考えている。そして、この時に役に立つのが、「1600年前の西ローマ帝国崩壊」であり、実際には、「現在」と「1600年前」とを対比しながら、「これから、どのような展開が想定されるのか?」を考えることでもあるようだ。
具体的には、「375年のゲルマン民族大移動」や「410年の西ゴート人によるローマ略奪」、あるいは、「438年のテオドシウス法典の発布」や「476年の西ローマ帝国の滅亡」などのことである。つまり、「西ローマ帝国から東ローマ帝国への移行」に関して、最も需要なポイントは、シュペングラーが指摘するとおりに、「大都市の貨幣と知性」の崩壊により、「法治国家の消滅」のようにも考えられるのである。
別の言葉では、「共同体の分裂、および、規模縮小」により、「貨幣の総量が急減する事態」に見舞われた可能性でもあるが、このことは、同時に、「大都会に住む人々の生活苦」を表しているようにも思われるのである。つまり、「375年のゲルマン民族大移動」については、「人々が、田舎から大都市へ移住する状況」を表しているものの、その後の「民族大移動の後半部分」では、反対に、「都会で生活できなくなった人々が、地方や海外へと移住する展開」だったことも見て取れるのである。
より詳しく申し上げると、「410年のローマ略奪」に相当するのが、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」であり、また、その後、「476年の西ローマ帝国崩壊までの約66年間」については、「現在の混迷」と同様に、「紛争や金融混乱、あるいは、インフレなどが発生した状況」だったものと推察されるのである。つまり、「マネーや土地などの奪い合い」が激化するとともに、それまでの「ローマ法」が役立たたなくなった展開のことである。
ただし、今回の「救い」としては、やはり、「11次元にまで進化した自然科学」であり、今後は、「三次元に留まっている社会科学が、AI(人工知能)などの活用により、より高次元に進化する展開」も想定されるのである。つまり、「歴史を学びながら、1600年前の愚を繰り返さないこと」でもあるが、この点に関して、最も必要な点は、やはり、「お金の謎」が解き明かされることにより、「現在の世界金融が、どのような状態になっているのか?」が、深く認識されることだと考えている。(2023.8.3)
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1.85兆ドルの米国債
現在、多くの人々の共通認識としては、「間もなく、24年間も続いた日本のゼロ金利政策が終了し、今後は、金利が付く正常な時代が復活する」という点が指摘できるようだが、貨幣の歴史からは、全く違った展開が訪れるものと感じている。つまり、「24年間も、なぜ、実質的なゼロ金利政策が継続できたのか?」を考えると、「谷深ければ山高し」という相場の格言のとおりに、「これから、大きな反動が訪れる可能性」も想定されるのである。
具体的には、「デリバティブの大膨張」や「世界債務残高の急増」に関して、大きな反動が訪れる展開のことでもあるが、この点について、現在、海外で危惧され始めたことは、「年末までに米国で予定されている約1.85兆ドル(約260兆円)の国債発行」とも理解できるのである。つまり、「誰が、どのようにして、巨額な規模の国債を買うのか?」ということでもあるが、現時点では、「最後の買い手」である「中央銀行」しか候補者が残されていない状況とも想定されるのである。
より詳しく申し上げると、現在では、「1913年」に設立された「米国の中央銀行であるFRBの役割」に関して、いろいろな疑問が噴出し始めている状況でもあり、実際には、「1913年に、1000ドルで48オンスもの金が買えた」という状況が、現在では、「1000ドルで0.5オンスしか買えない事実」、すなわち、「貨幣の購買力が約98%も下落した展開」に関して、「中央銀行は、誰のために存在するのか?」というような疑問までもが出始めているのである。
別の言葉では、「中央銀行の役割が、マネーを大膨張させることであり、また、この時に発生するインフレ(通貨価値の下落)を、国民に気付かれないことだ」というような意見のことである。そして、このような状況下で、今後、前述の「約1.85兆ドルの国債発行」が予定されているわけだが、この時の問題点は、やはり、「FRBが、紙幣の増刷、あるいは、CBDCの発行により、財政ファイナンス(債務の貨幣化)を実施する可能性」である。
その結果として、「中央銀行や政府の信用が、一挙に地に堕ちる可能性」も存在するために、その後、「世界中の人々が、慌てて、換物運動に走る展開」も想定されるのである。別の言葉では、「デリバティブが創り出した大量のデジタル通貨が、小さな実物資産の市場へ殺到する状況」のことでもあるが、この点を、「貨幣の歴史」から判断すると、「1600年ほど前の西ローマ帝国の崩壊時」にまで遡らざるを得ない状況でもあるために、今後は、「未曽有の規模での金融大混乱」も想定されるようである。(2023.8.8)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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