SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】544 赤道直下アフリカ・ガボンで軍事クーデター
- 2023年 9月 2日
- 評論・紹介・意見
- ガボンクーデター国連平田伊都子西サハラ
2023年8月30日、赤道直下にあるアフリカのガボンで、突然、「悪化する治安状況と悪い統治を終わらせるために、権力を掌握した」と、ガボン軍幹部が国営テレビで、アフリカ訛りのフランス語で軍事クーデター蜂起を宣言しました。 すぐに国連事務総長が軍事クーデターに対して、批難声明を出しました。 いつにない即応にビックリ! が、ガボンが国連安保理の非常任理事国だから、情報の流れが速かったようです、、
軍事クーデターでガボンの暫定指導者になったブライス・オリギ・ンゲマ将軍
① 元フランス植民地・ガボン共和国:
ガボンは日本の約3分の2の広さがあるが、人口は228万人と少ない。西は大西洋に面し、北西に赤道ギニア、北にカメルーン、南と東にコンゴ共和国と、国境を接している。
国土の88.5%(2014年)がジャングルで、、手つかずの豊かな自然が多く残っている。ジャングルには、ゾウ、ゴリラ、チンパンジーなどの大型哺乳類が多数生息している。首都リーブルヴィルを含む北部や東部の一部は熱帯モンスーン気候だ。
外務省によると、サブサハラ・アフリカ有数の産油国であり、輸出収入の68%、GDPの27%、国家収入の59%を石油に依存する。石油に加えた、マンガン、木材で輸出収入の9割を占めるそうだ。1960年にフランスから独立したが、公用語は相変わらずフランス語だ。豊かなガボンの天然資源が目当てで、フランスは350人編成のフランス軍を送り込んでいる。
1967年に初代大統領ムバが死去し、副大統領のオマル・ボンゴ・オンディンバがその跡を継ぎ、2009年6月8日に死去するまで約41年の長期にわたって大統領職を続けた。その後を継いだのが息子の現大統領アリ・ボンゴ・オンディンバで、親子2代56年にわたって、ガボンの豊かな資源を独占してきた。オマルとアリ親子はその名が表するように、73%がキリスト教徒の中にあって イスラム教徒だ。息子アリの前職は歌手でサッカー選手。
2023年8月26日に行われた大統領選挙では息子アリ・ボンゴ・オンディンバが三選を目指し、国際的なオブザーバーなしで、外国放送の一部を停止し、投票終了後にインターネットを遮断し、夜間外出禁止令を出したという異様な状況で、勝利宣言をした。
そして、選挙結果が発表されたその日、8月30日、ガボン軍の幹部がテレビ放送で権力掌握を発表した。軍幹部は国内の全ての治安・防衛当局を代表していると主張し、「ガボン国民のため、われわれは現政権に終止符を打つことで平和を守ることを決定した」として選挙結果の取り消しと国境封鎖、及び国家機関の解散を宣言した。
2018年に脳卒中で倒れたガボン大統領アリ・ボンゴはモロッコで長期療養をした。軍事クーデターの日に、やや後遺症が残るアリ・ボンゴはビデオで、「現在、自分自身は住居にいる。何が起こっているのか分からない」と、国際社会に対し、自身と家族を支援するよう求めた。パリ生まれの白人で超高級ブランド嗜好のシルヴィア大統領夫人に関して、「今、妻も息子もどこにいるのかしらない」と、アリ・ボンゴは語る。息子は逮捕されていた。
② 2020年以来、元フランス植民地で8番目のガボン軍事クーデター:
国連安保理現メンバー国であるガボン大統領のSOSにアントニオ・グテーレス国連事務総長は報道官の口を借りて、「すべての関係者に対し、自制を行使し、包括的で有意義な対話に参加し、法の支配と人権を完全に尊重するよう訴える。国軍と治安部隊に対し、共和国大統領とその家族の身体的完全性を保証するよう呼びかけた」と、声明を発表し、「選挙が安全であること、人々が自分自身を表現できること、人権が尊重されること。それらが最良の救済策だ。軍事クーデターに対する強い非難が必要、、理事会からも強いメッセージがあることを願っている」とし、「現在、ガボンには81人のUN国際スタッフと163人のUN国内スタッフがいる」そして、「国連は、ガボンの人々に寄り添っている」と、いつもの<常套句>を付け加えた。
「アフリカの旧フランス植民地で発生したクーデターとしては過去3年間で8件目となる」と、BBCやロイターやアルジャジーラなどが、ガボン軍事クーデターを報じた。CNN は、歓喜する群衆の映像を流した。8件のアフリカ軍事クーデターを調べてみると、、
マリでは、2020年8月にアッシミ・ゴイタ率いるマリの大佐グループが、<治安の悪化、立法選挙の争い、汚職>に反対する反政府抗議活動を受けて、軍事クーデターを起こした。西アフリカの近隣諸国から圧力を受けたマリ軍事政権は、民主的選挙を目指したが、軍は2021年5月に2回目のクーデターを起こし、副大統領だったゴイダが大統領に就任した。
チャドでは、2021年4月、イドリス・デビ大統領が戦場で殺害された後、チャド軍が権力を握り、デビの息子であるモハメド・イドリス・デビ将軍を、選挙までの18か月の移行期間を監督する任務を負う暫定大統領に任命した。
ギニアでは、2021年9月、特殊部隊司令官ママディ・ドゥンブヤ大佐が暫定大統領になり、3年以内に民主的な選挙に移行することを約束した。が、制度の創設や憲法上の改正など、軍事評議会による政治日程は未だに進んでいない。
2021年10月、スーダンでは軍トップのアブドゥル・ファッターハ・ブルハーン将軍がクーデターを起こした。が2023年4月15日に、暫定政権議長のブルハーン将軍に従う陸軍部隊と、副議長のモハメド・ハムダン・ダガロ司令官の準軍事組織が戦闘を開始した。
ブルキナファソでは、2022年1月に軍事クーデターのリーダー・ポール・アンリ・ダミバ中佐は治安の回復を誓ったが、攻撃は悪化し、2022年9月に現在の軍事評議会の長であるブラヒム・トラオレ大尉が権力を握り、2回目のクーデターを成功させた。
ニジェールでは、2023年7月26日に軍が、「悪化する治安状況と悪い統治を終わらせる」とテレビで発表し、軍事政権は大統領警備隊の司令官だったアブデラマネ・ティアニ将軍を新国家元首に任命した。8月29日にフランス駐ニジェール大使の退去を正式に命じた。
(スーダンでは、イギリスとエジプトの共同統治(植民地)になるまで、フランス軍が展開していた)
③ まだ残ってるゾ、アフリカ最後の植民地:
「フランスの植民地政策が崩壊!」と、アフリカで相次ぐ反フランス軍事クーデターに、もろ手を挙げて喜んでいたアフリカ最後の植民地・西サハラのSNSだったが、ガボンの人々が選んだ新大統領を見て、上げた手を下ろした。新大統領は旧大統領と同じ穴のムジナ!
兵士たちに高く掲げられたガボン軍事クーデターのヒーロー、ブライス・オリギ・ンゲマ将軍(48才)とは、父親を真似てボンゴ大統領万歳を叫ぶ、根っからの兵卒。幼い頃からガボンの強力な共和国警備隊に加わり、モロッコの名門メクネス王立陸軍士官学校で訓練を受けた。現大統領の父であるオマル・ボンゴ大統領に仕え、2009年にオマルが死去するとボンゴ家から離れて、10年ほどモロッコやセネガルのガボン大使館に務め、2018年に帰国してから再び共和国警備隊の諜報部長に就任した。ボンゴ家の信任も厚く、健康不安があるアリ・ボンゴ大統領は、「息子を頼むね!」と、ンゲマ将軍に未来を託した。
8月30日、アリ。ボンゴ大統領を自宅軟禁し<頼まれた息子>を逮捕し、ブライス・クロテール・オリギ・ンゲマ将軍はガボンの暫定指導者になった。召使が主人になったのだ!
ンゲマ将軍はフランスのルモンド紙に、「ガボンの人々はアリ・ボンゴの支配と汚職にうんざりしており、大統領は3期目に立候補すべきではなかった」と、語った。が、ンゲマ自身も公的資金の蓄えを非難されている。2020年、米国の汚職防止組織OCCRPは、ンゲマとボンゴ家が現金の隠し場所として米国の高価な不動産を購入したと発表した。将軍は3つの不動産に100万ドル(約1憶5千万円)を費やしたそうだ。それに対して将軍は、「私生活は尊重されるべきで、アンタッチャブルな話」と、取り合わない。
SPS(西サハラ難民キャンプ通信社)は、ガボン軍事クーデターに言及していない。大家のAPS (アルジェリア国営通信社}も、ニジェール軍事クーデターに関しては政治交渉で解決しようと働きかけているが、ガボン軍事クーデターに関しては、静観している。
国連は「透明で安全な大統領選挙」を主張している。が、そんなもんな~い! 民主主義の指導者を唱えるアメリカ大統領選挙では、未だに約3年前の選挙結果でもめているのだ!2024年米大統領選挙には、国連は、是非、国際選挙監視団を送り込んでください!!
麻薬から汚職から国連まで、、世界の何もかも支配したいアメリカは、BRICSに西サハラ問題解決の功績を取られまいと、西サハラ難民キャンプに、米国国務省中近東局の北アフリカ担当国務副次官補ジョシュア・ハリスが率いる米国代表団を送り込みました。 9月1日から視察を開始しています。 西サハラにとって、朗報です。
また、報告します。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2023年9月2日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion13213:230901〕
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