本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(426)
- 2023年 9月 8日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
日本国債を巡る攻防戦
現在、「日銀」と「海外のヘッジファンド勢」との間で繰り広げられている、「日本国債を巡る攻防戦」については、きわめて大きな注意が必要だと感じている。つまり、現時点における「世界金融界における最大の歪み」としては、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」や「その8割程度を占める金利デリバティブ」が挙げられるとともに、「唯一、マイナス金利を保っている日本が、デリバティブの崩壊を防ぐための最後の砦となっている状況」とも思われるからである。
より詳しく申し上げると「2008年前後のGFC (世界的な金融大混乱)」の時にピークを付けた「デリバティブのバブル」に関しては、その後、「世界的な量的緩和(QE)」の実施により、徐々に、残高を減らしていった状況だったことも見て取れるのである。別の言葉では、「民間金融機関から、中央銀行のバランスシートへの不良債権の移行」が目論まれたわけだが、実際には、「あまりにも巨額なデリバティブの存在により、この目論見が途中で挫折した展開」だったことも見て取れるのである。
そのために、先進諸国の金融当局者は、現在、「中央銀行のバランスシートを膨張させる方法」として、「コンピューターネットワークの中を流れない紙幣ではなく、CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行を選択しようとしている状況」とも想定されるのである。つまり、「債務の貨幣化」という「財政ファイナンス」を実施する方法として、「大量のCBDCを発行する政策」が予定されているものと考えているが、この時に想定される展開としては、当然のことながら、「国債価格の暴落」や「世界的な金利急騰」であり、また、「世界的なハイパーインフレの発生」とも理解できるのである。
このように、今回の「日本国債を巡る攻防戦」に関しては、「人類史上、きわめて大きな分岐点となる可能性」が高まっているものと思われるために、きわめて大きな注意を払う必要性があるものと感じている。つまり、「信用消滅からマネー消滅」という展開に関して、今までは、「根のない切り花」のとおりに、「根っこの信用が消滅したにも関わらず、表面上の華やかさに惑わされていた状況」だったものと思われるのである。
しかし、今後は、「大量のデジタル通貨が、貴金属や原油、あるいは、食料品などの実物資産に殺到する展開」が想定されるために、「未曽有の規模でのボトルネックインフレ」や「世界的なハイパーインフレ」が発生する可能性が危惧されるとともに、このキッカケとなるのが、「日本国債を巡る攻防戦での日銀の敗北」のようにも感じられるのである。(2023.8.9)
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現代人のFOMO
海外では、最近、「FOMO(取り残されることへの恐れ)」という言葉が使われ始めているが、このことは、ウィキペディアで指摘されているように、「近年に現われ増えつつあるソーシャルメディア中毒に起因する言葉」と理解されているようである。つまり、「自分が居ない間に他人が有益な体験をしているかもしれない」という不安や「大きなニュースを見逃しているのではないか」と気になって落ち着かない状態を指す「見逃しの恐怖」とも認識されているのである。
あるいは、「社会的関係がもたらすこの不安は、他人がやっている事と絶え間なく繋がっていたい欲求である」とも理解されているようだが、この点については、「三次元の社会科学」がもたらす「典型的な苦悩」とも言えるようである。つまり、「目に見えるもの」だけを信じ、また、「自分の利益」を主眼とした行動を取りがちになる結果として、「目に見えないもの」や「他人の心理」などの理解が難しくなった状況のことである。
別の言葉では、「グローバル共同体」の一員となった結果として、「世界全体の動き」までをも注視せざるを得なくなったわけだが、このことは、「忙」という文字が示すように、「人々の心を失わせる結果」に繋がった状況とも考えられるのである。あるいは、「肉体」や「物質」などに対する「過剰な執着」を産み出したことにより、「心の柔軟性」、すなわち、「心と精神とのバランスが失われた可能性」も想定されるが、今後の注目点は、やはり、「FOMOの内容変化」とも言えるようである。
具体的には、「西洋文明の象徴」とも言える「お金(マネー)」の段階的な消滅により、「恐怖心の質が変化する可能性」のことでもあるが、この点については、「800年ほど前の日本」が参考になるものと感じている。つまり、当時の人々は、現代人とは反対に、「目に見えないもの」を信じ、また、「他人の利益」を主眼とする行動に励みながら、「現世よりも来世に期待して、寺社仏閣の建立に励んだ」という状況だったのである。
このように、歴史を遡ると、「人々の意識と行動が、私の『心の座標軸』のとおりに動いている状況」のようにも感じているが、今後の注目点としては、やはり、「量子力学」や「分子生物学」などが指摘するとおりに、「目に見えない世界」そのものが、より深く理解される可能性とも言えるようである。あるいは、「人類の意識と行動」が、大きく変化し、「戦争やいがみ合いなどの不合理性」が理解されるとともに、「人類が、力を合わせて、地球と共生する方法」を模索し始める可能性とも想定されるのである。(2023.8.10)
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大恐慌とハイパーインフレ
現在、世界中の人々が注目し始めたことは、「米国を始めとして、世界各国の債務残高が、今後、どのような結末を迎えるのか?」ということでもあるが、この時に、意見の分かれるのが「大恐慌か、それとも、ハイパーインフレなのか?」という点である。別の言葉では、多くの人々が、「金利上昇による債務残高の急増」を憂慮し始めるとともに、「過去の歴史」を調べ始めた状況とも思われるが、この結果として得られた結論が、「これから発生するのが、人類史上、一回しか発生しなかったアメリカの大恐慌か、それとも、過去に頻発したハイパーインフレか?」という疑問点とも言えるのである。
そのために、今回は、「大恐慌の原因」を説明するとともに、「今回の金融混乱」と照らし合わせてみたいと思うが、「大恐慌」に関する実情としては、「いまだに、理由が解明されていない」というのが「経済学の定説」とも理解されているのである。つまり、「なぜ、世界的な銀行の連鎖倒産が発生したのか?」が、まだ解明できない状況とも言えるようだが、実際には、「第一次世界大戦で、大量の金(ゴールド)を獲得した米国が、1923年のドイツのハイパーインフレを恐れて、金融引き締めを実施した」という点が、真の原因とも思われるのである。
より具体的には、「1913年に誕生したFRB」にとって、「金融システムのメカニズム」が理解できていなかったために、「急激な金融引き締めを実行し、民間金融機関を連鎖破たんさせた」という状況のことである。つまり、「国家や中央銀行には、大量の金(ゴールド)が存在しながらも、その金を有効に活用できなかった」というのが真相とも思われるが、一方で、「過去に頻発したハイパーインフレ」に関しては、反対に、「国家の資金繰りが厳しくなり、債務の貨幣化が実施された」という点が原因として指摘できるのである。
そして、この点を、現在の状況に当てはめると、当然のことながら、「大恐慌」が発生する可能性は、きわめて低く、反対に、「ハイパーインフレが世界的に発生する可能性」が、きわめて高くなっているものと考えられるのである。つまり、現在は、「民間金融機関に存在するOTCデリバティブ」に関して、「中央銀行のバランスシートを膨張させながら、徐々に、デリバティブの残高を減らそうとする思惑」が存在しているようにも感じられるのである。しかし、一方で、「どのようにして、中央銀行のバランスシートを膨張させるのか?」という方法論に関しては、今までのような「民間金融機関からの借り入れによるリフレーション政策」ではなく、「財政ファイナンス」という「CBDC(中央銀行デジタル通貨)や紙幣の発行」に頼らざるを得ない状況とも想定されるのである。(2023.8.14)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion13223:230908〕
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