くらしを見つめる会つーしん NO.227から 2023年8月発行
- 2023年 9月 10日
- 交流の広場
- 村山紀久子
大阪の選挙結果から市民運動や選挙運動を考える
大阪の政治は維新の会の独裁状態が10年以上続いている。議員定数削減など住民受けする「改革」を売りにするが、実態は住民の生活支援を削る一方、万博やカジノの大規模プロジェクトで大企業に奉仕する政党だ。選挙前になると強大な維新に対抗するために反維新統一候補の擁立が模索されてきた。今年4月の大阪市長選では1対1の構図を何とかつくったが、反維新候補の大敗(約2.5倍)だった。付け焼き刃的な政党の足し算では勝てるはずはなく、予想通りの結果と言えた。(府知事選は統一候補にもならず、維新候補がもっと圧勝)
その2か月後、6月にあった堺市長選。反維新統一候補の大敗には驚いたし、がく然とした。理想的な選挙戦を展開しているように見えていたので、当選か悪くとも接戦だと思っていたからだ。
堺市では、4年以上前に立ち上がった保革を超えた市民グループが議会ごとに市政チェックの集会(毎回100人以上)を持ち報告集を配布するなど日常的な活動をしてきた。その市民グループが主導して統一候補を立てた。市外から多数の市民(私も)が自主的に応援に入った。さらに、選挙直前の5月に維新議員の2つの人権侵害事件があった。(・入管法審議での大阪選出の梅村議員の詐病発言・維新大阪府議団代表のセクハラ)維新の体質が露見し、さすがに支持を減らすだろうと思った。「これで勝った」と思った。しかし、維新候補の票数は前回とほぼ同じ。維新の支持離れにはつながらなかった。むしろ、人権侵害を容認する人が維新を支持しているのではないかと思った。(ただし、獲得票は全有権者の21%に過ぎないので、人権侵害体質や自己責任論が多くに支持されているわけではないだろう。)投票率は前回を6%下回る34%だった。
「大阪では維新を倒すためには自民党と組むのも仕方がない」と市民運動をする多くの人が言い、私もそう考えてきた。しかし、この理想に近いかに見えた堺市長選挙は、住民には響かなかった。何かが根本的に間違っているのでは?と考えるようになってきた。
自民党も新自由主義(自己責任)を進める政党であり、維新と変わりはない。生存権を保障するのは国の責務(憲法25条)だが、それを実行しない自民党と組むことが生活苦にあえぎ投票に行かない(行けない)人に希望を感じさせるだろうか。
「国、自治体による生存権の保障の実現」をめざし、侵害されている人が中心になる運動をつくっていきたい。維新に勝つための足し算選挙はもういらない。自分の心に忠実な心地よい運動をしていきたいと思う。 (百姓のまーくん)
……中略……
♪こんな本いかが?
「堤未果のショック・ドクトリン」堤未果著 幻冬舎新書
ショック・ドクトリンとは惨事便乗型資本主義。災害や戦争、疫病流行等、人々がショックを受けている間に平常時にはできなかったこと(法律なども)を一気に変え、過激な市場原理主義を強行。公共の財産も、長年守ってきた環境も(アメリカとそのお友だち企業・銀行家・投資家によって)儲けの手段にされ、人々の暮らしは破壊される。資本主義社会だけでなくロシアや中国の政権中枢にもそれらの「お友だち」が入り込み、外資によって「公共」が食いつぶされ富は一部に集中。世界中で格差が開いている。デジタル化によって個人情報が政府や巨大企業に集約され監視社会へ。コロナ禍で治験途中のワクチンが緊急承認され、ワクチン接種が強行に進められたのは、WHOや各国政府、医師へ、製薬メーカーから巨額の資金が流れているため。堤未果さんはいつも「お金の流れを見れば問題がよくわかる」と言う。「人」も、製薬メーカーに居た人が政府の重要ポストに入り、また戻るなど、利害関係者がどこにいるかも注視を。便利さと安心ばかり求め、自ら考えないで委ねていると恐ろしい管理・監視社会の奴隷になってしまう。マイナンバーカード、温暖化ビジネス等の問題、自分の違和感を大切にという指摘も重要。誰によって何が壊されようとしているのかを知るためにも 必読の著!!!
〈編集後記〉
タモリさんの「新しい戦前になるのでは?」との発言が話題になりました。まさに戦前を思わせるこの頃。「大衆は愚か者である。同じ嘘は繰り返し何度でも伝えよ。共通の敵を作り大衆を団結させよ。敵の悪を拡大して伝え大衆を怒らせよ。考える間を与えるな。都合の悪い情報は一切与えるな。(一部略)」 という有名なヒトラーの大衆扇動術。5月の朝日新聞に「防衛力強化賛成6割」との記事があり、「大衆扇動術」にまんまと乗せられているのでは・・と、暗澹たる思いになりました。防衛力強化を求めるなら、戦略と人、食料やエネルギーを含む物資こそ重要なのに、使い物にならない米国製の高額な兵器の爆買いで無意味に防衛費を倍増させているだけ。食料もエネルギーも自給率は超低く、輸入が止まれば戦争になる前に人々は生きていけないのにその対策は無い。さらに、いつも定員不足の上、近年、辞める人が続出している自衛隊は戦えるのか。本当に戦争になってしまえば、シェルターがあろうと、日常生活はめちゃめちゃにされ、命の危険と共に生きていかなければなりません。敵基地攻撃などと言って数発のミサイルで片が付くはずはなく、一旦戦争が始まれば泥沼化し、止めるのは至難。台湾有事が煽られ、恐怖の感情から庶民が「防衛力強化」に賛成してしまうことで政府の兵器爆買いを容認し、我もと軍拡競争が過熱し、防げる戦争も防げなくなることを危惧します。台湾有事が心配なら尚のこと、中国と敵対し経済関係さえ悪化させるようなことはせず、火種を摘む努力こそ重要です。自国利益最優先の米国についていくだけでは日本は利用されてお払い箱にされるだけ。日本自身で戦略的に考え、全方位外交をすることで孤立無援にならないよう。米国に対しても、NOを含めキチンとモノを言い、軍事に偏重せず、あらゆる面で全ての人の命を守る政策を求めていくことこそ不可欠だと思います。 (きくこ)
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