本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(436)
- 2023年 11月 17日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
世界的なハイパーインフレ
海外では、現在、「世界経済は、いったい、どのような状態になっているのか?」という疑問が噴出するとともに、さまざまな議論が行われているが、具体的には、「実体経済が、今後、ソフトランディングするのか、それとも、ハードランディングなのか?」、あるいは、「リセッションとインフレが同時に発生するスタグフレーションなのか、それとも、財政のコントロールが効かなくなるハイパーインフレなのか?」などである。
そのために、今回は、これらの点を簡単に説明しながら、今後、どのような展開が予想されるのかを考えてみたいと思うが、この時に重要なポイントは、「実体経済とマネーとの区別」を明確にしながら、「金融システムのどこに不良債権が発生しているのか?」を理解することだと考えている。つまり、「フローである実体経済」と「ストックであるマネー」との関係性を理解しながら、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)以降、どのような展開が繰り広げられたのか?」を、正確に認識することである。
より詳しく申し上げると、実体経済の約10倍の規模となった「金融の逆ピラミッド」において、頂点に位置する「デリバティブ」がピークを付けたのが「2010年前後」であり、その後は、「量的緩和(QE)がもたらした金融のメルトダウン」、すなわち、「デリバティブの崩壊を防ぐために実施された中央銀行のリフレーション政策」により、「国債や株式、あるいは、不動産などのバブルが発生し、崩壊した状況」だったのである。
そして、現在では、「民間企業と個人」、「民間の金融機関」、そして、「中央銀行」のすべてにおいて、「バブルの崩壊がもたらす不良債権」が発生している状況ともいえるのである。別の言葉では、「バランスシートの膨張時に発生した資産と負債の増加」が、その後、「バブルの崩壊により資産価格だけが急減し、その結果として、大量の不良債権を発生させた状況」のことである。
より具体的には、現在、世界全体が、「債務の貨幣化」を意味する「財政ファイナンス」、すなわち、「紙幣の増刷か、あるいは、CBDCの大量発行」を迫られている状況ともいえるのである。別の言葉では、「国債の買い手」が見つからなくなったために、「中央銀行が、直接、国債を買い付ける方法」が検討され始めたものと思われるが、このことは、「1991年のソ連」や「過去100年間に30か国以上で発生したハイパーインフレ」などと、全く同じ状況のために、現在では、「世界的なハイパーインフレの発生」に、大きな懸念が持たれ始めた状況とも考えられるのである。(2023.10.16)
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金融メルトダウンと何でもバブル
「2008年のリーマンショック」から「2023年の中国版リーマンショック」までの展開については、基本的に、「金融メルトダウンによる何でもバブルの発生と崩壊」という状況だったものと考えている。つまり、「2009年から始まったQE(量的緩和)」が意味することは、「デリバティブの崩壊を防ぐための世界的な超低金利状態」であり、この結果として発生したのが、「世界的な何でもバブル」だったものと思われるのである。
より詳しく申し上げると、ピーク時に「約800兆ドル」にまで達した「デリバティブの残高」に関しては、実際のところ、「資産項目の金融商品」と「負債項目のデジタル通貨」というように、「商品と通貨の両立てで残高が増えた状況」ともいえるのである。そして、その後の展開としては、最初に、「世界的な債券価格の上昇(金利は低下)」が発生したものの、結果としては、「米国の30年国債」からも明らかなように、「2020年3月に大天井を付け、値下がりを始めた状況」だったことも理解できるのである。
また、「米国株」についても、「2021年11月」に大天井を付け、現在は、「2023年7月」に、典型的な「毛抜き天井」を形成し終えた段階とも想定されるために、現時点で必要なことは、「金融の逆ピラミッドにおいて、デジタル通貨が、今後、どのような影響を及ぼすのか?」を理解することともいえるのである。つまり、「金融の大地震」である「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が、その後、「仮想現実の世界で、さまざまなバブルを引き起こしてきた状況」だったが、現在では、「デジタル通貨そのものが、仮想現実から現実世界へ流れ始めた段階」とも考えられるのである。
別の言葉では、「バブル崩壊で行き場を失った資金が、新たな投資先を求め始めている状況」でもあるが、実際には、「世界の債券市場、不動産市場、そして、株式市場のすべてから、大量のデジタル通貨が、小さなコモディティー(商品)市場へ流れ始めた状況」ともいえるのである。つまり、「お金(マネー)」には「ストックの性質」、すなわち、「残高が増え続け、最後の段階で、ハイパーインフレが発生する事実」が存在するが、現在の状況は、まさに、「ハイパーインフレ発生の初期段階」とも想定されるのである。
そのために、現時点で必要なことは、すでに始まったものと思われる「人類史上、最大規模の世界的なハイパーインフレ」を生き延びることに力を注ぐことであり、実際には、「実物資産の保有」、すなわち、「貴金属」や「資源株」、あるいは、割安に放置されている「バリュー株」や「6ヶ月分の食料」などを保有することだと考えている。(2023.10.17)
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40年にも及んだ先進各国の金利低下
現在の「海外の金融専門家の意見」については、大きく二分される状況とも思われるが、具体的には、「60歳以上の人々は、多くが、金融システムの崩壊とハイパーインフレの発生を危惧している状況」でありながら、「60歳以下の人々は、景気の悪化がもたらす将来的な金利低下とハイテク株の復活を期待している状況」のことである。そして、この理由としては、「40年にも及んだ先進各国の金利低下」が指摘できるものと考えているが、実際には、「金利上昇時に、どれほどの反動が発生するのか?」に関する「意見の相違」とも言えるようである。
より詳しく申し上げると、「1971年のニクソンショックと、その後のスタグフレーションと呼ばれた状況」を理解するかどうかで、今後の相場展望に、大きな違いが発生している状況のようにも感じられるのである。別の言葉では、「実体経済」だけを見るのか、それとも、「実体経済とマネーとの関係性」を見るのかで、「天と地との開き」が発生している状況のようにも思われるが、この点については、間もなく、答えが出るものと感じている。
つまり、「1971年のニクソンショック」から26年を経過した「1997年8月」以降の状況を振り返りながら、「今後、どのような展開が予想されるのか?」を考えることである。実際には、「8月13日に発生した世界的な信用収縮が、その後、世界全体を襲い始めた状況」、すなわち、「11月に発生した北拓銀行や山一証券の破綻」であり、また、「翌年のLTCM の破綻」などの原因を再考することであり、また、「今回のバブルの規模が約30倍だったために、同様の反動が世界を襲う可能性」などを再認識することである。
より具体的には、「目に見えない金融ツインタワー」である「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」のことでもあるが、現在の状況としては、「世界的な国債価格の下落(金利は上昇)により、世界債務残高の金融タワーが、音を立てて崩れ始めた段階」とも考えられるのである。そして、今後は、もう一つの金融タワーである「OTCデリバティブ」が、同様に崩壊するものと思われるが、この点に関して、気になるのが、「26年前と同様に、11月に大事件が発生する可能性」である。
つまり、「G-SIBs(グローバルな金融システム上重要な銀行)が破綻する可能性」のことでもあるが、この理由として考えられる点は、やはり、今回の「世界的な金融混乱」の根本原因ともいえる「大量に創造されたデジタル通貨の存在」が、結局は、「世界的なハイパーインフレ」でしか解消できない状況が指摘できるようである。(2023.10.18)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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