本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(441)
- 2023年 12月 22日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
米国政府の危機的な財政状態
現在の「米国政府の財政状態」については、「1991年のソ連崩壊」の時と似たような状況とも思われるが、実際には、「長期国債に続き、短期国債の販売が難しくなった結果として、インクがなくなるまで紙幣の大増刷を実施した状況」のことである。つまり、現在の米国では、「FRBが保有する国債などを担保にして、民間金融機関から短期資金を借り入れる方法」である「FRBにおけるリバースレポ」に関して、「2021年の初頭に、ほぼゼロだった残高が、その後、2022年5月に約2.55兆ドルにまで急増した」という展開だったことも見て取れるのである。
そして、この理由としては、「FRBの資金的なひっ迫」に対応するための手法であるとともに、このような、「金利を上げながら、金融市場から短期資金を吸い上げる方法」については、典型的な「クラウディングアウト」、すなわち、「国家の資金需要を賄うための金利上昇」であり、また、その結果としての「民間金融機関からの大量の資金吸い上げが実施された状況」とも想定されるのである。つまり、前述の「ソ連崩壊」の真因としては、「国家的な資金ひっ迫がもたらしたハイパーインフレ」が挙げられるものと考えているが、現在の米国に関しても、ほとんど同じような状況とも思われるのである。
具体的には、「2023年5月から始まったリバースレポの残高急減」に関する理由として、「5.05%のリバースレポレート」よりも「5.4%の米国短期国債金利」が選考された点が指摘されているのである。つまり、米国政府が、「利上げで集まったFRBのリバースレポ残高」を、より高い金利で、「TGA(FRBにある米国財務省の口座)」へ移行させ始めているものと思われるのである。
別の言葉では、「33.7兆ドルにまで大膨張した米国の債務残高」に関して、「急増する財政赤字」のみならず、「5%以上の金利を支払い続けることの実現可能性」が憂慮され始めているのである。そして、結果としては、「リバースレポの残高が、5月の約2.3兆ドルから、11月の約0.9兆ドルにまで急減している状況」となっており、現在では、「今後の数か月間で、リバースレポ残高が枯渇する可能性」までもが危惧されているのである。
つまり、現在は、「米国政府が民間から資金を吸い上げ切った状況」、そして、これから予想される展開が、「最後の手段である紙幣の増刷が実施されない限り、1929年の大恐慌が再来する可能性」でもあるために、現在は、多くの人々が、「1923年のドイツのハイパーインフレ再来」を懸念して、実物資産への投資を始めた状況とも思われるのである。(2023.11.22)
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「神のお金」と「人のお金」
最近、海外で指摘され始めたことの一つに、「神のお金」と「人のお金」の区別が存在するが、実際には、「GOLD(金)」と「GOOD(善)」と「GOD(神)」が同義語であるとともに、「金(ゴールド)の残高」が限られているために、「神のお金を意味している」という理解のことである。また、「人のお金」については、「紙幣」や「預金」、あるいは、「債券」や「デリバティブ」などのように、「金(ゴールド)」の信用から派生した金融商品を意味しており、この時の注意点は、「預金」を例にとると、「民間企業や個人にとっては資産でありながらも、一方で、民間銀行にとっては負債である状況」が挙げられるのである。
つまり、「カウンターパーティーリスク」という言葉のとおりに、「負債側の取引相手が破産すると、資産価値そのものが失われてしまう性質」を持っており、この点については、すべての「人のお金」に共通する点とも理解できるのである。別の言葉では、「お金は金(ゴールド)であり、その他はすべて信用である」という言葉のとおりに、「相手を信用してお金を貸したのが、預金や紙幣、あるいは、国債などの金融商品」ともいえるのである。
より詳しく申し上げると、100年ほど前の「通貨制度」においては、「金貨本位制」が採用され、「純金に近い貨幣が使われていた」という状況だったが、その後は、「不換紙幣」や「預金」、あるいは、「債券や国債」、そして、「デリバティブ」などの金融商品が大膨張した状況だったことも見て取れるのである。つまり、「人のお金」が、大量に作られたわけだが、この時の問題点は、「数量に限りのある商品に資金が流れた時に、価格が暴騰する可能性」とも考えられるのである。
具体的には、「単なる数字であるデジタル通貨」が、コンピュータネットワークの中で、「デリバティブなどの金融商品」に向かっている間は、「人のお金」が「人の作った商品」に向かっているために問題が発生しなかったが、現在は、「貴金属」や「非鉄金属」、あるいは、「原油」や「農産物」など、数量に限りのある「実物資産」、すなわち、「神の造った商品」に、大量の「人のお金」が流れ始めた状況とも考えられるのである。
そして、結果としては、「商品の需給関係」において、「硬直した供給曲線を、無限大の需要曲線が昇り上がる構図」、すなわち、「大量の資金が流入するものの、供給に限りがあるために、価格が暴騰する展開」が想定されるが、この点については、以前から申し上げてきた通りに、「劇場の火事」のような状態、すなわち、「通貨価値の下落におびえた人々が、慌てて、実物資産を購入し始める状況」も想定されるようである。(2023.11.27)
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世界的な流動性危機
現在、世界的な問題として認識され始めたことは、「世界第一位の経済大国であるアメリカ」のみならず、「世界第二位の経済大国である中国」においても、「中央銀行のリバースレポ」が実施されるとともに、「その資金が国債に流れ始めている状況」である。つまり、米中のみならず、その他の先進各国においても、「国家の債務問題」が表面化し始めるとともに、「流動性の枯渇」が問題視され始めている状況のことである。
より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」の時にピークを付けた「世界のデリバティブ残高」を処理するために、その後、「先進各国のリフレーション政策」、すなわち、「中央銀行のバランスシートを大膨張させながら、デリバティブの処理を図る政策」が実施されてきたことも見て取れるのである。しかし、実際には、巨額なデリバティブの残高処理が遅々として進まず、結果としては、中央銀行のバランスシート残高においても、いろいろな問題が出現し始めたのである。
具体的には、「クラウディングアウト」と呼ばれる「国家の資金需要増加に伴う金利上昇」のことであり、実際には、「中央銀行が集めた民間資金のほとんどすべてが、国家債務の埋め合わせに流れた状況」ともいえるのである。別の言葉では、「金利を上昇させながらリバースレポにより集められた民間資金が、その後、より高金利の短期国債へと流れ始めている状況」のことだが、現在では、「リバースレポの残高そのものが枯渇を始めている状態」となっているのである。
つまり、現在では、「民間の余裕資金が、ほぼ完全に、国家に吸い上げられた状態」となっており、そのために、「中央銀行」のみならず、「民間の金融機関」や「民間企業」、そして、「個人」においても、「流動性の枯渇」が発生し始めているものと考えられるのである。別の言葉では、「バランスシートの非対称性」がもたらした「不良債権」、すなわち、「負債の価格は一定でありながら、資産の価格が変動する状況」により、世界全体で「バランスシート不況」が発生している可能性のことである。
そのために、これから危惧される展開としては、「いつまでもあると思うな親と金」という諺のとおりに、「大量に存在したデジタル通貨が、いつの間にか、完全に枯渇する可能性」であり、その結果として予想される「世界的な紙幣の大増刷」に関しても、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない」という理由により、「金融界の白血病」とでも呼ぶべき大混乱を引き起こす可能性である。(2023.11.28)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13450:231222〕
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