台湾総統選、民進党・頼氏が当選 ―政治のありかたで大陸へ積極的な働きかけを
- 2024年 1月 15日
- 時代をみる
- 台湾田畑光永総統選頼清徳
注目された台湾の総統選挙は民進党の頼清徳氏(現副総統)が当選した。1996年に総統が直接選挙で選ばれるようになって以来、同一政党が3期連続で政権を担うのは初めてである。今回の選挙は大陸の習近平政権が「両岸の統一は歴史の必然である」と唱え、民進党を「独立勢力」ときめつけると同時に、「統一のためには武力行使もありうる」と公言している中での台湾島民の選択の結果であったところに大きな意味がある。
と言っても、民進党とて「独立」を選挙公約に掲げたわけではないし、敗れた国民党、台湾民衆党とて、逆に統一を受け入れると公言したわけではもとよりない。にもかかわらず、習政権がことあるごとに「独立勢力」とか「武力行使」とかの脅し文句を使い、一方では時に台湾からの輸入に制限をくわえたりするのは、とにかく民進党を選挙で敗北させ、大陸の民衆に自らの威信を印象づけ、異例の長期政権を心理的に納得させるという政治的効果をねらったものと私は見る。
しかし、政治は魔物である。とくに現今のように武力がちょっときつい薬を飲むくらいの感覚で、野心をうずかせている政治家によって弄ばれる時代には、国民が政治家の野心にタガを嵌め、プーチンやネタニヤフの真似をさせてはならない。
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そこで、外国の一老爺から民進党に提案がある。われわれ日本人のみならず、多くの国、人々が台湾の将来を心配するのは、時代離れした一党独裁、権威主義の中国が、いかに大国とはいえ、民主的で個人が尊重される政治のもとにある二千数百万の台湾の人々を強権をもって支配し、服従させるという歴史の逆行を許してはならないと信ずるからである。
いつ、だれが、どういう方法で選んだのか不明の人物が突如、壇上に立って国民を支配し、それがいつまで続くのかも分からないという中で日を過ごすのは、民主政治のもとで暮らしたものにとっては想像するだけで、空の見えない密閉空間に閉じ込められたような閉塞感にいてもたってもいられない焦燥を感じる。
国境がどうとか、内政がどうとか、ではなく、人道の問題である。台湾の人々がその危険から遠ざかるためには、危険の根源を絶たなければならない。大陸の民主化、これ以外にない。
あくまで一私見に過ぎないが、大陸の民衆とて、現在の習近平体制にたまらない閉塞感を感じている人たちは多いはずなのだ。そこで台湾に住む人間のほうから、統一の条件を提示して、それを両岸の民衆がともに討議する議題とするのだ。
台湾側から提案するその条件とは言うまでもない。海峡両岸において民主政治の実現、これ以外にない。現在の大陸の人民代表大会制度を抜本的に改善して、普通の国が実施している議会制度とする。共産党も普通の一政党として参加する。いかなる特権もみとめない。なにしろ共産党が金科玉条とする「内戦勝利」はすでに4分3世紀も昔のこと、それを振りかざすのはやめてもらう。
それには完全な政治運動の自由、その基盤として言論・表現の自由が保証されなければばらないが、それは中國の現行憲法の35条にある。「中華人民共和国の公民は言論、出版、集会、結社、行進、デモの自由を有する」という素晴らしい条文を天井の額縁から外して、文字通りに実施すればいいだけだ。
この提案を大陸側で実行すれば、台湾民衆は喜んで「大陸との統一に賛成する」と提案するのだ。勿論、大陸の政府がそれに応ずることはないだろう。しかし、台湾の執政党が統一を避けるのでなく、建設的、具体的な提案をしたことは、直ちに世界中に知れる。大陸のメディアは無視するかもしれないが、これだけ世界中に中國人がいるのだから、その人たちを通じて「台湾の心」はすぐに大陸に伝わる。
それを見た大陸の民衆はかならず喜んで賛成する。反対する理由はない。そこから先は今、想像する必要はない。成り行きにまかせればいい。頼清徳総統、ご一考を!
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