本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(444)
- 2024年 1月 19日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
枯渇し始めた世界のマネー
現在、「マネーの枯渇懸念」が、米国を中心にして世界的な広がりを見せ始めているが、このことは、「リフレーション政策の終焉」と「ハイパーインフレの始まり」を表しているものと考えている。つまり、今までは、「目に見えないインフレ税が、国民の気付かない方法で課されていた状況」だったものが、現在では、「最後の段階」である「誰もが認識するハイパーインフレ発生」への移行期に差し掛かったものと思われるからである。
別の言葉では、現在、「所得税」などの「現在の税金」に加えて、「国債」などの「将来の税金」、そして、「中央銀行のバランスシート膨張による目に見えないインフレ税」が、人々の気付かない状態で、国民に課されている状況ともいえるのである。そして、今後は、「マネーの枯渇」、すなわち、「民間の資金が完全に政府に吸い上げられる状況」となり、その結果として、「国民の気付く形でインフレ税が課される状況」、すなわち、「紙幣やCBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」という展開も想定されるのである。
より詳しく申し上げると、現在は、「米国政府の資金繰り」に関して、「最後の砦」ともいえる「FRBのリバースレポ残高」が、「約2.5兆ドルにまで急増した後に、約0.8兆ドルにまで減少した状況」となっており、このことは、米国における「クラウディングアウトの発生」を表しているものと思われるのである。つまり、「間もなく、民間部門の余裕資金が、すべて国家に吸い上げられた状況」となり、その時には、「中央銀行が、大量の紙幣、あるいは、CBDCの発行に迫られる展開」も想定されるのである。
そして、このことは、「1991年のソ連」と同様の状況ともいえるが、今回の注目点は、やはり、「一国のみではなく、世界全体の通貨制度が崩壊する可能性」とも考えられるのである。別の言葉では、「1971年から始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度の崩壊」のことでもあるが、今後の注目点としては、「神のお金」と「人のお金」の区別を理解することが挙げられるものと感じている。
具体的には、「過去100年間に、どのような変化が世界の通貨に発生したのか?」、あるいは、「どのような商品が産み出され、そして、どのような通貨が創り出されたのか?」を正確に理解することである。つまり、「三種類の金本位制」と「その後の信用本位制と呼ぶべき通貨制度」の理解でもあるが、同時に必要なことは、「西ローマ帝国の崩壊時」、すなわち、「1600年前の西暦423年に、どのようなことが起こったのか?」を考えることであり、このことが、未来予測に関して、最も近道のようにも感じている。(2023.12.14)
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1980年代と90年代の米国
「米国の金融情勢」については、「西暦2000年を境にして、大きく様変わりした状況」だったが、実際には、「1980年から2000年前後までが、米国が自信を喪失した時代」だったものの、一方で、「その後の約20年間は、基軸通貨国としての自信を回復した時代」だったことも見て取れるのである。つまり、「1980年代の米国」では、「製造業の空洞化」や「日本に対する巨額の貿易赤字」などにより、1985年に「プラザ合意」、すなわち、「基軸通貨であるドルに対して、先進五か国の通貨を一律10~12%幅で切り上げる合意」が形成された状況だったのである。
しかも、その後の「1990年代」においては、「貿易赤字や経常赤字」のみならず、「財政赤字」にまで悩まされた結果として、「米国の財政破綻」や「米国主要銀行の破産」までもが危惧されるような状況だったのである。つまり、「基軸通貨国としての地位が、完全に失われようとしていた状況」だったものの、この時に、大きな役割を果たしたのが、「民間主要銀行による、デリバティブの大膨張」だったことも見て取れるのである。
具体的には、「JPモルガンやGSなどの金融機関が、デリバティブのバブルを形成した状況」のことであり、この結果として発生した事態が、「デジタル通貨の大膨張」であり、また、その後の「デジタル革命」と呼ばれる状況だったのである。つまり、「世界的なコンピューターネットワークにおいて、さまざまな金融商品が形成されるとともに、GAFAMなどの巨大企業が発展した状況」のことである。
そして、現在では、「世界の株式市場において、米国株式の時価総額が約6割を占めるとともに、MAG7と呼ばれる7銘柄が、米国株式市場の3割を占める状態」とも報道されているのである。つまり、これほどまでの銘柄集中については、かつての「ニフティ・フィフティー相場」や「西暦2000年前後のITバブル相場」を、はるかに上回る状況であることも理解できるのである。
そのために、今後の展開としては、「デリバティブのバブル崩壊」とともに「米国の株式バブル」も崩壊する状況が想定されるが、「マネーの歴史」を辿ると、これほどまでの「マネーの大膨張」に関しては、実際のところ、「1600年ほど前の西ローマ帝国」にまでさかのぼらざるを得ない状況ともいえるのである。別の言葉では、「西暦423年以降の世界的な状況」を調べると、「これから、どのような世界が展開するのか?」が、ある程度、理解できる可能性のことである。(2023.12.18)
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世界的な利下げの実現可能性
驚いたことに、現在の金融市場では、「欧米諸国を中心にした利下げの可能性」が議論されているが、この点については、単なる「口先介入による時間稼ぎ」にすぎず、実現の可能性は極めて低いものと考えている。つまり、多くの人々が想定していることは、過去の経験則のとおりに、「景気の悪化が利下げにつながる可能性」とも思われるが、今回は、「誰が、大量発行される国債を、実際に買えるのか?」という問題点が指摘できるのである。
別の言葉では、過去15年ほどの「リフレーション政策」、すなわち、「民間からの資金借り入れにより、中央銀行が国債を買い付ける政策」などは、すでに資金繰りの限界点に達しているために、これから想定される展開は、「国債価格の暴落が引き起こす金利上昇」とも想定されるのである。つまり、「2022年からの米国の急激な利上げ」については、「インフレを抑えることよりも、米国債投資の魅力を高めながら、資金を集めること」が、主な目的だった可能性も指摘できるのである。
より詳しく申し上げると、「米国FRBの資金繰り」に関しては、「リバースレポ」という「保有する国債などを担保にしてオーバーナイトの資金を高利で借り入れる手法」による資金調達が行われていた状況だったことも見て取れるのである。つまり、「民間部門からの急激な資金吸い上げ」が行われていたものの、その後の展開としては、「リバースレポからより高利な短期国債への資金移動」が発生したことも理解できるのである。
別の言葉では、現在、未曽有の規模での「クラウディングアウト」、すなわち、「行政府の資金需要をまかなうために大量の国債が発行されるとともに、市中金利の上昇により、民間の資金需要が抑制される現象」が発生している状況ともいえるのである。しかも、現在では、ほとんどすべての民間資金が吸い上げられた状況となっているために、これから実施可能な手法としては、古典的な「紙幣の増刷」か、あるいは、「中央銀行デジタル通貨の発行」であることも見て取れるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「時間稼ぎや問題先送りの議論」には、決して、耳を貸さず、過去の歴史を学ぶことにより、「これから、どのようなことが起こるのか?」を理解することとも言えるのである。つまり、「国家の財政」についても、「個人」や「企業」などと同様に、「お金が無くなれば破綻の憂き目にあう」という厳然たる事実を認識することであり、また、「政府には最後の手段であるハイパーインフレで借金を防備金する方法が残されている事実」を再認識することである。(2023.12.27)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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