本郷のご近所の皆様、ご通行中の皆様。ご存じのとおり、裏ガネ問題で自民党が大きく揺れています。ずるい、汚い、ウソつき自民党の正体が、誰の目にも露わになっています。皆様も、さぞお腹立ちのことでしょう。
- 2024年 2月 14日
- 評論・紹介・意見
- 澤藤統一郎
(2024年2月13日)
長いあいだ、ずるい、汚い、ウソつきは、総理であり総裁でもあった安倍晋三の専売特許でした。モリ・カケ・サクラ、クロ・カワイ。つまり、森友学園事件・加計学園問題・桜を見る会事件、黒川検事長問題・河井夫婦の事件。どれもこれも、ずるい、汚い、ウソつきの手口。ウソつきはアベの始まり、とまで言われました。
しかし、この度の政治資金パーティー裏ガネ問題で、ウソつきが明らかになったのは、ひとり安倍晋三だけではありません。100人に及ぶ自民党の最大派閥・安倍派の議員全体が、ずるい、汚い、ウソつきだということが分かってきたではありませんか。いや、安倍派ばかりではなく、さらに多くの自民党議員が、ずるい、汚い、ウソつきだったことが明らかになりつつあります。
今世論は、厳しく自民党政治を批判しています。2月4日の前橋市長選挙では、自民公明推薦の現職が、立憲・共産・国民・社民の支援を受けた新人に敗れました。票差は6万対4万。保守の地盤で、自民党は惨敗と言ってよい。
今月に入ってからの最新のJNN(TBS系)世論調査では、岸田内閣の支持率は、23.7%。11月に過去最低となった内閣支持率は4か月連続で最低を更新し続けています。驚くべきは、内閣不支持率74.2%という数字。2か月連続で過去最高を更新だそうです。
JNN世論調査では、自民党の支持率が24.4%。2012年末に自民党が民主党から政権を奪取して以来、過去最低とのこと。麻生政権末期の2009年の5月(22.5%)以来の低支持率だとのこと。民主党に政権を譲り渡した当時の自民の支持率なのです。
国民世論は、今のところ自民党政治の狡さ、汚さに怒っていますが、この怒りは政治改革に向けられなければなりません。そのためには、自民党政治の根本を掘り下げ、本来あるべき民主主義の政治制度を考えてみる必要があります。
国民世論は、政治資金パーティーのキックバック・裏ガネ問題をきっかけに、カネにまみれ、カネに汚い自民党政治に怒りを向けています。国民から五公五民と言われる高額な税金を取りあげ、零細事業者にもインボイスを押し付けておきながら、自分たちはチャッカリと税金のかからない裏ガネを懐にしている。しかも、至れり尽くせりの歳費や活動費を保障されていながらのこと。怒りたくもなるのは当たり前。
この国民の怒りの正当性は、自民党政治の本質が金権体質にあることを見抜いているところにあります。アベ政治には、タカリの企業が付きものでした。東京五輪、アベノマスク、大阪万博、規制緩和…。政治がカネを動課すところに利権がうごめき、政治家に近い立場にある業者、典型的には電通やパソナなど。濡れ手で粟の中抜きが行われる。ここに国民の怒りが集中してきました。
が、実は、自民党の金権体質はもっと根深いものと言わねばなりません。自民党とは、財界・大企業・大金持ちのための政党なのです。彼らの武器がカネです。財界・大企業・大金持ちが要求するものは、カネによる、カネのための政治。そのためになら、金を注ぎ込んで惜しくない。惜しくないどころか、尻尾を振ってくれる政治家に、餌になるカネをばらまきたいのです。
しかし、民主主義は人間の幸福を最大限に実現するための制度です。これに対して、企業が投じるカネは、利潤を生むための手段に過ぎません。民主主義の制度に参加する権利と責務とを有するのは主権者国民であり、有権者です。企業は参加の資格はありません。企業がばらまくカネで、民主主義をゆがめてはならない。ここがポイントです。
政治にしても選挙にしても、その主体は主権者である国民であり有権者です。決して、政治家や政党だけのものではありません。
カネがものを言うこの世ですが、民主主義をカネで動かしてはなりません。分かり易いのは、カネで一票を買ってはならない。それを票の買収という。カネで選挙運動員を傭ってはならない。これを運動員買収という。選挙も政治活動も、無償が大原則です。金持ち有利にしてはならない。カネで民主主義をゆがめてはならない。
現実には、カネにまみれた自民党。金権体質の金のある方に擦り寄って、カネを目当ての、カネのための政治が行われています。
自民党には、金持ちと大企業からのカネが集まってくるのです。だから、金持ちと大企業本位の政治になる。分かりやすい話です。物価は上がり庶民の生活は苦しくなるばかり。貧困も格差も広がっています。にもかかわらず、株価だけは上昇し、企業の大儲けは膨らむばかり。政権与党が企業献金で政治を行っている結果ではありませんか。
民主主義とは、人間の政治です。人間の幸福を実現するためのもの。本来、民主主義にカネを介在させてはならない。カネは、人の幸福ではなく、カネが生む利潤を最大限とする政治を求めます。企業は民主主義の邪魔にならなすように存在しなければならず、企業には政治主体となる資格がありません。
自民党政治は、庶民に消費税の増税を押し付け、その分そっくりを大企業・大金持ちの利益のために、法人税を減税して来ました。庶民に冷たく、財界・大企業にこの上なく暖かい政治。これが、財界の武器である自民党への企業献金投入の大成果です。
いま、抜本的にカネによる汚い政治を、庶民の福祉を目指す政治へ転換する絶好のチャンスではありませんか。軍拡増税の岸田政治、九条改憲を党是とする自民党政治を転換するチャンスでもあります。
政治改革の方向として、大事なことを確認しておきたいと思います。
何よりも、企業・団体による政治献金・選挙資金献金の禁止です。政治資金も選挙資金も個人献金だけにしなければなりません。企業献金は、金額の多寡にかかわらず、その実質において買収であることを肝に銘じるべきでしょう。
民主主義社会では、政治活動も選挙運動も、その主体は主権者国民であり、具体的には有権者なのです。企業は便宜的に法人格を付与された存在ですが、主権者の一人でも、有権者でもない。もちろん、投票権も持たない。その企業がカネを政治に注ぎ込むのは、民主主義に対する介入であり、民主主義政治過程の撹乱でしかない。この原則をしっかり確認しなければなりません。
なお、安倍一強政治のおぞましさを招いたのは、政党本位の選挙の実現を唱った小選挙区制です。結局、選挙制度改革の失敗は明らかなのですから、小選挙区制を廃止して、比例代表制の選挙制度を目指すべきです。早急には意見がまとまらなければ、当面、中選挙区制の復活でもやむを得ないと思います。
最低限の改革として、政治資金の透明性確保の徹底と罰則強化、とりわけ連座制の創設は避けて通れません。
この問題が、今国会の最大テーマになります。今のこの怒りを忘れず、民主主義のアクターは、私たち自身であることを意識しつつ、国会の論戦を見守りたいと思います。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記 改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。」2024.2.13より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?m=201803
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion13555:240214〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。