歌壇におけるパワハラ、セクハラの行方
- 2024年 2月 16日
- 評論・紹介・意見
- ポトナム内野光子歌壇におけるパワハラ、セクハラ
2019年、23年に、どこかはっきりしないままではあったが、活字になった資料や信頼のおけるネット情報などから、一結社の一選者によるパワハラ、セクハラについて、つぎの二つの記事を書いた。
・歌壇、この一年を振り返る季節(2)歌人によるパワハラ?セクハラ?見え隠れする性差(2019年12月22日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2019/12/post-b5862e.html
・歌壇におけるパワハラ、セクハラ問題について、いま一度(2023年9月21日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/09/post-8dcfc0.html
昨年になって、結社内の動きや中島裕介さんからの話などを踏まえて、以下のような一文を『ポトナム』2月号の時評として発表した。
なお、この件について、なかにしりょうたさんが以下のブログで、詳細な事実経過と分析をされているので、併せてご覧下さい。
・短歌結社は #Me Tooの告発にどう対処したか(1)(2)(3)(2024年1月15・16・17日)http://crocodilecatuta.blog.fc2.com/(和爾、ネコ・ウタ)
また、中島裕介さんの以下のブログは、ハラスメント被害者から受けていた当事者として経過が述べられている。
・【ひとつの決着】加藤治郎さん、あなたは文章が読めない(19)Aさんのこと(2023年10月20日)https://yukashima.hatenablog.com/entry/kato_literacy19<&
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歌壇におけるハラスメントについて、私は、本歌壇時評や自身のブログ記事でも取り上げたことがある。そんなことが伝わったためか、昨年の九月、「未来短歌会」の選者の一人、加藤治郎氏のセクハラを受けた被害者の会員A氏から相談を受けている同じ「未来」の中島裕介氏から、他の歌友と話を伺う機会があった。ネット上では、経緯も明らかになっているので、実名で通したい。話を聞く中で、こんな事実がうやむやになっていいものかと怒りを覚えた(以下何れも敬称略)。
被害者Aから、加藤・Aとの間で交わされたメールや証拠などを託された中島の話からは、まぎれもなく選者の威を借りたパワハラ、セクハラを伺い知ることができた。
中島のブログと加藤のnoteにおいて、二〇一九年一一月、Aの#MeTooの告発を受けて以来、今年に至るまでの二十回近いやりとりを読み返してもいたので、加藤は、自らの行為を認め、被害者に謝罪すべき事案であると思われた。
この間、未来短歌会は、HPによれば、一九年一一月末日以来、ハラスメントの事実確認と併せて、ハラスメントに関する委員会と相談窓口の立ち上げを表明、翌年三月には窓口の設置、二二年七月には「ハラスメント防止ガイドライン」などを公表している。しかし、Aの健康問題などからヒヤリングができないという理由で問題解決への動向が見られなかった。
なお、『短歌研究』二〇二三年四月号は<短歌の場でのハラスメントを考える>の特集を組んだ。しかし、これは、二二年「短歌研究新人賞」の選考座談会における斉藤斎藤選考委員による、応募作にみられる「女の生きづらさ」は、「短歌の世界では追い風が吹いていて、むしろ安牌なわけです」とも読める問題発言をスルーした編集部による「反省」のパフォーマンスであったかもしれない。
そんな中、先の中島のブログによれば、未来短歌会からAに対して、理事会の席上、加藤治郎に対して、厳重注意と可能ならば被害者への謝罪を勧告したという報告が届いた(二〇二三年一〇月二〇日)。ただし、未来短歌会としては「厳重注意を行ったことを公表する予定はない」とのことであった。Aは複雑な思いは残るもののこれをもって終結とし、支援してきた中島も「ひとつの決着」として評価した。私も、Aと中島の勇気とその持続力に敬意を表したい。しかし、なぜこれだけの時間を要したのだろう。結社や選者たちの保身や短歌メディアの見て見ぬふりの構図も見えてくる。
加藤によるAや中島に対する、noteやXでの謝罪はまだなく、中島への脅しのような名誉棄損による損害賠償請求も取り下げられないままと聞く。加藤の結社内での選者や新聞歌壇選者など公の場での活動は続いている。歌壇には、伊藤詩織氏や五ノ井里奈氏は現れないだろう。
弱者へのハラスメントは公になりにくいだけに、注視していかねばならない。
(『ポトナム』2024年2月号所収)
初出:「内野光子のブログ」2024.2.15より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2024/02/post-c7cc8c.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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