青山森人の東チモールだより…非正規教師を正規にして、教育に投資せよ
- 2024年 2月 16日
- 評論・紹介・意見
- 青山森人
都市部、再び水浸し
今月2月の7日に、都市部は再び局所的な大雨にみまわれました。1月9日に首都の町を襲った大雨(東チモールだより第509号)のちょっとした再現でした。強い雨が1時間ばかり降ったと思ったら、行き場のない雨水が首都部の幹線道路をあっという間に水浸しにし、交通障害を発生させ、歩行者は帰宅困難者になってしまいました。雨が止むと一斉に車両とバイクの大群が道路に現れ長い交通渋滞が発生し、首都機能は深刻な障害をうけました。
とくに公共放送RTTL(東チモールラジオTV局)や裁判所そして各省庁の建物が集中しているカイコリ地区は全体が大きな水たまりとなってしまいました。1月9日の教訓が何も活かされていませんでした。
この雨で、1月9日の雨の時と同様に、一部地域に限られたことですが住民を市民擁護局が避難させるという事態になりました。
カイコリ地区の冠水の様子をわたしは目撃しましたが、雨水がまったく流れようとしていませんでした。地形が大きな原因でしょうが、排水溝あるいはどぶ川は、1月9日の雨の時もいわれたことですが、ゴミが詰まってしまい水を流す機能がまったく作用していませんでした。
首都のゴミ問題は、大雨による災害と蚊を媒介とする病気の原因に直結するので、都市部による適切なゴミ行政を一刻も早く実現させほしいものです。
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カイコリの官庁地区にて、
2024年2月7日、午後6時50分ごろ。
雨が止んだので外に出て見ると、どぶ川もそれに架かる橋も一緒くたに雨水に埋まっていた。
ⒸAoyama Morito.
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貴重な人材をいじめるな
去年の6月に権力の座に就いたシャナナ=グズマン首相率いる第九次立憲政府は、2023年末で契約の切れる教師たちについて契約を更新しない方針を打ち出しました。馘首された教師たちは怒り心頭に発し、教育省とくに教育大臣にたいして頻繫に抗議活動を現在行っています。
教師が余っているので教師を解雇するというのならまだ理解の範疇に入りますが、教師不足に悩まされている東チモールの教育事情のなかで長年にわたり公立学校で教鞭を執ってきた非常勤・不正規の教師たち(約4000人か?)を一方的に解雇するという措置には理解に苦しみます。
一月に新年度の新学期が始まったのですが、どこどこの学校では大勢の生徒に対して教師はほんのわずか、どこどこの学校では生徒が学校に来ても教える先生がいないので生徒たちは教室で時間を潰すだけ、化学の先生がいないので生徒たちは化学を勉強できない……このような報道がしょっちゅうです。そして政府は各学校が独自に臨時の教師を雇ってはいけないというお布令を出しつつ、新しい教師の募集をしたところ8601人の応募があったと教育省が発表しましたが(『タトリ』、2024年2月12日)、のんきなものです。新しい人員を補給したうえで人員の円滑な交替を行おうとするのならまだ理解できますが、後先のことを考えずにまず人員整理ありき、その結果、公立学校の生徒たちは教師不在の教室で空白時間をすごすことになるのですから、東チモール子どもたちが気の毒です。
2月12日、教育省建物前で平和的な抗議活動をしていた契約教師団体の約500名が、無届けのデモ活動は犯罪であるとして警察に弾圧されました。9名の教師が警察に逮捕されましたが、それでも教師団体はめげずに抗議活動を続け、さらに1名が逮捕され、合計10名(女・4名、男・6名)の教師が逮捕されたという事態が発生しました(『インデペンデンテ』、2024年2月13日より)。
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『インデペンデンテ』(2024年2月13日)より。
警察が男性教師を押し倒して上にからのしかかっている写真が載っている。
「ビラベルデ区にある教育省の前で平和的なデモをおこなっていた契約教師を警官が取り押さえる」(写真の説明文)。
「教師の血、教育省の門で」(見出し)。
「教育省に再考を求める契約教師たちの闘いは物理的な攻撃となって返ってきて、何人かが当局に捕まってしまった。2月12日の午前、契約教師たちの団体はタシトゥルで平和的な活動をし、自分たちの要求を聴かないデュルス=デ=ジェスス=ソアレスを大臣とするは教育省建物に場所を移すことにした。500名以上の教師の活動家たちは教育省の前で声をあげた。教育省の門が閉じられると熱がこもってきた。門が閉じられると契約教師たちの忍耐の緒が切れた。かれらは門を開けようとした。この行動を見て、警察が介入してきたのである。契約教師の一人・イジリド=アルベス=ティルマンは警察による物理的な攻撃を受けてしまった」(以上、1~5段落目までの粗訳)。
なお、「見出し」に「血」とあるが、実際に流血の事態になったかどうかは定かではない。
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上記の記事にかんして、その後、野党フレテリンと市民団体「女性ネットワーク」が警察署に赴き、拘束された教師と面会したあと、市民の安全を守るのが警察の仕事なのに抗議活動する教師に暴行を加えるのは間違いだ、教育大臣は契約教師たちの前に現れて対話をするべきだと、記者らに訴えました。またRTTL局のニュースによると拘束された教師の人数は14人で、全員が2月14日に釈放されたとのことです。
国家予算から教育に配分される比率はそれでなくても僅かなうえに、少しの給料でも非正規教師として教育に身を捧げてきた先生たちをこのような暴挙にさらして、百年の計である教育を東チモールの現政府はいったいどう考えているでしょうか。悲しくなります。東チモール政府は教育に大々的に投資すべきです。
青山森人の東チモールだより 第511号(2024年2月15日)より
e-mail: aoyamamorito@yahoo.com
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion13561:240216〕
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