本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(459)
- 2024年 5月 3日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
流動性と支払い能力
現在、世界的に「流動性の枯渇問題」が発生している状況とも思われるが、この原因としては、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産価格には価格上下の変動が存在するものの、負債残高には不変の状態が継続する事実」が指摘できるものと考えている。つまり、「マネーの大膨張」が意味する「資産と負債の残高急増期」においては、「流動性(リクイディティー)」と「支払い能力(ソルベンシー)」が同時に増加するものの、2008年前後から始まった「金融のメルトダウン」以降は、「資産価格の下落」が、大量の「不良債権」を産み出し、「支払い能力」に問題が発生したものと思われるのである。
具体的には、「何でもバブル」により、最初に、「債券価格の急騰と急落」が発生し、その結果として、「債券価格の急落」が、巨額の「不良債権」を発生させたことも理解できるのである。そして、その次には、「世界的な不動産バブルの発生と崩壊」が、同様のメカニズムで、大量の不良債権を発生させたことにより、現在では、「世界の各国で、流動性の枯渇のみならず、支払い能力の問題が発生している状況」とも考えられるのである。
より詳しく申し上げると、「個人や民間企業」、そして、「民間金融機関」と「中央銀行」の全てにおいて、「バランスシート残高の急膨張後に、資産残高の急減が発生している状況」とも想定されるのである。別の言葉では、「国家の資金需要」を意味する「国債発行残高」の急激な膨張の結果として、「民間資金が、国家に吸い上げられている状況」であり、この時に、特に問題視されるのが、いまだに表面化していない「約600兆ドルのOTCデリバティブのバブル崩壊」とも考えられるのである。
つまり、多くの人々は、現在、「株式市場の生成AIバブル」などに目を奪われて、「金利の上昇が、世界の金融市場に、どのような悪影響を与えているのか?」については、ほとんど考えようともしない状況とも言えるのである。具体的には、「何でもバブルの最終章」が、すでに始まった状況でありながら、いまだに、「デフレやインフレの不毛な議論」に終始している状況のことである。
そして、この点については、「1923年のドイツで、多くの人々が、最終段階においても、ハイパーインフレの発生に気付かなかった事実」と同様の状況とも思われるが、今後の注目点は、やはり、すでに日銀から始まったものと思われる「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」に関して、「世界中の人々が、いつ、この事実に気付くのか?」ということだと考えている。(2024.3.26)
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1600年前のグラディエーター
大谷選手の元通訳が犯した「スポーツ賭博事件」については、多くの人々が、大きな衝撃を受けたものと思われるが、同時に感じることは、「この事件に、どのような意味が隠されているのか?」を理解する必要性でもあった。つまり、「実際に発生した事件」、すなわち、「成ったこと」には、必ず、「天からのメッセージ」が含まれているものと思われるために、その時々で、「事件の意味」を考える必要性があるようにも感じられるからである。
より具体的には、「歴史の全体像」を考える上で、あるいは、「未来予測」において、「これから発生する事件は、すべて、時空のジグソーパズルを形成する一コマではないか?」とも思われるために、「それぞれの事件に隠されている歴史的な背景」を、詳しく分析する必要性があるものと思われるのである。そして、今回は、この事件をきっかけにして、「1600年前のグラディエーター」が、私の脳裏に浮かんできたが、この理由としては、「パンとサーカスの生活を享受してきたローマ人が、当時、どのような価値観を持ち、また、どのような意識と行動で生活してきたのか?」が気にかかるからである。
つまり、「文明法則史学」が教える「800年ごとの東西文明の交代」が、今回の「スポーツ賭博事件」の背景に存在する可能性が思い浮かぶとともに、以前から疑問に思っていた「当時のグラディエーター(剣闘士)」と「現代のスポーツ選手」との類似性が、再び、気になったのである。別の言葉では、「グラディエーターという職業が、その後、いつまで継続したのか?」という疑問であり、この点については、ウィキペディアで、「618年に正式に禁止され消滅した」とも説明されているのである。
このように、「現時点で当たり前と思われている職業」についても、歴史を尋ねると、「まったく違った姿」が見えてくるわけであり、また、「社会情勢」については、より大きな変化が発生することも見て取れるのである。そして、この点を、私自身が作成した「心の座標軸」で考えると、現在と同様に、「目に見えるもの」を追い求め、かつ、「自分」のために行動した結果として、「世界的な大都市群」が誕生し、それに伴い、「大量のマネー」が創られた状況が、今回の事件の根本的な原因だったようにも思われるのである。
そのために、これから必要なことは、現在の「世界的な大都市群」を形成する要因の一つとなった「デジタル通貨」が、「今後、どのような変化を見せるのか?」を観察しながら、同時に、「人々の意識と行動が、その変化に対して、どのように対応するのか?」についても、注意深く見守ることだと考えている。(2024.3.27)
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600兆円の逸失金利収入
植田日銀総裁は、3月21日の参院財政金融委員会で、「1993年から2022年までの間に低金利のために家計や企業が手にできなかった『逸失金利収入』は総額600兆円に上る」と述べたが、私自身としては、このことが、「失われた30年の原因」であり、また、「今後の日本に、大きな影響を与えるのではないか?」とも感じている。つまり、「600兆円の金利」を国民が受け取っていたら、日本経済は、はるかに大きな規模の高成長を遂げていた可能性も考えられるのである。
しかし、一方で、「600兆円の金利」を払っていたら、「民間金融機関」のみならず、「日銀」や「日本政府」そのものが、「1991年のソ連」などと同様に、財政破綻に追い込まれていた可能性も想定されるのである。つまり、過去30年余りの日本は、巧妙な金融政策により、「金融面での破綻」を免れてきた状況とも思われるが、現在では、「日銀のバランスシート大膨張」、すなわち、「究極のインフレ政策」ともいえる「財政ファイナンス」が実施され始めた状況とも考えられるのである。
より詳しく申し上げると、今まで隠蔽され続けてきた「約600兆ドルのOTCデリバティブ問題」が隠し切れなくなった結果として、先進各国の中央銀行が、一斉に、「大量のCBDCの発行により、国家債務問題を解決する方法」を取り始めた可能性である。つまり、「すべての不良債権を、一斉に、政府や中央銀行が買い取ってしまう可能性」であり、このことは、「究極の徳政令」のようにも感じられるのである。
しかし、実際に想定される展開は、「この事実に気づいた国民が、一斉に、換物運動に走る可能性」であり、この時には、「CBDCが急速に紙幣に交換される状況」も考えられるのである。つまり、国民が望むのは、「CBDC」ではなく「紙幣」であり、しかも、最終段階では、「受け取った紙幣を、すぐに、市場で実物資産へ交換しようとする動き」までもが発生する可能性も予想されるのである。
そして、このような状況下で、大きな意味を持ってくるのが、「日本人の我慢強さ」とも思われるが、実際には、「失われた30年間」を耐え抜いたことにより、知らないうちに、「将来の生活に対する備え」ができていた可能性である。つまり、「西洋の物質文明」から「東洋の精神文明」への移行に関して、多くの日本人が、「精神的な準備」をしていた可能性のことでもあるが、実際には、「自分に与えられた境遇を、日々の努力により、徐々に向上させる方法」のことである。(2024.3.30)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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