韓国通信NO746 抑止と戦争-金正恩と習近平は自民党の「救世主」なのか
- 2024年 6月 4日
- 評論・紹介・意見
- 小原 紘抑止と戦争韓国通信
<安保法制の成立を助けた台風>
2015年9月、安保法制に反対する学生と市民で連日国会周辺は埋め尽くされた。
集団的自衛権を認め政策の大転換をはかろうとする安倍政権は市民たちによって窮地に追い込まれていた。だが折しも関東地区を襲った台風が政府に味方した。
国会審議が山場を迎えたさなか鬼怒川が決壊して大騒ぎになった。茨城県常総市のスーパーマーケットの屋上で救出を待つ人々をNHKは三日間にわたって延々と中継し続けた。命にかかわる事件と言われれば返す言葉はないが、台風とNHK報道に支えられて安保法制は強行採決された。忘れ難いいまわしい記憶だ。<国会前抗議集会2015/8/30 筆者撮影>
北朝鮮の核実験、ミサイル発射で内閣の支持率が回復したことが何回かある。金正恩は安倍の「救いの神」と皮肉った(『韓国通信』NO535)。台風と金正恩が自民党政権を応援するはずはないが、こんなカタチの政府への忖度もあるのか。大きな影響力を持つテレビ報道の在り方に疑問と不信感を持ち続けている。
低支持率にあえぐ岸田政権は、台湾を威嚇する中国と北朝鮮のミサイル発射で支持率挽回、息を吹き返すことができるだろうか。
バイデン米大統領とは一体となって戦う約束をした首相。沖縄の先島諸島では「台湾有事」に備えてシェルターの建設、避難計画が進められている。憲法違反は何のその、岸田首相のドヤ顔が浮かぶ。就任以来迷走を続け、民意を聞く耳を持たない首相に国の安全保障を任せるわけにはいかない。国民の不安に乗じて戦争準備に邁進する政府とその追随者たちに不安を感じる毎日だ。
<戦争の歴史に背を向ける人たち>
最近、抑止力と戦争についての議論が絶えない。平和のために軍備を増強するのか、逆に軍備増強が緊張を高めるのかという議論である。日本政府は、敵基地攻撃も可とする立場だが、その前に「敵」の主張に冷静に耳を傾けたらどうだ。
日清戦争から始まるわが国の戦争の実態はどうだったのか。国権の最高指導者天皇が憂えるほど、正義の戦争と無縁で残虐な侵略戦争だった。歴史修正主義者を除いて誰もが認める歴史の真実である。戦後80年近くたって、またしても正義の戦争をしようとしている。戦争に正義も不正義もないのは、進行中のウクライナ、パレスチナの戦争を見ても明らかだ。
中国と北朝鮮に肩入れするつもりはないが、平和のために言えるのは中国と覇権を争うアメリカに煽られないこと、尹大統領がもたらした朝鮮半島の南北対立に惑わされないことだ。
政府が警戒の対象とする中国と北朝鮮は、かつて日本によって国土が蹂躙され、言い尽くせない損害を被った国々だったことも忘れてはならない。中国と朝鮮が復讐のために攻めて来ると考える人もいる。言い得て妙だが、かつて植民地支配への反省と補償が行われていないことを白状しているようなものである。
1978年に締結された「日中平和友好条約」、北朝鮮とは現在も有効な「平壌宣言」によって国交正常化を約束した隣国という現実も無視してはいけない。
その中国と北朝鮮を当然のように敵基地攻撃の対象に考えるのはおかしい。双方の「挑発」が生みだした危機的な状況に私たちは直面している。
一旦戦火を交えれば国そのものが消滅しかねない現実の中で戦争を軽々しく口に出す政治家たち。岸田政権の軍備費倍増は国民生活を切り捨て、アメリカと日本の軍需産業を喜ばせるだけだ。敗戦後平和国家として出発した原点に戻ること。姑息な抑止論に振り回されないことだ。
<破綻か再生か>
国民に一人当たり250円を負担させる政党交付金に加えて政治資金バーティで集めた企業献金で、やりたい放題の政治家には退場してもらう他ない。日本を破綻から救う道はこれしかない。
核兵器禁止条約を認めず核と平和の共存を謳う核抑止論ほどばかばかしい理屈もない。原爆を投下したアメリカからの独立をそろそろ真剣に考えたらどうだろう。武器で平和を維持するという知能水準には付き合っていられない。原発という核による繁栄幻想ともおさらばしたい。
広島出身を看板とする岸田首相が次回の選挙で落選するという観測が飛び交っている。現役の首相の落選が楽しみになった。
<身辺雑記>
わが住む町の手賀沼に白鳥の子どもが六羽生まれた。掃き溜めに鶴ならぬ放射能に汚染された湖の白鳥だ。
汚れた自然の中で健気に生きる白鳥には複雑な思いがあるが、元気をもらった。オスの親白鳥はどこにいるのかあててください。①遠くに出かけていない②近くでエサを探している③岸にあがって家族を見守っている 正解は③ <2024/06/01撮影>
初出:「リベラル21」2924.6.4より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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