経産省前脱原発テント座り込み日誌6月6日版
- 2024年 6月 9日
- 時代をみる
- 木村 雅英
◎脱原発、お湯を沸かす為に核分裂を起こすな! 5月31日(金)
暖かい日差しを浴び経産省本館を出入りする背広たちを眺めてゆったりと座り込んだあと、脱原発を訴えるコールで経産省抗議を開始。私からこの一週間を振返り、25日のイスラエル・アメリカ大使館抗議、27日テントひろばから経産省への申入書受取確認、28日エネルギー基本計画議論、29日高浜3・4号運転期間延長、30日汚染土中間貯蔵の列島ばら撒き問題と使用済核燃料検討会などの報告。
大賀さんが「被災者発の復興論」の著者横山智樹さんの6月29日のオンライン研究会を紹介。久しぶりの横浜の倉田さんが、政治資金規正法批判、国と地方が対等、アベノマスク糾弾、死の灰を造る原発稼働、亡国の省・経産省、海はゴミ捨て場では無い。三上さんが、裏金問題の問題ははっきりしている、選挙にまつわる買収を断ち切ろう、政権交代しろの声を大きくしよう、6月に都知事選で神宮の再開発問題が焦点。私が、蓮舫さんが立候補した中で、小池を推薦する50余りの首長を糾弾。
守屋さんが、真面目に自分の身になって原発を考えてと訴え「座込め、ここへ」と「水に流すな」を歌う。続いて「汚染水を海に流すな」、「これ以上、海を汚すな」コール。白倉さんが、東海第二を止める為の6月9日の手賀沼集会と6月29日の亀有地区センターの集会の案内と、パレスチナへの思いを込めたスイカとサイードのオリエンタリズム。坂東さんがタンポポ舎の関東大震災の講演会の案内と東海第二を止める為のお茶の水駅頭行動案内。
堀江さんが、都知事選挙に触れて原発推進の小池百合子批判。
私から、火力発電はボイラーでお湯を沸かしているが、原発はお湯を沸かす為に核分裂を起こす愚かな装置であることを確認、原発の問題点を多くの人に広めよう。お湯を沸かす為に核分裂を起こすな、脱原発、再稼働反対、運転延長反対、命を守れ、地球を守れ、未来を守れ、武器を輸出するな、憲法九条を実現せよ、NONUKES、NOWAR、…のコールで抗議行動を終了。 (K.M)
◎民族浄化に未来はない 6月1日(土)
◯民族浄化
イスラエルのガザ侵攻は2008年に2回、2012年、2014年はパレスチナ人の死者2200以上、現在は3万6千人を越えている。イスラエルはガザ侵攻を「芝刈り」と呼んだそうだ。 それはイスラエルによるジェノサイド、追放(避難の強制)と家屋の破壊という民族浄化だ。
恒久的な停戦と経済封鎖や民族浄化を一切に止めることが必要だ。平和を望むなら決断するのはイスラエルと米国。
だが、イスラエル強行派にとっては「平和を口にすれば弱点になる」、「停戦は敗北」、そして民族浄化の挫折。 (O・O)
◎能登半島地震にびっくりした 6月3日(月)
朝テレビを付けたら、また、能登半島で震度5強、マグニチュード5.9の地震が発生したと伝えていたのでビックリした。中心は輪島市・珠洲市。柏崎苅羽も震度4とのことで原発がどうなっているか心配。東電、北陸電力は大丈夫と言うだろうが信用できない。気象庁も一週間位は気を付けるように、というだけで心許ない。原発を一刻も早く廃炉にする事が唯一の安全・安心策だ。
朝のうちは薄曇りで過ごし易かったが、1時過ぎから晴れてきて途端に暑くなってきたので慌ててパラソルの陰に隠れた。1時半頃、㈭担当のⅠさんが来られた。朝の能登半島地震騒ぎできょう3日は沢地さんが呼び掛けた「安倍政治を許さない」日だったことをすっかり忘れていた。「後から幾人か来ると思う」の言葉通り他に4名の人が寄ってくれました。最近にない大勢さんでした。有り難う御座いました。
3時過ぎにⅠ元教授が久し振りに来られました。「この間、来たけれど誰も居なかった」との事。おかしいと思って聞いてみると5/6(月)子供の日の代休で休日に来られたことが分かった。近々、また東欧に行くとの事。健康には心配なさそうだ。今週も英語講師のAさんがお友達を誘って来て下さった。初めて来られた方なので直ぐにテントニュースをお渡しした。きょうは休日ということで来て下さったとの事。カンパを頂く。多摩川辺りにお住まいとのこと。次回からお一人で来られるかも。
4時まで天気が持ってくれました。事務所に帰って一休みしていたら雨が降って来ました。5時半まで事務所で休んで6時半からの「辺野古新基地建設反対!」の防衛省抗議行動に出かけました。 (保)
◎3・11から4500日もなるか 6月4日(火)
6月4日(火)は曇、暑くも寒くもなく、座り込みは気分悪くなかった。座り込みは6~7人、一人になることもなく、比較的にぎやかだった。福島原発事故東京訴訟の関係者と自称する人が来て、チラシを見せながら話かけてきたが、途中から喧嘩ごしになって、怒鳴られたりした。テントにはいろいろな人が立ち寄り、関係してゆくので、運動も深く広く進めてゆかないと、なかなか対応できないわけである。
3・11福島原発事故から4500日を越え、座り込み・テント設営からも4500日越え、という展開になったのは、原発事故という事態の重大さ、これへの人々の危機意識、これらを反映してテント設営に進んだ私達の腹構えだった。
当初は九条改憲阻止のメンバーが、福島原発事故の衝撃と、原発廃止への強い指向のもとテントを設営し、福島の女たちの参加・経産省前デモ・テント設営とも重なって、全国の「経産省前テント広場」となったのだった。テント泊まり込みも盛況となり、経産省前の狭い広場にテントは三つも設営された。もちろん、今は亡き渕上氏、正清氏がその先頭にたち、テントの材料も道具も準備してくれた。
たしか2016年9月、テントは警察権力によって強制撤去されたが、メンバーはそれにもめげず経産省前に毎日椅子、旗を持ち込み、座り込みを続けている。
なにしろ、福島原発事故の被害は巨大で、事故経費だけでも20兆円超、小児甲状腺ガン患者も数百人…で他県を凌駕している。しかも今年始めの能登半島地震では、志賀原発は停止していて事故とはならなかったが事故となれば大量の地盤崩壊、犠牲者続出、という事態だったということがいうことが明らかになった。日本中いたるところでこういう危険状態に直面していることがあからさまになっている。
脱原発経産省前座り込みは、一日も欠かさず続けられ、隣の環境省工事の巨大な騒音にもめげず頑張っている。環境省工事の現場は、以前郵政省郵便局で広く、喫茶店もあって、テント設営前はそこをたまり場にしていた。我々は随分長い間この霞が関経産省前を闘いの場としていたことになる。その間多くの同志たちも亡くなっていった。我々は彼らの遺志をも引き継ぎ、座り込みを維持拡大し、日本の全原発廃炉まで頑張ろう。もうすぐテント設営から5000日、気も遠くなるが頑張ろう。(旭凡太郎)
◎井戸川裁判傍聴記を読みたい 6月5日(水)
さわやかな陽気だった。太陽はぎんぎんに照りつけていたけれど、パラソルの中にはいるとしのぎやすかった。湿度が低いからだろう。今日は福島自主避難者追いだし訴訟で、裁判をやっている鴨下さんが寄られるかもしれないということで保っちゃんは早くからセッティングに入った。それでTは少し遅れた。
いつも傍聴をしている自転車おじさんが、裁判後に寄られて、ニュースなどを持って帰られた。Iさんもその裁判を傍聴し、その後の報告会にも参加されて、テントにきてしばらく座り込みに参加。裁判は、裁判官と弁護士の進行協議ですぐ終わり、報告会もすぐ終ったという。S、Hさんが来る。
『テントニュース」が出る。井戸川裁判傍聴報告が載っているが読み応えがある。みなさんがんばっておられる。今日は月初めの水曜日なので、日本原電と東電前抗議行動がある。保っちゃんは参加するといっていた。大島さんが来られる。「『琉球弧を戦場にするな』(森の映画社作製)を観た。南西諸島の自衛隊ミサイル基地がつくられて行く過程を軍事的に追っているので良かった。練馬の「古藤」で6/23にやる」と言っていた。
◎「FREE GAZA]の落書きまだ残っている 6月6日(木)
Inさん、Yoさんと3人で設営。やがて3人組のテレビクルーが現れた。聞くと、中国国営TV(CCTV)の取材だという。インタビューしたいというので、3人が順番にカメラの前に立って質問に答えた。この活動に参加した経緯は?汚染水放出と日本の原子力政策についてどう思う?トヨタの不祥事発覚についてどう思う?など。
私からは「13年前の事故で福島の多くの住民が大変な被害を被り、その際に東京で何万もの市民が脱原発を求めて街頭に繰り出した。私はその時から行動に参加し、昨年からこの場所で抗議を続けている。汚染水放出はもちろん許されるべきではないし、地震頻発地日本で54基もの原発を建ててきたこと自体が根本的に誤っている。トヨタ不祥事の詳細は知らないが、電力会社でも同種の不正・隠蔽が頻発しているので、そのことをとことん追求したい。」と答えた。
13:00 Okさん参加。午前中『死刑台のメロディ』を観て、秘密保護法反対集会に参加して来たという。続いてKuさん参加。Inさんが経産省の門の前で写真を撮っていたら通りかかった女性が「何をしているんですか?」と話しかけてきた。Inさんが主旨を話すと、「応援します」と言って大枚をカンパしてくださった。その後話したOkさんによると、彼女は日本人と結婚しているシンガポール出身の方で、スタートアップ企業を運営されているという。ひとしきりOkさんと話した後、経産省に入って行かれた。その後Kuさんが小型スピーカーを使って一人街宣を始め、地方自治法の改正案の問題点、汚染水放出の不当性を訴えた。
14:35 Suさん参加。経産省の周りを1周すると、「FREE GAZA」の落書きはまだ消しきれずに残っていた。時間になり、Su さんと2人で撤収し4653日目の抗議行動を終えた。 (M.U)
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◆6月12日(水) 12時~13時 原子力規制委員会毎水曜昼休み抗議行動
◆6月14日(金) 17時~18時 経産省前抗議集会(毎週)経産省前テントひろば経産省正門 ◎経産省前の座り込み行動は、平日:12~16 時(月 ~木)、13~17時(金) 土・日・休日:12~15時
◆6月13日(木) 月例祈祷会)午後2時30分
会場:経産省前テントひろば
予定:14:30~ 芸能の時間 14:50~ 「月例祈祷会」 厳修 15:45 終 JKS47事務局
◆6月15日(土) 樺美智子さん追悼の会
国会南門前にて 13時~ 9条改憲阻止の会
◆6月17日(月) 司法の劣化を許さない 6・17最高裁 共同行動 10時30分~ 最高裁要請行動 12時~13時 ヒューマンチエン 14時30分 報告集会・シンポジウム(衆院第一会館講堂)
◆6月21日(金)原発いらない金曜行動
首相官邸前 18時30分~
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汚染水放出反対行動の日程から(6月13日~6月16日)
〇6月13日(木) ALPS処理汚染水海洋放出差止訴訟 第2回口頭弁論
ALPS処理汚染水差止訴訟の第2回口頭弁論期日は、福島地裁6月13日14:30開廷です。
13:00 より福島地裁前集会を行います。
13:30頃 から傍聴整理券の配布が行われる見通しです。傍聴券確保にぜひご協力ください。
14:30の開廷と同じ時刻から、とうほう・みんなの文化センター(福島県文化センター)小ホールで裁判並行集会を開催します。
裁判閉廷後には同じ会場で報告会を行います。
〇6月15日(土)~ 6月16日(日) 請戸河口テントひろばの行動
▽検体(魚)をみんなで集めよう!
大津漁協不当解雇事件勝訴を広げよう
〇第2回「請戸川河口テントひろば」学ぶ会
・日 時 6月15日(土)~ 16日(日)
内 容 ①大津漁協不当解雇事件勝訴から学ぼう
6月15日(土)午後1時30分開会 2時開始
判決の解説:弁護団
永山 孝生さん、鈴木 基永さんからのお話し
会場からの発言 支える会から、今後の闘いについて説明
※現在、緊急で少し規模の大きい会場を物色中です
②検体(魚)をみんなで集めよう!
6月16(日)午前中
請戸川河口で魚釣り
※魚釣りが出来るのは、福島県の方針で6,7,8の三ケ月。
午前8時ころに朝食。その後は三々五々に行動
正午に簡単な昼食交流会。“汁物”を用意する(大鍋一つ程度にして負担の無い範囲で準備) ※解散は、午後2時ころ
請戸川河口テントひろば“本部棟”屋根(タープ)製作費
〈協力の願い〉
前略、「学び、遊び、つながる 請戸川河口テントひろば」お披露目会の後、季節が冬に近づくに従って河口の風は強くなってきました。
第1回の学ぶ会(2月)の後で、河口を訪れると張られていたテント群が無残な姿を晒していました。その後に、江田さんと現地で壊れたテント群を片付けました。たった一つ残された江田さんのテントの前に、江田さんは、ご自身で防風除けを張りました。
私は、ワンタッチテントの骨組みを木材で繋ぎ、その上に屋根(タープ)が張れるようにアーチ型の骨組みを作りました。これまでの短い経験から風が物凄く強いので、常時、屋根を張ることは断念して、イベントなどで多くの人が集まる時には張って置く所存です。
屋根を張り、柱をしっかり建てれば、「請戸川河口テントひろば」本部棟として象徴的な建造物となります。「緊急用トイレ」は周りをシートで被わないので骨組みは健在です。こちらも、多くの人が集まる時には、目隠しノシートを張ります。
そこで、お願いですが、屋根(タープ)を制作する費用協力をお願い致します。
▽製作費用協力金の振込先
一口、1000円でお願いします。
★会計担当は 佐藤茂伸 | |||||
★会の口座は | 10930-1923861 | 横浜講演実行委員会 | 佐藤茂伸が管理しています。 | ||
カンパの受付もこの口座です。 カンパ歓迎です! | |||||
★ボーン請戸川 | 979-1521 | 浪江町権現堂順礼川原53-3 門馬洋宅気付 | |||
◇ ALPS処理汚染水の海洋放出を差し止めるクラウドファンディング
ALPS処理汚染水放出差止訴訟の支援のために、クラウドファンディング(資金調達)に挑戦します!
核物質の専門家や水棲生物の専門家への調査や意見書作成の費用、海洋投棄を止めさせるための様々な行動のために、広くご支援を求めます。
「READYFOR」サイトにて、最終目標額1000万円をめざし、5月20日から2ヶ月間行います。
https://readyfor.jp/projects/139320
インターネットを使わない方法もあります。チラシの「申込書を利用してのご支援の方」をご覧ください。
(チラシ) https://drive.google.com/file/d/1vHLPceeUfv871ippxuvJ5IKdkQ7kPH3n/view?usp=sharing
ALPS処理汚染水差止訴訟原告団・支援する会
メール sashitome.shien@anppa.org
ホームページ https://alps-sashitome.blogspot.com/
原告団・支援する会事務局住所
〒970-8045 福島県いわき市郷ケ丘4丁目13-5 丹治方
電話番号 090-7797-4673(丹治)
みずほ銀行いわき支店 普通預金 3045465
口座名:原発汚染水の海洋放出差止めの裁判を支援する会 会計 吉田力
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〈投稿1〉 原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう! その40
福島県で9年連続多発が確認された「胃がん」と「胆のう・胆管がん」
~全国がん登録データを読み解く(明石昇二郎、週刊金曜日24年5月27日号から)~
2024年6月6日 木村雅英
その18、その39で週刊金曜日に掲載された明石昇二郎さんの渾身のレポートから福島の厳しい事実をお知らせした。2024年5月27日号にその続編
<福島県で9年連続多発が確認された「胃がん」を黙殺する環境省の「調査研究」>が発表されたので紹介する。残念ながら今も福島県のがんが増えてきている。
「全国がん登録」(全国がん罹患モニタリング集計)から、全国と同じ割合で福島県でもがんが発生していると仮定して実際の罹患数を比較する検証を行った。疫学の手法で「標準化罹患率比」(SIR、standarized incidence ratio)を計算する方法である。全国平均を100として、それより高ければ全国平均以上、低ければ全国平均以下を意味する。福島県の胃がんについてSIRを比較した結果、次の表が得られた。
表 福島のSIR(2008年~2019年、全国を100として小数点以下四捨五入)
-2008年,09年,10年,11年,12年,13年,14年,15年,
16年,17年,18年,19年, 20年
(胃がん)
男性: 88,94,101,92,111,111,119,117,
116,120,120,127,132
女性: 87,94,101,101,109,110,109,120,
139,120,118,132,138
(胆のう・胆管がん)
男性: 79,93,116,114,111,126,131,113,
126,115,126,116,131
女性: 97,117,103,112,113,113,122,122,
134,115,124,131,133
胃がんと胆のう・胆管がんで2011年から数値が急増しかつ3桁になって全国平均より多くなってきている。
<国立がん研究センターでは、SIRが110を超えると「がん発症率が高い県」と捉えている。福島県における胃がんのSIRは2012年以降、男女とも全国平均を上回る高い値で推移しており、最新の2019年と2020年のデータでは、男性で126.9、131.8、女性では131.8、138.3と、異常に高い値が記録されている>
すなわち、<福島県では12年以降、9年連続で胃がんが「有意な多発」状態にあることが判明した>。また、甲状腺がんについても20年男性は「有意な多発」状態だ。
さらに、胆のう・胆管がんも最短潜伏期間の「4年」を経過した2016年以降では、男女ともに福島県で「有意な多発」が確認された。
他のがんなど詳しくは週刊金曜日を参照願いたい。
なお、その39では2021年3月に国連科学委員会(UNSCEAR)が「福島の住民の放射線被ばくの健康影響は今後も考えられない」との奇異な報告書と結果に抗議の声と伝えた。今レポートでは、この“健康影響解析”をなぜか「環境省」の研究調査事業「福島県内外での疾病動向の把握に関する調査研究」として、国立がん研究センター祖父江友孝「がん対策研究所」副所長が主導しているらしい(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/reports/hkR3_2.html)。眉に唾をつけて騙されない様にしないといけない。
以上
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〈投稿2〉
改憲派のみで改正原案作成、この動きに注視を
(1)
6月4日付の朝日新聞は「憲法改正条文案を改憲会派のみで今国会に提出する動きがある」と報じていた。この記事によれば、改正案の提出方法は、①各党合意の上で、憲法審査委会会長が行う。➁衆院100人以上、参院50人以上の賛成議員で行うが考えられる、とある。現在の憲法審査会では立憲民主党や共産党の意向(反対)もあり、憲法改正原案作りが進んでいない状況とあるが、それなら改憲賛成派のみで改正条文案をつくり、国会に提出しようという動きがあるらしい。自民党内にはこの声があり、改憲賛成派として、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党、衆院無所属会派「有志の会」の五会派を想定している、とある。
要するに賛成会派だけで改正条文案をつくり、国会に提唱しようというのだ。なお、6月6日の朝日新聞では自民党の憲法改正本部では改憲賛成派だけの強行突破(条文作り)に慎重論が相次いだという記事があった。今後の方向には結論は出なかった、と報じられていた。さらに自民党では全会派での合意を目指すことにしたとあるが、いずれにせよ憲法審査会の動きは注視しておくべきだ。
憲法審査委会では各会派の合意を重んじてきたが、この慣習を破り会派の一部の合意でことを進めるということで従来の憲法改正の方法(手続き)を変えようということが動きとしてある。憲法の制定は民主主義の実現であり、そのことは改正手続きに反映しているといわれてきた。
民主主義とは手続きであるということが最も象徴されることとされてきた。憲法の改正が他の法律の改正と違って衆参の議員の三分の二以上の賛成を得なければ発議されないとか、国民投票を必要とすることもその一つだった。その意味では憲法改正の条文作成が各会派の合意を得ることを前提にして進められてきたことは当然のことであったが、これが変えられよういう動きがでてきていることだが、その背景も含めてみておかなければならない。
(2)
憲法改正をめぐる動きの変化にはいくつかのことが考えられる。そして、ここには大きく言って二つのことが指摘できると思う。一つは、現在の自民党の政治的危機ということがある。具体的にいえば自民党政治が裏金問題に端を発した危機に直面していることがある。裏金問題とは自民党(伝統的な保守政党)が裏政治で政治的地位(政権)を確保してきたことが露呈したことであり、その批判が選挙での連敗としてあらわれ、自民党の総裁(首相)の進退の問題にもなっている。政権交代の始まりの動きとして現象してきているのだ。もう一つはこれによって明瞭になってきていることだが、自民党にこれといった政策というか、
政治的構想がないのだ。裏金問題に対する、つけ刃的な資金規制法案の提起と成立のための政治的動きは自民党の政治方針(政治的構想)のなさを浮かびあがられた。「抜け道」法案と揶揄されても致し方がない、とりあえず法案だけは成立させようというドタバタ劇は、彼らに方向を示す政治的な構想のないことを露呈させた。このことは逆に野党にもいえる。最低限のこととして、企業と団体の献金禁止と、支出での連座制をはっきりさせればよかったのだ。裏金問題の本質は選挙を金で支配することだから、選挙で自民党に厳罰をくわえればいい。こうした保守政治の批判は選挙で示せばいい。自民党への批判の風を政権交代に至るまで続ければいい。
(3)
現在の岸田政権は裏金問題に対する批判に苦慮し、なんとか、政治資金改正法案で対応し乗り切ろうとしている。そのために公明党や維新の案を取り入れてもこの法案を成立させ、批判の声を抑え込もうとしている。しかし、最近の選挙の動向を見ていれば裏金問題による自民党批判はそんなことで収拾されるものではないことを示している。
予想もしなかった政権交代の声となってきている。もう少し、進めばこの政権交代の声は加速すると思える。自民党の面々は政治資金法の改正でことが収まることがないことは承知の事と思う。9月には自民党総裁選挙があるのだが、それを含めて裏金問題を相対化するためにどうしたらいいのか、彼らはいろいろと戦略を練っているのだと思う。岸田が政権担当者に留まるのかどうかはこの戦略と関連するのだろうと思う。公明党や維新の政治資金規正法での自民党へのすり寄りには、政権への参加の思惑がある。選挙になれば自民党が大敗することは明瞭である。それは議席数を激減することとして現象するはずだ。その場合に下野するほかないところまで激減するのか、連立政権で維持できるかの二つがあると思う。
自民党の幹部連中は単独で政権維持ができることは不可能とみており、従来の公明党に維新や国民民主を加えての連立を構想しているのではないかと思う。こういう動きに対して、維新は立憲民主党を中心とする政権交代よりは自民党政権への参加を望んでいると思う。国民民主は微妙なところである。これは政権を軸にした政治党派のうごきであるが、自民党には各党派を統合する政治政策がない。現在の国会は6月に終るわけだが、この国会では政治資金規正法の改正案を成立させ、とりあえず裏金問題への対処を行って、裏金問題の鎮静化を待ちつつ、自民党の総裁選も含めた政治戦略を考えているのだろうが、それにふさわしい戦略案は出てこないだろうとみている。
選挙と政権維持のことが中心課題になるが、その場合にそれに必要な政治戦略(政策と構想)はで出てこないだろうが、憲法改正、この場合は「緊急事態条項」創設が中心だが打ち出される可能性がある。今回の動きはその前兆と見ておかなければいけないのである。
(4)
裏金問題は安倍政治の遺産のような形で露呈したのだが、これは金の力により選挙の支配に自民党の本質があることの露呈である。裏金問題だけでなく統一教会問題に示されるような問題、あるいは利益誘導などの、裏政治が自民党という保守政党の本質であり、それが伝統でもあった。政党は立法府での議論と立法が本来の役割であるのだが、政党員は立法府の議員になるだけが精いっぱいで、そこでの役割(立法担当)は行政担当の役割であるはずの官僚が担ってきた。国会で質疑や政府の答弁での官僚の役割や動きをみればことは明瞭である。
日本の政党の立法担当能力は最低であり、その矛盾を官僚との関係で補足している。官僚独裁という言葉があるくらいだ。議会・政府と官僚機構と選挙をめぐる裏政治の構造を変えることが日本の政治をかえることであるが、かつて政権交代した民主党は官僚機構との闘いで敗北し、裏政治の安倍政権の存続を許した。裏政治に依存しつつ安倍政治が試みた戦後政治の改変とはなんであったか。それは戦後政治を規定した天皇制的な権威政治から憲法政治に転換した憲法政治の改変であった。
戦後体制の転換という安倍の言葉は大きくいえば、戦後政治の転換であり、戦後憲法の改正であった。安倍が祖父の岸信介の政治意思を受け継ごうとしたのもそれだった。この憲法改正は憲法9条(戦争放棄)と憲法政治(討議のよる統治)の改変だった。憲法精神が示した憲法政治(立憲政治)の改変だったのである
裏では裏政治を踏襲しながら、憲法改正をめざしたのである。憲法改正という時はその条文の改正や条文の創設が考えられるが、同時にそれは憲法が意味する政治構造や政治空間の改変(政治様式の改変)でもある。条文の改正や創設をしなくても憲法を変える解釈改憲ということがあるが、それとも違って憲法の精神そのものを変えるということがある。
例えば、集団自衛権の解釈変更がある一方で、討議による統治を権威による統治に変更するなどである。安倍政権が行った「討議による統治」の軽視、形骸化はその具体的なものといえようか。立法府(議会)が政治の中心とされ、近代的な政治で重要視されたのは、それが「討議による統治」の具現的な存在だったからである。
憲法の精神とは権力の制限や国民の政治参加と同時に「討議による統治」ということだったのであり、そのありようは条文で政治的自由の規定などとしてあるが、政治的な実践的行為としてあるのだ。その憲法の精神は憲法の根本法としての存在はともかく、本来の力を発揮し、その役割を果たしてきたとは言えない。
それが日本の近代の政治の現状ではあるが、それでも、明治憲法下の天皇統治から、戦後の転換は立憲政治に歩を進めたことは疑いがない。
(5)
立法府は討議による統治の場であり、天皇の統治(権威による統治)を転換させた。天皇の官僚が戦後の政治的空間でも大きな役割を保持することで立法府は本来の役割を果たし得ないできたが、それでも重要な政治空間であり、それなりの機能も果たしてきた。一般には戦後民主主義と呼ばれた戦後政治の形態は立憲的精神(憲法精神)の実現という意味では不十分さを有していたが、戦前に比すれば相対的に歩を進めてきたことはたしかだ。憲法精神の実現という意味では相対的であるが、それなりの意味を持ってはいたのである。
安倍が主張した戦後体制の転換は戦後の憲法政治の転換であった。それは憲法9条に象徴される戦争放棄の放棄であると同時に、「討議による統治」と形骸化でもあった。それは祖父の岸信介が強行採決によってはじめられたともいえるが、強行採決で法案を通すことが前提で国会での審議は形骸化させてきたのである。手続きとしての民主主義は多数決原理に変えられてきたのである。
討議を経て法案を成立させるということと、手続き民主主義は関連しているのであり、権力が強権的に法を成立させることとは対立することなのだ。安倍は「討議による統治」という憲法精神を形骸化させたのであり、それが彼の憲法解釈の面だけでなく、進行させた憲法の改正だったといえる。この安倍政治は裏政治で支えられてきたのである。
菅-岸田と続いた安倍後の自民党政権は安倍政治の踏襲であり、裏政治が統一教会、裏金問題であるが、これが戦後の保守政治の根をなしてきたものだった。
保守政治は自己の政治体質(政治手法)を変えるには自民党を解体して出直すしかない。そうでないとすれば政権にしがみつき伝統的な保守政治を保持するしかなく、これには選挙での危機的状況が待ち構えている。連立政権の枠組みを
広げることで。つまりは公明党にプラスして維新や国民民主を加えることで
政治的な対応をするということであるが、それは一時的には成立するにしても、長続きしないであろう。この場合に彼らに共通するのは反立憲民主ということだが、その隠された主題は反共産党ということだろう。反立憲民主というのは
政権をめぐる一時的な対立軸にはなるにしても、持続的なものにはなり得ない。
共産党の問題は共産党が社会主義政権を目指す綱領的立場(プロレタリア独裁による統治という政治権力の形成をめざす立場)を清算し、憲法政治(立憲政治)に立つ立場を明瞭にできるか、どうかにかかっている。遅かれ、早かれ共産党は党名変更も加えてそこヘの立場に立たなければ影響力のある存在ではなくなるだろう。このことは立憲民主党が立つ立場の問題に関わるが、その党的立場が明瞭になっていけば、政権を維持することも強固になるはずである。この過程での
共産党の問題は選挙での協力、閣外協力など明瞭にしていけばいいことだ。そこらが明確になれば選挙民が判断するだろうし、政党の反共産党というのはあまり意味を持たなくなると思う。
岸田政権は「死に体」であり、何らかの政治方針の提起において政治的延命を果たす立場にない、そういう力もないと言われるが、その細い道としての「改憲の提起」は残されていると思う。
緊急事態法の創設というのが具体的な提示ないようになるのだろうが、これはコロナ問題を通して「権威による政治」(強権政治)が強まり、それにウクライナ戦争とパレスチナ戦争が拍車をかけている現状の反映ともいえるのであり、日本でも権威による政治はこういう形で波及してくると言える。憲法審査会の動きを注視していて欲しい。 (三上治)
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