カダフィ政権高官や有力者が続々とニジェールの首都に到着。ニジェール政府は保護する姿勢。NATOも容認?
- 2011年 9月 7日
- 時代をみる
- カダフィ大佐ニジェール浅川 修史
リビアはチュニジアやエジプトなどのアラブ諸国と比べると、中間層が薄い部族社会と言われている。カダフィ政権が崩壊したことで、カダフィ政権の軍人、政府関係者、カダフィ支持部族の有力者たちが、続々と隣国のニジェールに逃れている。ニジェール政府は彼らを好意的に保護しているようだ。
カダフィ政権はAU(アフリカ連合)の予算の30%を拠出するなど、ブラック・アフリカやサハラ・アフリカ(注 リビア、エジプト、チュニジアなど北アフリカはアラブ世界のアフリカ)の支援に注力してきた。ニジェール政府などもカダフィ政権に恩義を感じている。
カダフィ大佐の最終亡命先と目されているブルキナファソ共和国。ブルキナファソ共和国の報道官は、「カダフィ大佐を受け入れることはない」という方針をロイター通信にコメントしている。
ロイター通信の報道
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-23059120110907
が、「ブルキナファソのカンパオレ大統領は政権を獲得する前にリビアの軍事キャンプで訓練を受けていた」というから、今後どうなるかわからない。
NATOはカダフィ政権の亡命者を受け入れるニジェールの対応を厳しく非難せず、黙認している感がある。
カダフィ大佐本人がいつ亡命するのか(あるいはできるのか)注目される。
中東・エネルギー・フォーラム(幹事 畑中美樹氏)リビア情勢 9月7日から
>ニジェールの首都ニアメ入りしたカダフィ大佐の従兄弟で治安責任者のマンスール・ダオ氏(9月7日時点)
ニジェール大統領府のマスードゥ・ハスーミ報道官は、2011年9月7日、カダフィ大佐の治安責任者であるマンスール・ダオ氏が、トアレグ族のアガリ・アグ・アラムボ指導者と共に砂漠を超えてニジェール入りしてきたのでニジェール軍の車列を派遣して首都ニアメまで護衛に当たったことを発表した。因みに、同報道官は次のように語った。
① 3台の車が国境を越えてニジェールに入ってきた。
② 一人はカダフィ政権の上級将校であったので、我々は監視下に置いた。
③ 彼らは昨夜(9月6日夜)、首都ニアメに到着しニアメで就寝した。
④ 上級将校というのは、カダフィ大佐の従兄弟で治安責任者のマンスール・ダオ氏のことである。
⑤ 同氏は避難したいと申し出てきた。
⑥ 同氏のほかに9人のリビア人がいたが、中にはビジネスマンもいた。
⑦ 加えて、ニジェールのトアレグ族のアガリ・アグ・アラムボ指導者もいた。
⑧ 同氏のやって来る前には、帰還者の波が国境地帯を襲ったが、その大半はトゥアレグ族であり、リビア人兵士や民間人はいなかった。
⑨ マンスール・ダオ氏はヌアメの村に連れて行かれた。
⑩ そこで同氏は24時間体制の監視下にある。
尚、ニジェールのムハンマド・バズーム外相は、アルジェから電話でAFP通信に、「事実は重要度の異なる何人かがニジェールに到着したということだ。それだけだ。高位の人物はおらず、カダフィ大佐自身も子息たちもいなかった」と話している。
ところでNATO高官は2011年9月6日、電子メールで、「明らかにしておきたいが、NATOの任務はリビアの市民を守ることであって、数千人に及ぶカダフィ政権の指導者たちや外国人傭兵、軍司令官、国内で居場所のなくなった人々を追跡したり、標的にすることではない」(http://edition.cnn.com/2011/WORLD/africa/09/06/libya.war/index.html?eref=rss_world)との言い訳めいた内容の声明を発表している。
カダフィ大佐とアフリカ・サハラ地域の諸国、特にチャド、ニジェール、マリ、ブルキナファソとの関係は長期に亘るものである。それだけに、これらの国に亡命を求めたとしても不思議ではない。インターナショナル危機グループのナイロビ事務所のシェリー・バークールー・サハラ専門家は、「この車列の関する情報を特に持っているわけではないが、確かなのは全サハラ国がリビアと関係を持ち恩恵を受けてきたことだ。仮にブルキナファソが亡命を認めると申し出れば、カダフィ政権の人物が同国入りすることは大いに考えられる」「どのサハラ国も国際刑事裁判所に署名しているからといってカダフィ大佐ほかを差し出すことはないだろう」(http://www.csmonitor.com/layout/set/print/content/view/print/407573)とコメントし、カダフィ大佐はこれら諸国に亡命すれば安全だろうと見る。
さらにシェリー・バークールー・サハラ専門家は「全アフリカ諸国はカダフィ大佐を逮捕しないだろう。例え、国際刑事裁判所の署名国であっても」「サハラ国家は皆、カダフィ大佐の援助で恩恵を受けてきた。これらの諸国は単純に国際刑事裁判所と協力したくないと考えているので、カダフィ大佐も慎重にどの国に亡命するかを考える必要はあるまい」(同上)と述べ、カダフィ大佐のサハラ諸国への亡命の可能性は高いとしている。
因みに、ブルキナファソのカンパオレ大統領は政権を獲得する前にリビアの軍事キャンプで訓練を受けていたし、チャドのイドリス・ダービー大統領もカダフィ大佐の支援する勢力との共同作戦でハブレ大統領を打倒している。尚、ブルキナファソの国民の約60%はイスラム教徒で、約20%がキリスト教徒である。2004年の統計では同国国民の46%が貧困ライン以下で生活している。また失業率も77%もの高さとなっている。
(9月7日、記)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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