本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(468)
- 2024年 7月 6日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
日本10年国債の価格急落
海外で、多くの識者が警告しているように、現在、「世界の金融システム」は、きわめて危機的な状況に陥っているが、この点に関して、今回、「日本国債の価格急落(金利は急騰)」という、きわめて憂慮すべき現象が発生し始めたものと考えている。具体的には、「日本の10年国債の金利が1.075%にまで上昇」という展開のことだが、このことは、「金利」と「為替」という「国家の体力を計るバロメーター」の両輪に関して、「日本国家が、すでに、混乱状態に陥った状況」を現しているものと感じている。
より詳しく申し上げると、今までは、「円安」の容認により、「金利の上昇」を防いでいた状況だったが、現在では、「国債の買い支え」に必要な資金が枯渇し始めたために、結果として、「国債価格の下落」に見舞われ始めたものと考えられるのである。別の言葉では、今までのような「時間稼ぎ」と「問題先送り」の金融政策が継続できなくなったために、今後は、たいへん近い将来に、「債務の貨幣化」という「財政ファイナンス」が実施される可能性が高くなったものと思われるのである。
より具体的には、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」や「紙幣」の大量発行により、「国債の買い付け」や「不良資産の救済」などが実施される可能性のことでもあるが、この点については、先日の「農中の巨額損失」などが、水面下で、大きな影響を与えた可能性も考えられるようである。別の言葉では、今まで隠されてきた「人類史上、最大級の金融バブル」ともいえる「約600兆ドルのOTCデリバティブ」の崩壊が、間もなく表面化する可能性のことである。
つまり、今までは、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度において、「単なる数字」が「デジタル通貨」となり、「世界のコンピューターネッワークの中で大増殖した状況」だったが、現在では、いよいよ、崩壊の段階に差し掛かったものと考えられるのである。そして、このことは、「資本主義の崩壊」を意味するとともに、「西洋文明の終焉」を象徴する出来事のようにも感じている。
具体的には、「マネーの大膨張」がもたらした「価値観の画一化」、すなわち、世界中に広まった「お金(資本)が、最も大切なもの(主義)である」という認識の終焉でもあるが、これから必要なことは、「歴史の全体像」を理解しながら、「なぜ、このような状態に陥ったのか?」を考えることであり、この方法により、「三次元」にとどまっている「社会科学」が、今後、四次元から五次元への進化を遂げるものと感じている。(2024.5.29)
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ジェイミー・ダイモン氏の警告
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)による警告は、最近、頻度を増しながら、内容面での変化が見られる状況となっているが、具体的には、以前の「米国債務残高の持続性」に関する疑問点から、現在では、「1兆7000億ドル(約268兆円)に上るプライベートクレジット(非公開融資)」に関して、「地獄を見ることになりかねない」とまでコメントしているのである。そして、この時の注目点としては、多くの人が懸念する「株式バブルの崩壊による株価の急落」ではなく、「米国債」や「非公開融資」など、「債券」や「金利」に関する問題意識の存在が指摘できるものと感じている。
つまり、現在の「金融問題の本丸」が、決して、「株式のハイテクバブル」などではなく、「1980年代初頭から始まったデリバティブの大膨張」であることを、暗に示しているものと考えられるのである。別の言葉では、「ジェイミー・ダイモン氏は、デリバティブの実情を知り尽くしている人物」とも言えるために、現時点では、「ホンネ」が言えず、「タテマエのコメント」に終始している状況とも思われるが、一方では、「良心の呵責」により、「多くの人々に警告を発せざるを得ない心理状態」のようにも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」の時にピークを付けた「デリバティブのバブル」は、その後の、「世界的なQE(量的緩和)」により、「バブル崩壊の事実」が隠蔽された状況だったものと想定されるのである。つまり、「先進各国の中央銀行がバランスシートを大膨張させながら、リフレーション政策を実施することにより、バブルの処理を計ろうとした」という状況だったものの、実際には、「金融メルトダウンが、何でもバブルを発生させた展開」だったことも見て取れるのである。
より具体的には、「債券のバブル」に続き、「不動産のバブル」、そして、最近の「株式のバブル」が発生した展開のことでもあるが、実際の状況としては、「海上の津波」のように、「人々が気付きにくい仮想現実におけるバブルの発生と崩壊」だったものと考えられるのである。別の言葉では、「デジタル通貨に関する、いろいろなバブルの発生と崩壊」のことでもあるが、現在の問題点としては、「何でもバブルの最終章」である「実物資産のバブル」が始まった可能性とも言えるのである。
つまり、「世界的なハイパーインフレの発生」が危惧される状況でもあるが、この時の注目点は、やはり、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれる「デリバティブ」の完全崩壊であり、短期間のうちに「デジタル通貨」が効力を失う可能性だと感じている。(2024.5.30)
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100年前のインフレとデフレ
今から37年前の「1987年」に発生した「ブラックマンデー」に衝撃を受けた私は、その時から、本格的に「過去の金融史」を研究し始めたが、最初に行き着いた難問は、「1929年の米国大恐慌の発生原因」だった。つまり、現在でも、「大恐慌の原因が不明である」と説明されており、また、「デフレという言葉は、この時から経済用語として使われるようになった」とも言われているのである。
別の言葉では、「1923年」に発生し、そのときから「インフレ」が経済用語となった「ドイツのハイパーインフレ」と同様に、現在の「経済学の混乱」、あるいは、「経済学が未熟な段階にとどまっている理由」は、「インフレやデフレが正確に理解されていない点」にあるものと思われるのである。つまり、「実体経済」と「マネー」との関係性が正確に理解されず、また、「商品」や「通貨」そのものが「時代とともに、内容や形態を変化させている事実」が認識されていない状況のことである。
より詳しく申し上げると、「一次産品から二次産品、あるいは、三次産品から金融商品」へと変化した「商品」と同様に、「金貨」から「紙幣」、そして、「預金」や「デジタル通貨」へと変化した「お金(マネーと通貨)」についても、「正確な統計数字が存在しない状況」となっているのである。別の言葉では、「意図的に統計数字が操作されている可能性」も指摘されている状況のために、現在の「デフレ」や「インフレ」については、将来的に、計算し直される可能性も想定されるのである。
このように、「100年前のインフレとデフレ」には、いろいろ悩まされるとともに、数多くのヒントを得た状況でもあったが、「当時の思い出」として鮮明に残っているのが、「約6ヶ月間のハイパーインフレ」であり、実際には、「将来的に、この時期を無事に切り抜けなければいけない」という切実な思いだった。つまり、今までの私にとっては、将来に発生すると思われた「約6ヶ月間のハイパーインフレ」が主な原動力であり、また、現在では、「この時期が世界的に近づいているのではないか?」という緊張感を持ち始めた段階ともいえるのである。
そして、現在では、本当の「インフレやデフレに関する理論的な説明」についても、ほとんど検証済みの段階に差し掛かったものと思われるために、これから必要なことは、「文明法則史学が教える西洋と東洋との文明交代」に関して、「どのような要因により、このような大転換が発生するのか?」の理論的解明のようにも感じている。(2024.6.2)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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