本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(473)
- 2024年 8月 9日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
グローバル共同体とデリバティブ
6月21日に発表された「米国銀行の生前遺言」により気付かされた事実は、「グローバル共同体とデリバティブとの関係性」であり、実際には、「グローバル共同体の分裂が始まっていながらも、いまだに、デリバティブのバブルが破裂していない状況」でもあった。別の言葉では、「風船の破裂メカニズム」、すなわち、「内外の圧力差が強まった時に内部の崩壊が始まり、最後に、風船が破裂し内外の圧力差が解消される展開」そのものが、現在の「世界的な金融情勢」に当てはまっている可能性のことである。
より詳しく申し上げると、「共同体の規模拡大に伴う信用の量的増加」が、結果として、「マネーの大膨張」につながった展開に関して、今回、気付かされた事実は、「リーマンショック前後のGFC(世界的な金融大混乱)が、単に、デリバティブのバブル絶頂期を示しただけの事件だったのではないか?」ということである。また、その後の「金融メルトダウンがもたらした資産価格の急騰」、すなわち、「量的緩和(QE)による何でもバブルの発生」についても、実際には、「金融ブラックホールの内部で、デジタル通貨が、さまざまな資産価格の急騰をもたらしただけの展開」だったようにも感じられたのである。
別の言葉では、「デリバティブのバブルが、いまだに弾けていない状態のために、世界中の人々が、金融混乱の実情に気付いていない状況」とも思われるが、この時に発生したのが「バブルの先鋭化」、すなわち、「マグニフィセント7など、数少ない銘柄の価格急騰で指数全体が押し上げられた展開」だった可能性である。つまり、かつての「ニフティフィフティ」や「ITバブル」と同様に、「嚢中の錐(きり)」と言われるような状態となったものの、最後には、「真理という鋭い刃先が、バブルという袋を破る展開」のことである。
このように、現在の「世界的な金融情勢」としては、「デリバティブのバブル」が、いまだに崩壊していないために、「多くの人々が、生成AIの将来性に対して、過剰な期待を抱くとともに、デジタル通貨のバブルに酔いしれている状態」、あるいは、「実体経済だけを見て、マネーの実情を無視している状態」のようにも感じられるのである。
つまり、「実物資産の価格上昇が始まっていながらも、いまだに、多くの人々が仮想現実の世界から抜け出せないような状態」とも思われるが、今後の展開としては、「ブラックスワン」と呼ばれる大事件が発生するものと考えている。具体的には、「デリバティブのバブル崩壊」と、その後の「財政ファイナンスの実施」であり、その結果として、「人類史上、最大規模のボトルネック・インフレ」や「人類の覚醒」が発生する可能性である。(2024.7.1)
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米国大統領選挙とオリンピック
現在の「世界的な金融混乱」については、「2008年と似てきたのではないか?」という意見が、海外で頻繁に聞かれる状況となってきたが、この理由としては、「米国大統領選挙の前に北京オリンピックが開かれたものの、その直後にリーマンショックが世界を襲った状況」が、今回も繰り返される可能性が危惧されているからである。別の言葉では、「2007年から始まったサブプライム問題が激化し、2008年9月15日に世界金融を揺るがすような大事件が発生した状況」に関して、今回は、「2023年3月から始まった米国の金融混乱が、農中の巨額損失などをキッカケとして、デリバティブの完全崩壊を引き起こす可能性」が、大きな注目を浴び始めている状況となっているのである。
ただし、私自身としては、この点に関して、「表面的には、確かに、2008年と似たような状況である」と認識しながらも、一方で、「根本的な原因としては、1998年の方が、より当てはまっているのではないか?」とも考えている。つまり、「1997年から始まった世界的な信用収縮が、その後、1998年に、長銀の国有化やLTCM事件などを引き起こした状況」の方が、「不良債権の膨張」と「金融システムの崩壊」という観点からは、現在とよく似た状況のようにも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、「1980年代初頭から始まったデリバティブの大膨張」に関して、「前半の20年間」は、「日本を中心とした民間金融機関のバランスシート大膨張」をもたらした状況だったものの、「後半の20年間」は、「民間金融機関の簿外におけるバランスシート大膨張」を引き起こした状況だったことも見て取れるのである。別の言葉では、仮に「1998年から2008年までのデリバティブの大膨張」が存在しなかった場合に、「1998年に、金融システムの崩壊が発生していた可能性」も想定されるのである。
しかし、実際の展開としては、「デリバティブの大膨張」により、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」が実施されたものの、現在では、「1998年の金融混乱」と比較して「約30倍規模の不良債権」が、世界的に存在する状況とも想定されるのである。しかも、現在では、「雪だるま式に膨れ上がった不良債権」が、いよいよ、「金融界のブラックホール」を抜け出て、「現実世界」に飛び出そうとしている状況とも理解できるのである。
そして、このキッカケが、「米国銀行の生前遺言」で述べられていた「デリバティブの巨額損失」とも思われるために、今回の「パリオリンピック」については、その後に、「人類史上最大規模の金融大混乱が発生する可能性」を憂慮すべき状況とも感じている。(2024.7.3)
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星野リゾートトマムの売却
先日、中国企業による「星野リゾートトマム」の売却のニュースが出ていたが、この記事から思い出されたのが、「35年ほど前に、米国ファンドマネージャーから教えられた投資の教訓」だった。具体的には、「海外不動産投資の難しさ」だったが、実際には、「1980年代後半の日本人による米国不動産投資」について、「1970年代後半のオイルマネーと同様に、最後には失敗し、資金を引き揚げる結果になる」というものだった。
そして、実際の展開としては、ご存じのとおりに、「ロックフェラーセンターを購入した三菱地所」を始めとして、「多くの投資家が、損切りによる撤退を選択せざるを得ない状況にまで追い込まれた」という状況だったのである。つまり、「70年代のオイルマネー」や「80年代の日本の不動産バブルマネー」については、「余剰資金で米国の不動産に投資し、一獲千金を狙った」というような状況だったものの、結果としては、「原油価格の下落」や「日本のバブル崩壊」などにより、あっという間に、米国からの資金引き上げを迫られた展開となったのである。
そのために、10年ほど前に騒がれた「中国資本による日本の土地購入」についても、最後には、米国と同様の結果になるものと考えていたが、今回の「星野リゾートトマム売却」のニュースは、今後、「中国資金の引き上げ」が、より一層、活発になる兆候の出来事とも思われるのである。別の言葉では、「中国国内の不動産バブル崩壊」については、「1990年代の日本」をはるかに超える規模とも思われるために、今後は、「日本に投資されていた資金が、急速に、中国国内に回帰する事態」も想定されるのである。
しかも、今回は、「世界的な金融大混乱」も重なっているために、今後は、より一層、「信用の消滅」と「マネーの枯渇」が激しさを増してくるものと考えているが、その結果として予想される展開は、「中国における資金繰り」が、これから急速に悪化する展開とも想定されるのである。
つまり、「2024年の世界的な金融混乱」については、「米国や日本の土地バブル崩壊がもたらした混乱」とは違い、「800年間も継続した『西洋の富の時代』の終焉が、根本的な原因」のようにも考えられるのである。より具体的には、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」が、最も参考になる前例とも思われるために、これから必要なことは、決して、自分自身の独断偏見に惑わされないことであり、また、「歴史の全体像」を考えながら、どのような混乱にでも対処できる覚悟のようにも感じている。(2024.7.4)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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