本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(476)
- 2024年 8月 30日
- 評論・紹介・意見
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金本位制が復活する可能性
7月18日付けの日経新聞に、「金本位制が復活する可能性」に関する記事が掲載されていたが、この点については、「貨幣の歴史」の研究と、「現在が、どのような状況下にあるのか?」の理解が必要な状況のようにも感じている。別の言葉では、「53年前の1971年」に、当時のニクソン大統領が、一時的に中断した「金(ゴールド)とドルとの交換」について、「なぜ、このようなことが起こったのか?」に関する正確な理解や認識が必要な状況とも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「金(ゴールド)」については、5000年以上もの長期間にわたり、「貨幣としての役割」を果たしてきたものの、「1971年の8月15日以降」は、「信用本位制」と呼ぶべき、まったく新たな通貨制度が採用された状況のようにも思われるのである。そのために、現時点では、「金(ゴールド)を本位とした通貨制度が、なぜ、1971年に崩壊したのか?」、あるいは、「なぜ、その後に、『信用』を本位とした通貨制度が作り出されたのか?」などの理解が必要な状況だと考えている。
そして、この点については、今までに詳しく述べてきたとおりに、「1600年前の西ローマ帝国崩壊」が参考になるものと考えているが、実際には、「共同体の規模拡大に伴う信用の量的増加が、マネーの残高増加に貢献した状況」のことである。別の言葉では、現在の「未曽有の規模の世界的なマネー残高」が積みあがるまでには、「1600年」という長い期間が必要だった可能性のことである。
以上のような要因の結果として、現在では、「影も形も存在しない『単なる数字』が通貨となり、世界のコンピューターネットワークを駆け巡りながら、さまざまな市場価格の形成において、大きな影響を与えている状況」であることも見て取れるのである。ただし、「信用は、一瞬のうちに崩壊する」という言葉のとおりに、現在の「人類史上、未曽有の規模のマネーが存在する状況」に関しては、「たいへん近い将来に、劇的な変化が、世界の金融市場で発生する可能性」も想定されるのである。
そして、この点に関して、もっとも大きな影響を与える可能性としては、「トランプ氏の目論み」といわれる「金本位制の復活」が想定されるとともに、この点の理解において現時点で必要なことは、「1971年から現在までに、どれほどのマネーやクレジットが創り出されたのか?」、あるいは、「負債が消滅した時に、その裏側に存在する資産も同時に消滅する可能性」などについての、深い理解や認識ともいえるようである。(2024.7.18)
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人生の砂時計
「アウシュビッツの大虐殺」を経験した「ユダヤ人」が、「なぜ、今回、ガザの大虐殺の実行者となっているのか?」について、大きな疑問を抱いていたが、先日、「NHKの心の時代」という番組で、「ピーター・フランクルの人生の砂時計」の説明を聞いたことにより、ある程度、納得が得られたような気がした。ただし、私自身は、決して、「ガザの大虐殺」を容認する者ではなく、単に、「ユダヤ人の心境を理解しようとする態度」に終始している状況とも言えるのである。
そして、この点に関して、今回、気付かされたことは、「砂時計の砂」に関する「西洋人と東洋人との認識の違い」であり、実際には、「ピーター・フランクル」を始めとした西洋人が、「落ちた砂」が「今までに費やされた日々」、そして、「落ちていない砂」が「残りの人生」を表しているという理解や認識のことである。つまり、「輪廻転生」を信用しない西洋人にとっては、「残りの日々が少なくなることに恐怖心を覚える状況」とも思われるが、一方で、「仏教を信じる東洋人」にとっては、「落ちた砂の一粒」が「日々の経験により得られた神様の智慧」を表している状況とも理解されているのである。
より具体的には、「成仏」という言葉のとおりに、「どのような人も、日々の努力の積み重ねにより、誰もがお釈迦様のような精神レベルにまで到達可能である」という認識のもとに、「日々の経験が、神様から頂いた宝物である」と理解されている状況のことである。別の言葉では、「弘法大師の十住心」が示すように、「人類の精神レベル上昇」が、「キリスト教が教えるアセンション」を意味する可能性のことである。
このように、「東洋人の人生観」としては、「過去の失敗を繰り返さず、人類の霊的な次元上昇に努めること」が挙げられるが、一方で、「西洋人の人生観」としては、「西洋文明の富の時代」を象徴するように、「人生の目的が、富を増やし、社会的な地位を上昇すること」のようにも想定されるのである。
つまり、「1600年前の西ローマ帝国の末期」と同様に、「マネーの膨張」が継続している間は、「人生の目的」に疑いを抱いていなかったものの、「財政赤字やインフレ」に悩まされるとともに、いろいろな「苦悩」が噴出し始めた状況とも想定されるのである。そして、このことが、「800年ごとの東西文明交代の原動力」であり、今後は、「世界的なハイパーインフレの発生」、すなわち、「貨幣価値の劇的な減少」により、世界中の人々が、「なぜ」という疑問を抱くことから、実際の転換が始まるものと考えている。(2024.7.22)
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非線形のダイナミクス
「カオス理論」の「非線形のダイナミクス」では、「『全てか無か』の形で発生するようにみえる現象も、詳しく調べてみると、多くは、長期間にわたって起きた変化の蓄積である」と説明されており、その具体例として、「純水の氷点が摂氏ゼロ度で沸点が100度」などが挙げられている。つまり、「どのような出来事にも、原因がある」という状況でありながら、「われわれの目に見える『一定の変化』が発生するまでには、長期の準備期間が必要である」とも理解されているのである。
そして、この点を、「マネーとクレジットの理論」に応用すると、「金(ゴールド)から紙幣が派生し、また、その後に、デジタル通貨が派生した原因」についても、説明がつく状況のようにも感じている。具体的には、「共同体の規模拡大に伴い、マネーやクレジットの残高が増加する」という私の仮説に関して、「どの程度にまで共同体の規模が膨張した時に、紙幣やデジタル通貨の発行が始まるのか?」ということである。
別の言葉では、「共同体の規模拡大」に伴い、「生産性の向上」が発生するとともに、「貨幣の重要性」が認識される展開が想定されるが、この点を、実際の「貨幣の歴史」で検証すると、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」以降は、ほとんどの期間において、「金や銀、あるいは、銅などの実物資産が通貨として使われていた状況」だったことも理解できるのである。そして、「18世紀の産業革命」以降においては、顕著な経済成長が見られたものの、「通貨制度」に関しては、「1933年までのアメリカで、金貨本位制が採用されていた」という状況だったことも見て取れるのである。
ただし、その後は、「1944年のブレトンウッズ体制」により「金為替本位制」と呼ばれる通貨制度、そして、「1971年のニクソンショック」以降は、「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度に変化したことも理解できるのである。つまり、「1600年間にも及んだ変化の蓄積が、最終段階で、デリバティブという金融商品やデジタル通貨を産み出した状況」だったものと考えられるのである。
そのために、これから予想される変化としては、「水蒸気のような状態となったデジタル通貨が、景気の低迷とともに雲のような状態となり、その後に、大量の紙幣の雨を降らせ始める展開」である。つまり、現在の「デジタル通貨」に関して、「裸の王様」のように、「影も形も存在しない状況」であることに気付いた人々が、慌てて、本来の通貨である貴金属に殺到し始める可能性である。(2024.7.23)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion13864:240830〕
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