本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(477)
- 2024年 9月 6日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
トランプのMAGA
2016年と2020年に続き、2024年も、「米国の大統領選挙で、トランプ氏のMAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)がマスコミで報道される状況」となったが、この点に関して、不思議に思うことは、「アメリカ合衆国が、何時、偉大な国だったのか?」ということである。つまり、「1980年の大統領選挙で、ロナルド・レーガンが、初めて、この言葉を使った」と言われているように、「1980年代以降のアメリカは、偉大な国ではなくなった」と多くの国民が理解している状況とも言えるのである。
別の言葉では、「エヌビディアの時価総額が、フランスのGDPを上回った」と言われるほどに裕福な国家において、多くの人々が不満を抱いている理由としては、やはり、「貧富格差の増大」が指摘できるものと考えられるのである。つまり、「現在の米国で、6割から7割の人が、その日暮らしの生活を余儀なくされている」といわれる状態は、決して、「1960年代のアメリカ」のように活気のある状況とはいえないものと思われるのである。
また、このような「国民の不満や喪失感」については、「第二次世界大戦後のイギリス」が同様の状況だったものと思われるが、実際のところ、「七つの海を支配した大英帝国は、20世紀に入り、二つの世界大戦で国力が失われた状況」だったことも見て取れるのである。つまり、「世界の覇権国家」が、イギリスからアメリカへと移行した結果として、「イギリスの没落」が顕著になり、たびたび、「ポンド危機」に見舞われた状況のことである。
このように、「帝国の興亡」としては、「ピークを付けてから約半世紀後に、いろいろな危機に見舞われる可能性」が指摘できるようだが、この理由としては、「防衛費の急増」などが挙げられるものと考えている。つまり、「財政危機に見舞われ、いろいろな金融政策が駆使されるものの、最後に、財政ファイナンスに訴える状況」のことでもあるが、今回は、「ポンジ・スキーム」とも揶揄される「現代の世界的な金融システム」に関して、「紙幣の増刷以外に、信用供与の方法がなくなりつつある状況」が指摘できるものと感じている。
つまり、現在は、世界全体が「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と似たような状況のために、「これから、どのような金融大混乱が世界を襲うのか?」について、世界各国で危機感が噴出している状態とも言えるのである。しかも、このような状況下で、「アメリカだけが、再び、偉大な国になることを目指す」というようなスローガンを掲げた大統領候補が、世界のマスコミを賑わせている事実は、「世界全体の分裂」を促進させるとともに、「世界の金融」を破裂させる効果があるようにも感じている。(2024.7.24)
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景気と金利の関係性
現在は、「景気の悪化に伴い、金利が世界的に低下する」という意見が主流となっているようだが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「1980年代初頭」から約40年間にも及んだ「世界的な金利低下」については、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」において、「民間金融機関の表と裏のバランスシート大膨張」が、大きな影響力を与えたものと考えられるからである。
別の言葉では、「1971年から現在までの約53年間」に関して、「前半の約26年間」と「後半の約26年間」に分けて、「民間金融機関の資金繰り」などを丁寧に分析する必要性があるものと感じられるのである。つまり、前半が、「日本を中心にして、民間金融機関のバランスシートが正常な残高膨張を見せた状況」であり、実際には、「約2500兆円規模にまで増えた日本の土地の時価総額を、資金面で支えた状況」のことである。
より詳しく申し上げると、「ピーク時の信用乗数が約13倍」というように「バブルのピーク時には、中央銀行が出したベースマネーが、市場で約13倍にまで膨張した状況」だったものの、その後の「バブル崩壊」により、「不良債権が民間金融機関に移行するとともに、最後には、金融システム崩壊の危機に直面した」という展開だったことも見て取れるのである。また、その後は、「メガバンクと言われる民間金融機関を中心にして、簿外でデリバティブの残高を急激に膨張させた」という展開だったが、この結果として発生した現象は、「実質的な信用乗数が急激に増えた状況」とも想定されるのである。
つまり、「デリバティブの実態」が明らかになっていないために、実際の数字的な検証は、後世の研究に委ねざるを得ないものの、「1998年から現在までの約26年間」においては、「大量のデジタル通貨が創造された結果として、マイナス金利までもが世界的に発生した状況」だったことも理解できるのである。別の言葉では、「大量の資金が金融市場に存在した状況」だったものの、その後は、いわゆる「量的緩和(QE)」により、ほとんどの資金が国家に吸い上げられるとともに、「クラウディングアウト」という「民間部門の資金不足がもたらす金利上昇」が発生したことも見て取れるのである。
このように、現在では、「民間部門における資金不足」が、世界的に顕著な状況となり始めており、今後の「景気の悪化」は、「民間部門の資金不足」や「税収減」を促進させるものと思われるのである。そのために、これから憂慮すべき事態は、「景気悪化時の金利上昇」や「財政ファイナンスがもたらす世界的なハイパーインフレ」だと考えている。(2024.7.25)
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雨のオリンピック開会式
7月26日に開催された「パリオリンピックの開会式」は、あいにく、雨中での進行となったが、私自身としては、反対に、いろいろな想いを抱かされるとともに、歴史的な流れを再検証せざるを得ないような状況でもあった。つまり、私自身は、「西暦396年」に開催された「最後の古代オリンピック」から1600年後の「1996年」の前後に、「近代オリンピックも、古代オリンピックと同様に、堕落や腐敗で、その運命を終えるのではないか?」という認識を持っていたからである。
しかし、実際には、「2024年のパリオリンピックも開催された」という状況のために、現在でも、「私の理解や認識に、どのような過ちがあったのか?」を考え続けているが、今回、気付かされたことは、次のようなことだった。具体的には、「第一回のアテネオリンピックが開催された1896年から現在までの128年間」に関して、「前半と後半とで、大きな違いが存在する可能性」であり、しかも、「1984年のロスオリンピックの頃から始まったスポーツの商業化が、今回、終焉の時期を迎えた可能性」などである。
より詳しく申し上げると、「1996年から現在までの28年間」については、以前から申し上げているとおりに、「デリバティブの大膨張が創り出した大量のデジタル通貨の存在」が、「近代オリンピックの運命」を長引かせたものと思われるのである。つまり、「古来のオリンピック」と同様に、「パンとサーカスの生活」を堪能する大衆が存在することにより、「オリンピックの開催」が長引いた可能性である。
別の言葉では、「1980年代初頭から続いたマネーの大膨張や世界的な金利低下」により「スポーツの商業化」が可能になったものの、現在では、反対に、「世界的な金利上昇」により、「人々の意識が変化し始めた状況」のようにも感じられるのである。具体的には、「地球に優しく、環境に配慮するオリンピック」などの標語のとおりに、「会場建設などに使われる資金が急減した状況」のことである。
このように、「近代オリンピックにおける前半と後半の違い」が発生した原因としては、「1971年のニクソンショック」から始まった「マネーの世界的な大膨張」が指摘できるものの、現在では、前述のとおりに、まったく反対の動きが始まったものと思われるのである。別の言葉では、「オリンピックの存在意義」に対する果敢な挑戦が始まった状況とも思われるが、このことは、これから想定される「世界的な金融大混乱」に関しても、「その後に、どのような認識の変化が発生するのか?」という点で参考になるものと感じている。(2024.7.29)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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