本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(479)
- 2024年 9月 20日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
買い手の消滅危機に見舞われた日本国債
日銀による「追加利上げ」と「量的引き締めの開始」の結果として、「世界の金融市場は、一挙に、大混乱に陥った状況」とも思われるが、この点に関して、現在、必要とされることは、「金融混乱に関する正確な分析」と「自分の資産に関する安全の確保」だと感じている。つまり、現在の「世界的な金融大混乱」に関しては、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」と似たような状況のために、「既存の常識」が当てはまらない可能性を考慮するとともに、「本来のマネーである金(ゴールド)などの貴金属に投資すること」である。
別の言葉では、「西洋の先進諸国が、1991年のソ連のような状態に陥った可能性」を考慮することでもあるが、この点に関して、現在、世界的な注目を浴び始めたのが、「買い手の消滅危機に見舞われた日本国債」のようにも感じている。具体的には、「誰が、今後、日本国債を買うのか?」ということでもあるが、実際には、「今までに発行された低金利国債の価格低下により、今までの買い手が、巨額の含み資産を抱え込む可能性」が危惧される状況のようにも思われるのである。
その結果として、今後は、「最後の買い手」と呼ばれる「中央銀行」が、今後、「財政ファイナンス」を実施する可能性が高まった状況とも想定されるが、この前段階として予想される事件は、「不調な国債入札」のようにも感じている。つまり、今までは、「日銀の国債購入」により、「プライマリー・ディーラーが、安心して、国債の入札を実施していた状況」だったものの、今後は、この点に異変が発生する可能性である。
より詳しく申し上げると、「国債の買い手が消滅する危機」に見舞われたプライマリー・ディーラーとしては、「国債の入札」に関して、消極的な対応を取らざるを得なくなるものと思われるのである。そして、結果としては、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手消滅に遭遇した中央銀行が、インクが無くなるまで、大量の紙幣増刷に追い込まれる可能性」が想定されるが、今回の違いとしては、その前段階として、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」も想定されるようである。(2024.8.5)
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二つのブラックマンデー
8月5日に発生した「日本株の暴落」については、「令和版のブラックマンデー」と呼ばれ始めたようだが、両方の株価暴落を実際に経験した私自身としては、「表面上の類似点が存在するものの、内容面では、まったく逆の状態ではないか?」とも感じている。具体的には、「1987年のブラックマンデー」が、「その後のデジタル通貨の大膨張を示唆していた出来事」だったものの、「今回のブラックマンデー」については、「デジタル通貨の終焉、そして、大量の紙幣発行を示唆する出来事」のようにも思われるのである。
別の言葉では、18世紀ごろから始まった「資本主義」の最終段階で、1971年のニクソンショックをキッカケとして「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度が誕生し、その結果として、「単なる数字が、それまでの金(ゴールド)に代わって本位通貨となる事態」が発生したことも見て取れるのである。つまり、「共同体の規模拡大に伴い、マネーの残高膨張が加速した結果として、氷のような状態の金(ゴールド)が、水のような状態の紙幣、そして、水蒸気のような状態のデジタル通貨を創り出した展開」のことである。
より詳しく申し上げると、「1971年から1997年までの約26年間」は、「民間金融機関のバランスシート大膨張により、民間金融機関の預金が大膨張し、日本を中心として土地や株式のバブルが発生した期間」だったものの、その後の「1998年から現在までの約26年間」については、「民間金融機関のオフバランスシート大膨張により、デリバティブとデジタル通貨の大膨張が、日本のバブル時と比較して、約30倍の規模で発生した状況」だったものと想定されるのである。
しかも、今回は、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」から、「デリバティブを利用した市場価格の操作」が実施された状況だったものの、現在では、すでに、「デジタル通貨の枯渇状態」が発生したものと考えられるのである。つまり、「民間部門の資金が国家の財政赤字によって吸い上げられる事態」を意味する「クラウディングアウト」の発生により、「中央銀行自体が、最後の手段である紙幣の増刷、あるいは、その前段階のCBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行を迫られた状況」のことである。
そのために、これから必要なことは、「1987年から現在までの約37年間」に、「どのような変化が発生したのか?」を理解しながら、「これから、どのような資産に、世界の資金が流れるのか?」を考えることであり、実際には、「大量の紙幣が市場に出回ることにより、未曽有の規模でハイパーインフレが発生する可能性」だと考えている。(2024.8.6)
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円キャリートレードの亡霊
「令和版のブラックマンデーは、円キャリートレードの巻き戻しが原因だった」というような説明が、現在、市場のコンセンサスとなっているようだが、私自身としては、この点に、大きな違和感を覚えている状況である。別の言葉では、「1998年から現在までの世界的な金融情勢」を検証すると、「日本の資金は、ほとんどが、国家の財政赤字や不良債権の処理に充てられていた状態」であり、また、「日本から海外への資金移動については、金額的な面において、それほど影響がなかった状況」のようにも想定されるからである。
より詳しく申し上げると、「2000年前後を境にして、世界的な資金の供給方法が、円キャリートレードからデリバティブの大膨張へと変化した可能性」が考えられるために、現在では、すでに、「円キャリートレードの存在そのものが、亡霊のような存在となり、金額面で、きわめて小さな影響しか持たない状況」のようにも思われるのである。しかも、「なぜ、日本で低金利状態が継続していたのか?」の理由としては、「金利」を上げると、「日銀が債務超過に陥る可能性」や「利払い費が急増し、日本の国家財政が、きわめて短期間のうちに、行き詰まりを見せる可能性」などが危惧されていた点が指摘できるのである。
このように、2000年前後から始まった「世界的な超低金利状態」に関しては、「デリバティブとデジタル通貨の大膨張」が主要な原因であり、「円キャリートレードについては、デリバティブの大膨張を促進するキッカケの出来事にすぎなかった可能性」も想定されるのである。つまり、今までの日本経済は、「メガバンクが保有するデリバティブの恩恵により、超低金利状態の継続が可能だった状況」とも思われるが、現在では、すでに、「デジタル通貨の枯渇」により、「何でもバブルの対象が、デジタル資産から実物資産へと移行を始めた状況」のようにも感じられるのである。
より具体的には、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降、「水蒸気のような状態となったデジタル通貨」が、最初に、「国債のバブル」を発生させ、その後に、「世界的な不動産バブルや株式バブル」などを発生させたものの、現在では、すでに、「デジタル通貨の枯渇」により、「水のような状態の紙幣が、世界的に発行される可能性」が高まっていることも理解できるのである。
そのために、これから必要なことは、「目先の劇的な価格変動」に惑わされず、「大きな流れ」を、しっかり把握し続けることであり、基本的には、本当の安全資産である「金(ゴールド)などの貴金属」を継続保有することだと考えている。(2024.8.7)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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