<性>もまたデフレ商品となった日本の病理(その1)
- 2011年 9月 14日
- 評論・紹介・意見
- デフレ大木 保性
彼女たちに身体を売ることをやめさせる言葉を、もっていない日本!
はや東日本大震災から半年になりますが、
なされるべきことが手つかずのままにずるずると先延ばしにされています。
このあいだに首相が替わりましたが、
なぜ? 能力もないのに手を挙げる人たちがいるのか理解しがたい。
ただ徒党を組んで、分け前に預かろうとしているものたちなのか、それとも
先の首相のように空きカンといわれて恥をさらしても、その座にすわってみたい類のものたちなのか、
いずれにしてもそのつど詭弁と言い逃れで国民から逃亡してきた前内閣にいて、
文句を言いつつ辞めなかったものが、また新政権に居すわっていることが、
この新政権といわれるものが欺瞞にみちていることをよくしめしている。
残念なことに被災者には、まだまだ政治・行政的な悪夢がつづくとみるほかないようだ。
以前からお話していますように、
「理念なき与野党に与するものとマスメディアのあいだで、
発言の意味や内容、それにともなう責任(主体性)の重さ(欠如)ということが
なし崩し的に不問にされつづけた結果、
虚言、放置、矮小化、脈略破綻、解離逃亡、などの
分裂症化が常態化し」 ている。
それゆえ欺瞞的な政権がみさかい無くてんでに夜郎自大にふるまって省みることもないわけです。
ほんとうに、このものたちを養わされている国民大衆こそたまったものではない。・・・
– さて今回はまたちがった角度から、現代社会をみてみようというわけで、
中村敦彦氏の「売春未満」(宝島社刊)というずいぶん変わったタイトルの本をテキストにして
現代女性の性の意識と自己商品化についてみてまいりましょう。
冒頭から著者は宣告している。–
–「2000年辺りからだんだんと、そして2006年辺りから決定的に、
ハダカの仕事の社会的な評価とカラダを売る女性たちの意識が変貌している。」–
–「おそらく社会全体で加速度的に進んでいる階層化が関係している。
一生懸命に働いても生活できない貧困層が登場したことによって、
女性の最後の手段を売ることは恥ずかしいことでもなんでもなく、
売るものがあるのは才能、それを誰かが批判できるような社会状況ではなくなった。」–
それをさらに補足すべくつぎのことが書き添えられている。
社会一般の就職難にくわえて、
–「深刻なアダルトメディア不況で、それなりに名前が売れているAV女優の多くは、
その職業を誰に隠すこともなく親や恋人にまで報告して堂々と仕事をしている。
カメラの前でセックスをして自分のすべてを晒すことが恥ずかしいという前に、
自分自身が作品となって多くの人に認められて、人より多い収入を得ていることが誇りであり、
なにひとつ後ろめたいことがないのである。」–
–「『バレたらどうする?』という不安や焦りは古い感覚になりつつあり、
かつてとはまったく異なるポジティブにカラダを売る意識が生まれている。」(一部略)–
この著者の宣告をつぎのようにいいかえることができるようにおもえる。
飯島愛の『PLATONIC SEX』のころから「飯島愛の死に至る時代」は、
眼に見えない時代の変容が若い女性たちの意識をもとらえて翻弄していく過程でもあったと。
飯島愛が固執した 「AVに出ること」のタブー意識は、
次の世代の女性たちには
「 恥ずかしいという前に、人より多い収入が誇りであり、かつてとは異なるポジティブな意識」
として著者にとらえられている。
ここで、飯島愛の性を売るときの考え方をおもいかえしてみよう。
— 彼女は、「オヤジに売春する」ことや「タレントと寝ることがステータス」であり
すでに自身の中でタブーではないにもかかわらず、
「AVする」ことには「大義・言い訳」がいるというタブー意識をみせている。–
それは彼女にわずかに残されていた社会との関係性がはたらいた最後のタブー意識なのか?
つまりは、
この本に登場してくる女性たちが徹底的に社会から心的に孤立させられて、
もはやタブー意識を欠落していることをあらわしているのか?
著者は「深刻なアダルトメディア不況」にその原因をみとめようとしているようだが。・・・
すなわち「商品」としての<性 > 、「性」の<商品差別化> といういままでのシステムが
何年かのうちに陳腐化し、「商品」たりえなくなり、社会一般のデフレ不況の波にひきこまれ、
ようやく勝ち組だけが生き残る状況に一変したことに、原因をみいだそうとしている。
するとここでは「商品」を購買する側である男性の動向が相対的な意味をもってくるようにおもえる。
(次回につづきます。)
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〔opinion0613 :110914〕
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