普天間の辺野古移設計画をやめよ -沖縄からニューヨーク・タイムズに意見広告-
- 2011年 9月 26日
- 時代をみる
- ニューヨーク・タイムズ伊藤力司沖縄基地問題
野田首相はニューヨークで9月21日(日本時間22日未明)行われたオバマ米大統領との初めての首脳会談で、沖縄の普天間基地を辺野古に移設するとの日米両政府の合意を実現することを誓い、オバマ大統領は「結果が必要だ」と約束の履行を迫った。
「沖縄県外移設」を叫んでいた鳩山首相が昨年5月「日米マフィア」の軍門に降って、首相辞任の“引き出物”に辺野古移設の日米合意を差し出して以来、日米会談ごとに日本側が何回普天間基地づくりの約束を繰り返したことか。しかし保守系の仲井真知事以下、全沖縄挙げての辺野古移設反対の意思を菅内閣は切り崩すことができなかった。
野田首相は、「抑止力」と沖縄の「負担軽減」のためには普天間移設が是非必要だとして、沖縄県の理解を得るべくさらに努力すると言っている。使途を限定しない「一括交付金」制度を新設して、“札束で引っぱたく”例の方式で沖縄を軟化させようとしているように見受けられる。だがヤマトに煮え湯を呑まされ続けてきた沖縄の人々が、果たして軟化するだろうか。
折も折、沖縄の有志の人々が野田・オバマ会談にぶっつけて、9月21日から23日までの3日間、ニューヨーク・タイムズ電子版に「普天間即時閉鎖、辺野古やめろ、米海兵隊帰国させろ」の意見広告を出した。原文はもとより英語だがその全文を翻訳して紹介しよう。この広告には文章だけでなく、効果的な写真が何枚も使われている。広告の現物は以下のサイトで見ることができる。
http://www.okinawaken.org/nytimes
◎軍事力に頼らない平和を
沖縄と日本の人民からアメリカ人民へのメッセージ
▽米海兵隊を帰国させる時がきた
1945年に第2次世界大戦が終りかけたころ、日本の南西部の小さい島沖縄では、アメリカと旧日本帝国が激しい地上戦闘を戦った。この戦闘は20万人の生命を奪った。米日の兵士の戦死者だけでなく、それよりはるかに多くの非武装の沖縄市民が生命を奪われた。以来米軍は沖縄を占領している。その土地は銃口の下で住民から接収したものだ。沖縄には今日(こんにち)でも34の米軍の基地と施設が存在している。その中には海兵隊基地7と空軍基地1が含まれている。ベルリンの壁崩壊以来、アメリカは国の内外で多くの基地を閉鎖した。冷戦が終わって久しいのに沖縄の米軍基地は変わらず、むしろ増強されている。
▽普天間―「世界で最も危険な米軍基地」
家族が危険な目に遭ってもあなたは沈黙を守りますか?
基地周辺で居住が非常に危険な場合、米軍は基地の周りに「クリアーゾーン」を設ける。米軍は危険な「クリアーゾーン」内に居住を許さないとしているのに、沖縄の海兵隊普天間飛行場に隣接する危険ゾーンには800戸以上の家族が暮らしている。海兵隊作戦司令部長は、航空機の墜落や事故の危険からアメリカ人を保護するための通達を出しているが、普天間では病院、コミュニティーセンター、保育園など18の公共施設と3600人以上の民間人には、航空機のもたらす危険に対する保護条項は何もない。全ての軍事基地に適用されるべき軍事規則は、沖縄では無視されている。事故は既に起きている。2004年8月13日、普天間飛行場から離陸した海兵隊の大型攻撃・輸送用ヘリコプターが近くの沖縄国際大学に墜落した。それから7年後の今日も、米軍用機は住宅や学校の上空を頻繁に、深夜まで訓練飛行を続けている。次の航空機大事故は何時(いつ)起きるだろうか? だからこそドナルド・ラムズフェルド元国防長官が、普天間海兵隊基地を「世界で最も危険な基地」と呼んだのだ。日本政府は普天間基地の存在は日本を防衛するためだと言うが、基地は専ら住民を危険に陥れている。普天間は沖縄に残っている多くの米軍基地のひとつだが、沖縄住民にとっては最も危険な基地である。沖縄人民はこの危険な軍事基地を直ちに閉鎖すること、その土地の正当な返還を直ちに行うことを要求する。
▽絶滅危惧種の生息地に軍事基地建設
沖縄人民は軍事基地のない平和な生活を強く望んでいる。しかし米日政府は危険な普天間基地を移すために、数マイル離れた辺野古の無垢な自然生息地に軍事基地を建設することを発表した。
辺野古の海は海洋生物の宝庫であり、そこにはオキナワ・ジュゴンを含む多様な稀少種が生息している。ジュゴンはマナティー(海牛)に近い大型海洋哺乳動物で、絶滅のおそれがある稀少種として国際環境条約で保護されている。人魚伝説はこの愛らしい動物をベースにつくられたと言われているが、この海に大型飛行場の建設計画が持ち上がったことで、ジュゴンはまさに絶滅の危険にさらされている。
沖縄人民は、ジュゴンの海を破壊し地域住民の安全を脅かす新たな基地建設計画を拒否する。沖縄の全ての市や町の首長はこの無謀な基地建設計画に反対し、沖縄県知事も拒絶している。沖縄県議会と多くの市町村議会は計画に反対する決議を採択している。
普天間飛行場を代替する海兵隊基地を受け入れる所は、日本のどこにも存在しない。沖縄の海兵隊をどうかアメリカにお引き取り願いたい。アメリカは人権と民主主義を尊重する国である。われわれは軍事力に頼らない、対話による平和を希求する。
▽沖縄に米軍基地や海兵隊は本当に必要か?
今日(こんにち)在日米軍全基地の75%は沖縄に集中している。在沖縄米軍基地の大多数は海兵隊基地である。政治家、退役軍人、選挙で選ばれた地方当局者、宗教指導者、シンクタンクのメンバーなど、あらゆる分野のアメリカ人が海兵隊の沖縄からの撤退を要求している。それらの中には以下の人々が含まれる。元太平洋海兵隊司令官(1964-68)ビクター・H・クルーラック中将、トム・コバーン上院議員(共和党、オクラホマ州)、バーニー・フランク下院議員(民主党、マサチューセッツ州)、ロン・ポール下院議員(共和党、テキサス州)。これらの人々は国防予算を削減するために沖縄からの海兵隊撤退を要求している。
今年の5月、上院軍事委員会の委員長カール・レビン上院議員(共和党、ミシガン州)、同委員会古参メンバーのジョン・マケイン上院議員(共和党、アリゾナ州)と上院外交委員会東アジア分科委員会委員長のジム・ウェッブ上院議員(民主党、バージニア州)は、政府の沖縄海兵隊再編計画を「非現実的、実行不可能、費用がかかり過ぎる」と非難した。この3議員は、海兵隊戦闘部隊の拡張・循環を目指す辺野古基地建設計画でなく、危険な普天間基地閉鎖というシンプルな計画を主張した。前国家安全保障担当大統領補佐官のジェームズ・ジョーンズ退役海兵隊提督は3議員提案に賛成し、さらに「海兵隊はどこへでも移動可能である。沖縄海兵隊の本拠地移動は米軍の包括的作戦計画に何ら影響しない」と述べている。1950年代から60年代にかけて沖縄で勤務した退役将兵たちは、米国内の軍事基地の多くが閉鎖されたり統合されたりしたのに、沖縄の米軍基地が変化していないのを見てショックを感じている。
議会は財政赤字を減らすために3,500億ドルの軍事費削減を決定した。財政赤字をもっと減らす手段が見つからなければ、新たに6,000億ドルの軍事費が削減され、アメリカ国内での貴重な雇用も失われるだろう。沖縄に何十億ドルもの金をつぎ込む代わりに海兵隊を帰国させ、国内にアメリカ人の雇用をつくり出そう。
▽戦争でなく経済回復を
海兵隊を帰国させ、国内に雇用をつくる時だ
残念なことに、人々は今も戦い合っており、世界の人々の間に憎悪が存在している。しかしながら、人々の間の対話と相互理解こそ、平和への道をつなぐ唯一の保証である。アメリカは10年もの戦争を戦ったが、戦闘停止の見通しはまだ見えない。アメリカは世界中の友人の支援を失った。日本はアジアにおけるアメリカの最良の友人である。だが普天間のような基地の存在は、日本から見たアメリカのイメージを低下させるだけだ。
普天間のような基地は沖縄に雇用を生み、アメリカの将兵は日本でドルを使う。10年戦争は1兆2,000億ドルの戦費を要し、アメリカの国庫を空にした。第17代米軍統合参謀本部議長のマイク・マレン提督は、合衆国にとって最大の脅威は国家の債務だと述べた。普天間飛行場はアメリカの友人を危険に追い込んでいる。普天間閉鎖はアメリカのマネーを救う。海兵隊を帰国させることは、アメリカに雇用をつくり出す。
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