「9月19日『さようなら原発 5万人集会』の記録と感想」など 地震と原発事故情報 その189
- 2011年 10月 1日
- 交流の広場
- たんぽぽ舎
4つの情報をお知らせします(10月1日)
★1.9月19日「さようなら原発 5万人集会」の記録と感想
「さよなら原発」のさよならは「もう絶対会わない」の「アデュー」
脱原発は、政治的に、「やるか」、「やらないか」の話
★2.劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク月刊紙、80号になりました!
★3.Labor Nowから上映会のお知らせです。
「子どもたちを放射能から守れ 福島のたたかい」
「フクシマ原発震災~被災者の声をたどる旅」
★4.写真家の森泉卓さんの講演会案内
★1.9月19日「さようなら原発 5万人集会」の記録と感想
「さよなら原発」のさよならは「もう絶対会わない」の「アデュー」
脱原発は、政治的に、「やるか」、「やらないか」の話
中村 徹
○9月11日から始まった脱原発アクションウィークの最終日である9月19
日、東京・明治公園で「さようなら原発 5万人集会」が開催された。福島県を
はじめ、全国各地から市民団体、労働組合、個人が多数参加し、会場はたちまち
人で埋め尽くされた。主催者発表による参加人数は6万人である。もちろん主催
者は多めに見積もる傾向があるので、実際に6万人もいたのかどうかはわからな
い。ただ、仮に半数の3万人だったとしても、日本の脱原発(反原発を含め)運
動史上最大規模の集会であったことは間違いない。「毎日jp」では、ヘリコプ
ターから撮影した会場の俯瞰写真を見ることができるが、その人の多さには、あ
らためて圧倒される。
○これだけの多くの人が集ったのは、主催者をはじめ協力団体の努力があったこ
とはもちろんだが、著名人による呼びかけも大きな要因だったのではないだろう
か。TVに出演する、いわゆる有名人たちは、最大スポンサーである電力会社に
気を遣っているのか、もしくは暗黙の掟があるのか、反原発・脱原発を訴えるこ
とはしない。日本国民は、自分の頭で判断せず、他人の意見に左右されやすい人
が多い。特に「権威」に弱い。その性質を巧みに利用し、政治・官僚・学者・マ
スコミ・企業広告などによる情報操作が行われてきた。原発は安全で必要だとい
う意見がTVで流れていると、それが正しいと思ってしまう。そのような状態の
中で、原発廃止を訴えることは、反社会的な存在と思われていたのである。しか
し、3.11以後、情報操作の化けの皮が剥がれてきた。原発の安全神話は崩壊
し、しかも無用の長物であることが判明した。そして、今回、ノーベル賞作家の
大江健三郎氏をはじめとするビッグネームが、呼びかけ人として名前を連ね、か
つてない規模の大集会が行われた。これまで過小報道を続けてきた大手メディア
も、さすがに無視できなくなったのか、多数取材に訪れていた。確実に風向きが
変わっていることを実感させられる。
13:00から、寿によるオープニングライブが始まった。「安里屋ユンタ」など
3曲を熱唱し、早くも会場全体に一体感が生まれた。全国から寄せられた脱原発
ポスターの紹介があり、いよいよ呼びかけ人による発言である。
○鎌田慧氏は、野田首相の国連発言に対し、安全性と信頼性が破綻した原発を再
稼動させることは、「人民への敵対」であると痛烈に批判した。さらに、原発に
言う「さようなら」は、「再見」、「オルボワ―ル」、「また会う日まで」の
「さようなら」ではなく、「もう絶対会わない」、「会いたくない」の「アデ
ュー」であると締めくくった。
大江健三郎氏は、渡辺一夫の文章を引用しつつ、「原発のエネルギーなしで
は、偉大な事業を成し遂げられない」という「ウソ」を暴いた。さらに自民党の
幹事長(石原伸晃)が、「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状
態になるのは心情として分かる」と発言したことに対し、静かに反論を述べた。
市民の抵抗の意志表示を、集団ヒステリー状態という言葉でしか捉えられない石
原伸晃の想像力の欠如、もしくは意図的な悪意は、もっと批判されてしかるべき
問題である。
内橋克人氏は、技術が進み、発展すれば、安全な原発は可能であるという原発
安全神話の新版、改訂版が台頭しつつあることへの注意を促した。例えば、地下
や洞窟内で原子力発電を行う計画などである。そこまでして原発を持ち続けたい
という意図の裏には何があるのか?それは核武装が可能な潜在力を持ち続けよう
という政治的意図である。合意なき国策がこれ以上進むことは許されない。原発
エネルギーではなく、命のエネルギーが輝く国にしようと訴えた。
落合恵子氏は、ジョン・レノン「イマジン」を例にとり、福島のこどもたち
を、 この国のこどもたちの今を、放射性廃棄物の処理能力を持たない人間が原
発を持つ事の罪深さを、「想像してください」と訴えた。容易に核兵器に変わり
得る原発を持つ事は、恒久の平和を約束した憲法を持つ我々は決して許容しては
ならない。反核・反戦・反差別は、全部一つの根っこであることを指摘し、暴力
に対して、非暴力を貫くことを誓った。
澤地久枝氏は、膝の骨折と手術で50日余り入院し、退院後、足腰が萎えてし
まったという。しかし、この集会には、どんなことがあっても立って参加したい
という思いがあり、椅子を断って立ってのスピーチであった。昭和の戦争、原爆
投下の果ての敗戦、核の実験場にされた日本は、核の暴走をコントロールするこ
ともできないのに、原発など持ってはいけなかった。事実を隠蔽し、非科学的
で、事故の責任を取らない電力会社に、国民の命が握られている。希望は市民運
動である。特に、命を生み育む女性たちが役割を果たす時は今だ、と訴えた。
ドイツからのゲスト、フーベルト・ヴァイガー氏は、脱原発は、「できる
か」、「できないか」の話ではない。政治的に、「やるか」、「やらないか」の
話である。電力会社の解体や、再生可能エネルギーの拡大によって、それは可能
である。我々は、民主主義の下で、脱原発を声高く訴えていく時であると力強く
述べた。
○次の発言予定は山本太郎氏であったが、到着が遅れているとのアナウンスがあ
った。しかし、その直後、たった今到着したという山本太郎氏が舞台に駆け上が
ってきた。山本氏は、3.11以後、大きく人生が変わったという。その根源に
あるものは「生きていたい」という思いである。自分だけが「生きていたい」と
いうことではない。世界中のみんなに生きていてもらわないと意味がない。今の
政府は、簡単に人の命を無視できる政府であることが明らかになった。みんなで
生きていくために、高濃度汚染地域からのサテライト疎開、そして原発の一斉停
止を求めて活動を続けている。さらに具体的な行動方法として、市民が、それぞ
れの選挙区の代議士事務所に行ってプレッシャーをかけ、その代議士の立ち位置
をはっきりさせることが重要だと述べた。
山本太郎氏の話には続きがある。この集会の前に、別の会場で行われている反
原発集会に参加していた。そこで、あるテレビ局から密着取材させて欲しいとい
う話があったという。山本氏は、原発問題について正しく報道されているのかと
いう議論をし、デジタルビデオカメラを預かってきたのである。山本氏は、明治
公園を埋め尽くす人々にカメラを向け、撮影しながらシュプレヒコールをあげ
た。
○発言の最後は、福島からの訴えであった。ハイロアクション福島原発40周年
実行委員会の武藤類子氏は、涙声で静かに語った。
福島はとても美しいところです。
東に紺碧の太平洋を望む浜通り。
モモ・梨・リンゴと果物の宝庫の中通り。
猪苗代湖と磐梯山の周りに黄金色の稲穂が垂れる会津平野。
その向こうを、深い山々が縁取っています。
山は青く、水は清らかな、私たちの故郷です。
ここで既に、会場からはすすり泣きが聞こえた。冷静であるはずの報道カメラ
マンですら目に涙を浮かべていた。さらに武藤氏は、3.11以後の福島の残酷
な現実と福島県民の苦しみを切々と語った。
半年という月日の中で、次第に鮮明になってきたことは、
事実は隠されるのだ、
国は国民を守らないのだ、
事故は未だに終わらないのだ、
福島県民は核の実験材料にされるのだ、
莫大な放射能のゴミは残るのだ、
大きな犠牲の上になお原発を推進しようとする勢力があるのだ、
私たちは捨てられたのだ。
何気なく差し込むコンセントの向こう側は、差別と犠牲の上に成り立ってい
る。今、我々がすべきことは何なのか、深く考えさせられるスピーチであった。
○発言が終わり、デモ(主催者表示ではパレード)の出発である。デモは、表参
道を通って代々木公園に向かうAコース、原宿を通って代々木公園に向かうB
コース、千駄ヶ谷を通って新宿に向かうCコースの3コースに分けられている。
ステージでは、ランキン・タクシー、ナラカズヲ、制服向上委員会による送り出
しライブが行われた。ところが、1時間程度のライブが終わっても、会場の人数
はほとんど減っていない。警察によりデモが分断され、出発できない状態が続い
ているという。警察のいつもの手口である。デモを分断することによって、デモ
を小さく見せる、長く待たせることによって意欲を喪失させリタイアさせるなど
の意図があるだろう。
しかし、今回のデモに関しては、警察の策略は逆効果であったと思う。デモが
分断されたことにより、デモ出発からデモ終了までのトータル時間が長くなっ
た。祝日の原宿、表参道という人口密度の高い地域で、絶え間なく長時間のデモ
が行われ、当然、より多くの人の目に触れる結果となったのである。さらに今回
の参加者の多くは、全国からこの日のために集まった人たちである。そういう人
たちは、いくら待たせても意欲を喪失したりはしない。逆に待たせれば待たせる
ほど高揚し、デモ終了後の達成感が得られたと思う。風向きは既に変わっている
のだから、警察はそろそろ無意味な弾圧を止めた方が賢明であろう。
★2.劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク月刊紙、80号になりました!
新たなヒバクシャを次々と生み出していく劣化ウラン兵器の使用が問題になっ
て以来、劣化ウラン兵器禁止とその使用によって犠牲になっているイラクの子供
たちへの医療支援を中心に活動している中で、数少ない月刊ニュースとして発行
しています。
今号では、9月11日の経産省を1800人の人間の鎖で包囲した活動の報告と、
9月25日の第3回原子力空母(米海軍のジョージ・ワシントン)配備撤回を求
める9・25集会の報告を掲載しました。また、6万人もの人たちが結集した
「さよなら原発1000万人アクション」の報告も、巻頭コラムに載せました。
3月11日の地震によって引き起こされたとてつもない原発震災。私たちはも
うこれ以上の放射能汚染を許すことはできませんし、もうこれ以上のヒバクシャ
が出ることを見逃すことはできません。
原発の核燃料製造の過程で生み出される放射性廃棄物である劣化ウラン。それ
を米軍が兵器に転用して、1991年の湾岸戦争を皮切りに、バルカンやコソヴォ紛
争、今世紀に入ってからは、2003年のイラク戦争やアフガン戦争で大量に使用
し、各地で新たなヒバクシャを生み出しています。劣化ウラン兵器と原発は密接
に結びついています。原発を止めることは、劣化ウラン兵器を廃止することに直
接結びつきます。
また、日本各地に、劣化ウランをはじめとして様々な放射性物質が放置されて
いることを、文科省の「2009年度下期放射線管理等報告」から作成したものを掲
載しました。
なお、毎回連載で掲載している、イラクの子どもとなかよくする会の西村陽子
氏の報告もあります。
※劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク月刊紙はたんぽぽ舎で取り扱いしており
ます。ご希望の方はたんぽぽ舎までご連絡下さい。尚、当月刊紙は有料の取り扱
いとなります。
★3.Labor Nowから上映会のお知らせです。
みなさまへ
来る10月1日(土)、福島原発震災をテーマに、2本の作品の上映会をおこな
います。
3.11以後、福島の人々はどのように生き延びてきたのか―。
映像作品をとおして、人々の3か月間をみつめます。
日時:10月1日(土)午後5時~7時
場所:明治大学駿河台校舎研究棟2階第9会議室
リバティータワーの裏の建物です。リバティータワー正面入口から入り、
左手奥を抜けると研究棟1階入口です。
地図:http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html
共催:Labor Now、明治大学労働教育メディア研究センター
上映作品:「子どもたちを放射能から守れ 福島のたたかい」
(37分・制作:湯本雅典)
「フクシマ原発震災~被災者の声をたどる旅」
(35分・制作:LaborNow)
トーク :湯本雅典さん、「Labor Now脱原発ビデオ・プロジェクト」のメンバー
制作者紹介)
湯本雅典・・・1999年教員在職中から撮影を始める。2006年制作の『学校を辞め
ます~51才の僕の選択』が「東京ビデオフェスティバル」などで優秀賞を受賞
し、注目を集める。以後、制作者の独自の視点から作品づくりを続けている。
主な作品・・・『国労バッジは はずせない! 辻井義春の闘い』『ジョニーカム
バック 不適格教師の烙印を押された男』
「Labor Now脱原発ビデオ・プロジェクト」・・・2011年4月、制作の呼びかけで
集まった、平均年齢50才の男女4人の即席チーム。震災から3か月後の6月、会
津、郡山、いわき、で人々に出会い、話を聞いた。
http://nonukesfukushima.blogspot.com/
問い合わせ:labornow(a)jca.apc.org まで[(a)を@に置き換えて下さい]
★4.写真家の森泉卓さんの講演会案内
10月1日(土)14:15~
世田谷・北沢タウンホール
http://kitazawatownhall.jp/map.html
「世界の核汚染と福島」
参加費:500円
03-3418-3341(世田谷区労連)
核実験場周辺のヒバクシャと福島が重なって見えた。
どちらも隠し続けられた内部被曝の脅威。
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[たんぽぽ舎 編集部より]
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