「道徳なき商業家」スティーブ・ジョブズ氏(アップル社創業者)の死
- 2011年 10月 14日
- 交流の広場
今日は青空の中、Vシェープを成した雁の群れが元気に南国に旅立っていくのを目撃しました。毎年のことですが、私は雁の旅立ちを見る度に、何か自分たちだけが寒い国に取り残されてしまったような寂しい気持ちにおそわれます。
10月4日にドイツZDFテレビ番組「Frontal 21」にてアップル下請工場の労働者の実態についてのリポートがありました。ショックでもあり非常に印象に残ったリポートでしたので、紹介させて戴きたいと思いました。下がこの番組へのリンクです。残念ながら日本語字幕はついていません。
http://www.youtube.com/watch?v=kNeXBtUbzKM
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Mr. Jobs, I hope you have found the way to Heaven.
アップル創立者、スティーブ・ジョブズの訃報は世界中のメディアのビッグニュースとなった。
「米国のイノベーターの中で最も偉大な一人」(オバマ大統領)
「アップルは先見性がある独創的な天才を失い、世界は驚嘆すべき人物を失った…..彼の精神は永遠にアップルの基礎となるだろう」 (米アップルホームページ)
「ジョブスは私のヒーローで大師匠で雲の上の神様」(ソフトバンク 孫正義社長)
など、挙げたら限がない、世界中がジョブズ氏の死を悼んでいる。
そんな中で、私は偶々ドイツZDFテレビで放送された「中国にあるアップル下請け工場に働く労働者の実態」を見るチャンスがあった。
それは、こんな内容だった。:
1) 2009年、中国にあるアップルの下請け業者「Wintek」工場で働く137人の労働者に、神経障害や麻痺などの健康被害が起こった。彼らが、iPhoneを磨くために使う溶剤N-ヘキサン(N-Hexan)の有毒性が健康被害の原因だった。一人の女性作業員は、「歩行障害やバスのステップを上るのも大変に困難で、ある日倒れてしまい、ついに病院に行くことにした。それ以来たくさんの病院に行った」、もう一人は「この職業病のために、他の仕事場で仕事を見つけることもできない」と話した。彼らは何度もアップル本社に健康問題を訴える手紙を書いたのだが、アップルからは何の返答も得られなかった。
2) 2010年、中国にあるアップルの下請業者「Foxconn」。当時の「Foxconn」の従業者数、約40万人。その従業員の中から、13人が高層ビルディングから飛び降りて自殺をした。彼らは、搾取されるのみの苛酷な労働環境の中で苦しみ、終にそれに耐えることができなくなったのだった。「一日の労働時間-10時間以上。 一ヶ月間で100時間までの残業時間。一ヶ月の給料-数百ユーロの餓鬼賃金」というのが彼らの労働条件であった。
後に、この自殺事件についてスティーブ・ジョブズ氏はこう語った。:「Foxconnの工場は良いところだ。アメリカの自殺率は10万人に11人という割であるし、それに比べれば13人の自殺は大したことではない」と。それを語るジョブズ氏のクールな表情が印象的だった。
3)ジョブズ氏は、益々増加する失業者問題で悩むアメリカの国内でアップル製品を生産しようとはしなかった。代わりに、彼は中国にある下請け業者で生産することを決断した。理由は:
iPhone 4を中国で生産する場合- iPhone 1台当たりの粗利益は375ドル:
(小売価格:$560)-(材料・部分品:$178)-(組み立て費・労働費:$7)=粗利益:$375
もしiPhoneをアメリカで生産したとしたら – アメリカの労働賃金が中国の労働賃金の10倍であるから、アップルが得るiPhone1台当たりの粗利益は約50%となる。しかし、一台当たり50%の利益はアップルにとっては充分でないという理由で、アップル製品を中国で生産させることになったわけである。
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この報道は、ジョブズ氏のカリスマの蔭に隠された彼の別の人間像を浮き彫りにしていたように思われた。今、私は単純な疑問を抱く。「スティーブ・ジョブズ氏は過大評価されているのではないだろうか?」と。そして、ガンジーのある言葉が私の心の中で響く。それは、「社会的罪の一つは、道徳なき商業」という言葉である。
ジョブズ氏は、ヒューマニティーよりも利益を追求することに価値を見い出したのであろう。
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