欧米の上層階層を再生産する装置=寄宿学校。金正日氏の子供や孫も通う
- 2011年 10月 14日
- 評論・紹介・意見
- エリート階層寄宿学校浅川 修史
連合王国や合衆国でなぜエリート階層の再生産ができるのか。「売り家と唐様で書く三代目」ということわざのある日本人にとって大いなる謎である。
その理由の一つとして挙げられるのが、ボーディング・スクール(寄宿学校)による厳しい鍛錬である。
類型化すると連合王国の貴族や上層階層にとって、「子供は育てるものではなく、見るものだ」という。6歳ころから大学に入る18歳ころまで子供をボーディング・スクールに入れることが多い。
日本人で実際に子供を連合王国のボーディング・スクールに入れた父親に話を聞いたことがある。当時のポンドと円の為替レートは忘れてしまったが、「年間500万円」かかったという。それだけ高額な学費(生活費込み)を払って、子供に出される食事は、「毎日、パンとジャガイモと挽肉が中心」という。日本より気候が厳しい連合王国で、「冬でも暖房に乏しく、毛布1,2枚の寝具のみ」だという。
「子供を高い金を払って、意識的に親の贅沢な生活環境から隔離する」
ことが目的のようだ。肉体的にも精神的にも強靭な人間をつくることを目的に設計されている。第一次世界大戦の塹壕(トレンチ)の連合王国の将校のように過酷な環境でも生き抜ける人間が理想型である。
教育はフランス、ドイツ、日本のいわゆる「ライン型社会」と異なり、知識中心ではなく、判断力、指導力、プレゼンテーション能力を重視する。毎日のスポーツで体を鍛える。24時間同じ場所で生活するので、エリート階層間の人脈形成も揺るぎないものになる。
ボーディング・スクールを卒業して、大人になると、親の贅沢な生活環境に復帰する。タキシード、シャンペン、連れの美女、華やかな社交。同時にパーティで抜け目ない儲け話を聞きわける。
日本で貴族の子弟というと、肉体的にひ弱で軟弱な人物像がすぐ思い浮かぶが、連合王国の貴族の子弟像は真逆である。
さて、世界各国の上層階層が連合王国やスイスなどに存在するボーディング・スクールに子弟を学ばせていることはよく知られている。
わが「金氏朝鮮」の将軍さまも例外ではない。
将軍さまの長男である金正男氏(1971年生まれ)はスイスのボーディング・スクールに留学した経験があるという。おかげで、英語、フランス語が堪能なうえ、ロシア語、中国語、日本語が理解できるという。
金正男氏の発言をテレビなどで聞く限り、「北朝鮮」というイメージにそぐわない国際情勢を理解した物わかりのよい人物に見える。
将軍さまの後継者と目される金正恩氏(1983年生まれ)もスイスに留学した経験があるという。
さて、将軍さまの孫(16歳)も欧州の大学に留学する。
金正日氏の孫、ボスニア国際大学へ
http://japanese.joins.com/article/408/144408.html?servcode=500§code=500
金正日氏の孫、2年間寮生活へ
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00209415.html
金正日氏の子供や孫が、ピョンヤンで贅沢な暮らしを続けていたら、わがままなドラ息子になる確率はかなり高いだろう。
「親の贅沢な生活環境から高い金を払ってでも隔離する」という教育方針は、「金氏朝鮮」でも貫かれているようだ。この点はなかなか立派な判断だと感心する。
将軍さまは子供や孫が、西側社会と日々接し、洗脳されるというリスクをとっている。誘拐などの心配もあっただろう。そのリスクを超える魅力があるに違いない。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0646:111014〕
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