福島第一原発事故から7ヶ月が経過した今、危険な誤った考えが、また浸透しつつあります
- 2011年 10月 18日
- 評論・紹介・意見
- 原発諸留能興
3・11福島第一原発事故から7ヶ月が経過した今、危険な誤った考えが、また浸透しつつあります。原発の新しい「安全神話」が、これほどの甚大な被害と、放射性物質の環境への垂れ流し状態が、今も進行中だというのに・・!
全く「国民全体が狂っている」としか言いようがない。
その典型が「事故に耐え得る安全な原発を作り原発再開を!」の考えが堂々と、今、また復活する兆しを見せている。
それらの主なものは、
(1)硬い岩盤まで掘り下げた地下に原発を作ればよい
(2)外部電源喪失の対処法には(ヨーロッパで既に開発済みの)喪失時には重カで水が自動的に落ちる原発の建設
(3)地震の揺れや津波の高さの想定値を見直し補強や堤防の「かさ上げ」等で原発の安全度を高めれば良い
(4)「低線量の被曝は健康に影響がなく、むしろ免疫力を高めるので体に良い」
等など・・・の、放射線医学専門家と称する無責任な一方的なエセ学者情報がちまたに溢れています・・・
今、また、まことしやかに「垂れ流し」始めつつある、これらの情報の間違いと、その危険性、無責任さを、以下指摘します。
(1)の改築説は、
高額な原発建設費用の更なる上乗せになるだけでなく、回収工事に際し、既存の原発の解体・移動も技術的に全く未知の作業だ。原発改築移動は住宅や工場のそれとは全く異なり、極めて困難かつ長期化する作業になる。仮に岩盤まで掘り下げたとして、美浜原発や敦賀「もんじゅ」のように真下の岩盤自体に活断層が存在する原発は、そっくり移動させる以外にないだろう。原発の解体・移動・再建築には膨大な費用がかかる。「原発を廃止すれば発電コストが上がり料金も上がるから」は原発推進派の脅しだ。「安全な原発」は水力や火力発電より単価コスト(1キロワット当たりの費用)が高くなるのは当たり前のこと。今まで不当に安価に見積もられてきただけのこと。
(2)の緊急時水力落下装置も、
人の作った装置である限り、事故を完全に防ぎきれない。
(3)の想定値見直しと補強による安全度向上説は、
今までも原発の危険性が指摘されるたびに指摘されてきた事。それによって安全が確保できるなら、今回の福島原発事故は事前に回避出来たはずだ。設計段階でいくら安全基準値を高めても、施工工事段階で”ド素人”が施工する現状を改めない想定値見直しと補強は、空理空論、絵に描いた餅でしかないことは、今回の福島原発事故も含め、過去に起こった何百回もの原発事故を回避できなかったことからも明らかなこと。
以上(1)~(3)の各説に共通する間違いは、アクシデント発生想定値の見直しや部分的補強施工等の「小手先の問題点」がたとえ解消されたとしても、さらにそれ以外にも、前回お知らせした「元原発配管一級工事士平井憲夫氏の生々しい現場経験者の証言」で明快に指摘されている、様々な事故発生原因が全く問題にされていないという点である。
以上の技術上及びコスト上の諸問題が、仮に、全てクリアされ、安全運転で再稼働したとしても、その後に数万年、数百間年に渡って子々孫々にまで高濃度放射性物質を積み残し、地球的規模で環境汚染・破壊し続ける、放射性廃棄物の処理方法の問題もある。
最後の、(4)の説は、少しこいみった説明を要する。
この(4)「低線量の被曝は健康に影響がない」説の代表者が、近藤宗平(大阪大学名誉教授)氏だ。この近藤氏の弟子筋が、事故後福島に乗り込み放射線健康リスクアドバイザーと称する福島医大理事長付特命教授山下俊一氏だ。山下氏は「年間10ミリシーベルト(mSv)以下の被曝は健簾に問題はない」「放射能をむやみに恐れるストレスのほうが問題」等、一方的な説を、あたかも100%完全な学説であるかのような、”素人こけおどし!の「御高説」を「一方的」「つまみ喰い的」に垂れ流し続けている。
この近藤宗平氏や山下俊一氏らの主張を、近藤宗平著『人はなぜ放射線に弱いか』を参考に、要約すれば、
(a)分裂期の細胞のDNAを放射線は確かに破壊し、細胞のガン化、奇形化の可能性は高まるが、それら異常細胞、変形細胞を排除する仕組み(免疫機能)の働きによって、修復細胞数が、破壊細胞数を上回る限り、放射線を浴びても「安全は保たれる」とする、いわゆる、「しきい値あり」説や「ホルミシス」説の蒸し返し説。
(b)広島やチェルノブイリの被爆者の「ガン発生者数」の数値の中には、放射線によるガン以外にも、熱線や、爆風や、戦後の食糧難が原因で早死にした人の「数」が考慮されず「一把ひとからげ」の数値だから、放射線自体による死亡者数はもっと少ない筈とする説。
(c)地球上の自然放射線の高い地域と比べても平均寿命に差が無いこと
(d)モルモットに始め低線量γ線を照射した後で、高線量γ線を照射しても、始めに低線量γ線を照射したモルモットのグループの生存率が高かったという実験結果
・・・などを根拠として、低線量被曝量は人体に影響が無いか、あるとしても、無視し得る程の極めて微量の影響しかない、との「御高説」である。
以上、この(4)説を展開している近藤宗平氏や山下俊一氏の説は、一方的な見解でしかないこと、両氏に代表される「低線量被曝量無害説」には、全く正反対の学説も数多く報告、提起されている事を指摘しておく。個別の学説の疫学的、細胞免疫学的な真偽については専門的になるので省略する。
この「低線量被曝量問題」に関心のある方の為に、参考として
○ECRR(欧州放射線リスク委員会)事務局長クリス・バズビー博士の「バズビー博士「日本人への提言」(原タイトル:内部被曝に警鐘~クリス・バズビー博士:2011年7月21日(成田空港)インタビュー)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1190この「全文文字起し」は、[2011(H23)年8月8日(月)PM18:00送信の私(諸留)のお知らせでも既報。
○肥田俊太郎・鎌仲ひとみ著『内部被曝の脅威』ちくま新書
○ラルフ・グロイブ/アーネスト・スターングラス著/肥田俊太郎・竹野内真理訳『人間と環境への低レベル放射能の脅威』あけび書房
を挙げておく。
(4)説の近藤宗平氏や山下俊一氏の説の論点の骨子は、内部被曝の影響を故意に無視するか、あるいは、「せいぜい、外部被曝と同じもの」、と切り捨てている点だ。
もともと、内部被曝問題が注目され始めた「きっかけ」は、1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争以降の、つい最近のことである。米軍の劣化ウラン弾(DU弾)によるイラクやアフガニスタン民間人や米軍将兵の健康被害発生が問題化してからである。
ちなみに、現在政府や自治体、そして国民大衆もマスコミなどで「刷り込まされて」「盲信させられて」いる放射線暫定安全基準値それ自体も、日本政府が決めたものではなく国際放射線防護委員会(ICRP)の基準値を、そのまま右から左へと日本政府が「横流し」させ「単純機会的に適用させた」にすぎない。
この国際放射線防護委員会(ICRP)基準値も、1933年にマンハッタン計画開始前夜に制定された「始めに原爆開発ありき」の不動の大前提に基づいて制定された「一定度の被曝やむなし」を前提とした「被曝やむなし値」であって、けっして「人体安全を最優先した値」などではなかったことを、深く銘記すべきだ!
ミーシャー(スイス人)によってDNA(デオキシリボ核酸)が発見されたのは1871年だが、そのDNAにニ重らせん構造があることの確認と、それがとてつもなく膨大な複雑なものであり、DNAは遺伝子によって物理的物質を形作る生命体の最も重要な分子であると提示されたのは1953年、ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックの提示が最初であった。
今私たちが問題にしている、国際放射線防護委員会(ICRP)基準値が制定された当初もその後の改訂を経た段階でも、遺伝子によって物理的物質を形作る生命体の最も重要な分子である、まさにDNAそのものを、放射線は「直撃」し「ダメージを与える」ということが解ったのは、国際放射線防護委員会(ICRP)基準値制定のずっと後であったことを、はっきり頭に叩き込んでおくべきである。
結論から言えば、国際放射線防護委員会(ICRP)の安全基準値などは最初からDNAへの影響云々など、一切念頭に無しに制定されたシロモノなのだ!
こんな国際放射線防護委員会(ICRP)の基準値など信用するほうが「愚か者」か、「無知のドシロウト」と言うしか他あるまい!
あるいは、原爆投下翌日以降に、ヒロシマ、ナガサキの爆心地に立ち入って救援活動や肉親探しをした人が「原爆症」として、ようやく認定されたのもつい最近のことであるのと思い重ねてみても、
国際放射線防護委員会(ICRP)基準値が低線量被曝量被曝など、考慮してきていなかったかが歴然としている。
特に、内部被曝に際しての「ペトカウ効果」(高線量放射線の反復放射よりも、低線量放射線の長時間、放射によって生じる活性酸素が細胞膜を破壊し、細胞膜中の免疫メカニズムも破壊されることでガン以外にも様々な疾病発生の原因となるとの説)を、近藤宗平氏や山下俊一氏は完全に黙殺している。
今年(2011年度)のノーベル生理学医学賞者の一人であるロックフェラー大のラルフ・スタインマン教授の「生体にとっての異物を感知する仕組み」の研究でも、この異物の見張り番の「樹状細胞」が働く場所が「細胞膜」にあることを突き止められた。まさにこの「免疫の活性化機構」の舞台ともいえる「細胞膜」が、放射線被曝によって作られる活性酸素(フリー:ラジカル)によって破壊されるというのが「ペトカウ効果」である。スターングラスの「ペトカウ効果」説の正しさを、更に背後から支えたのが、今年のノーベル生理学医学賞者ラルフ・スタインマン教授の「免疫学研究」であった!
【参考資料】
ラルフ・グロイブ/アーネスト・スターングラス著/肥田俊太郎・竹野内真理訳『人間と環境への低レベル放射能の脅威』あけび書房、『内部被曝の脅威』肥田舜太郎/鎌伸ひとみ著 ちくま新書
これまでの外部被曝量だけでは説明がつかなかった、不整脈・腎機能疾患・知能発育低下・胃腸病などなど‥‥約40種以上もの、様々な疾患の原因となる臨床例が報告されている。
「低線量被曝」論の是非、真偽については、「細胞生理学」「免疫学」の専門分野であるので、素人の我々一般市民大衆には、いずれが正しいか、否かは極めて解りづらい。
しかし、専門家の間ですら見解が大きく食い違う問題である以上、シロとクロの中間の、いわゆる「グレーゾーン」の領域の問題は、100%正しい(あるいは100%間違い)の結論が出るまでは、「危険である」と認識するのが、安全論上からも基本的、常識的であることは、素人にも解りきった、自明のこと。
今後、福島を中心とする福島原発事故被爆者も含む研究調査が進めば、ある程度の免疫病理学的判断が固まるまでは、それまでに何年、何十年要するか解らないが、原発は止め、低線量被曝量も含め、放射線被曝には慎重な対応をとるのが正しい判断である。
「低線量放射線は安全」などの、「もっともらしい」、「素人こけおどし」の、「知ったかぶり」、「エセ御用学者の御高説」が、またぞろ一人歩きし始めようとしている。NPOを自称する、胡散臭い「有機農業支援団体」が「フクシマの被災農家を支援しよう!」と、さも知ったかぶりして、「安全でない」か「安全か」さえも定かでないフクシマ産農産物の販売と、その積極的摂取運動を展開させている!
今現在も、大気中にも、地下の水脈にも、土壌にも、あらゆる環境中へ高濃度の放射性物質の「垂れ流し状態」が続いているにも関わらず、「低濃度の放射性物質に神経を過敏にさせてその危険を騒ぎ立てる貴方(諸留)は、小を見て大を問題にしない視野狭窄な者、エゴイストだ!」とまで言い切っている。こうした自称NPO有機農業支援者が、関西を始め全国各地で、公然と汚染農産物を販売している・・!驚いたことに、そんなNPO有機農業支援者が反原発支持者なのだから・・・全くもって開いた口が塞がらない。狂っているのは東電、政府、自治体、学者だけではない。私たち市民一人一位までもが、骨の髄まで狂っているとしか言いようがない。放射能汚染で脳神経細胞まで汚染されてしまっているのだろうか?・・・と、疑いたくなる!
東電はもとより、政府や自治体、ひいては上述の様な愚かなNPO有機農業民間団体も含め、かれらの判断基準となっている、放射線量の安全基準値の根拠としている放射線計測器ひとつに関しても、実態はお寒い状態である。
一例を挙げよう。
LB2045 ガンマスペクトルメーター(ドイツ製ベルトルード社 約300万円)でも、ヨウ素とセシウムは分けて検出可能でも、セシウム134とセシウム137は分けられない。
日本政府や自治体を始め民間で使用されている計測器の場合は、日本政府が勝手に設定した暫定基準値がセシウムは500ベクレル(Bq)/Kg。このLB2045 ガンマスペクトルメーターではセシウム137の子どものドイツの基準値4ベクレル(Bq)/Kgと大人のドイツの基準値8ベクレル(Bq)/Kgまで対応できるように、検出限界値は1ベクレル(Bq)/Kgまで計測可能。しかるにわが国政府や自治体を始め民間で使用されている計測器の場合は、そこまでの精度は無く、お粗末な場合は、500ベクレル(Bq)/Kg未満の場合だと、たとえ499ベクレル(Bq)/Kgの放射線量であっても計測不能(NDと表示される)としか表示されない。
更に、このドイツ製のLB2045 ガンマスペクトルメーターさえ、測定可能な放射線核種はヨウ素、セシウム以外でも約50種類以内まで。原子炉から出る放射性物質の核種約120種類の6割以上が計測されない。更に、毎年最低1回必要な「ゼロ点調整」には、同じ新製品購入額の約半額相当のメンテナンス料か要る、シロモノ!
アメリカ製やフランス製の放射線検出器では、初めから計測不可能な核種があることは、業界では周知のこと。沖縄の飛島に駐留米軍が演習と称して劣化ウラン弾を1300発程投下した後、放射線計測器で測定しても、放射線核種のウランは全く計測されなかったという。計測されないのは当たり前。最初からウランなどの核種は計測できない計測器を持ち込んでいたからである。放射能対策には万全であるはずの最新精鋭米軍部隊ですら、この程度である。いわんや民間や自治体の計測機など、どの程度の信頼性があるというのか。肌寒い思いである。
こんな高額で当てにならない放射線計測器を使っての安全基準値、それも、しかも「暫定」の安全基準値の放射線測定結果を、あなたは「鵜呑みしてる(させられている)」だけではないの?
ちなみに、この「暫定」という言葉で「限定」させてあるところも、クセもの!
(1)福島第一原発事故発生という緊急非常時に際して「とりあえず設定はした」が、事態が収束したと思われる頃に「値を小さく、より厳密に修正する可能性がある」・・・という含みを持たせた「やむを得ない緊急非常時の値」という意味
(2)今後事態が更に悪化し、第2、第3の大規模な事故が常時、一層の高濃度の放射性物質が飛散するような場合が生じた場合でも、現行の200ミリシーベルト(mSv)の「値を更に大きく。より緩い(より危険な高濃度の)値に修正する可能性もある」・・・との含みも待たせた意味
(3)元々、わが国(日本)では、海外からの輸入農産物以外には、全く放射能汚染安全基準値の概念も数値も存在しなかったので、事故発生に直面し、急遽あわてて、ドロナワ式に設定した「にわかづくりの値」・・との意味も含ませている。
ただそれだけの値、安全基準値などではなく、「まず初めに原発ありき・・」を不動の大前提とした「我慢強要値」・・・それが今の放射能の「暫定安全基準値」なのです!
この点は、くれぐれも、勘違いしないで欲しいものだ。
こうした「お粗末なシロモノ」の放射線計測器、「暫定安全基準値」でしかないことからも、前述の山下某教授といった連中の言うことの間違い、欺瞞性、インチキ性は明らかにされた筈!
9月2日に正式に発足した野田政権は、これだけ「反原発・脱原発」の動きが高まっている中、現在停止中の原発を稼動させよう、原発輪出も推進しようとしている。ベトナムへの原発輸出を野田政権は既に決定した。またヨルダンへの輸出も、現在は、中断しているが、近々再開され輸出されるであろう。
日本の原子炉は、既に何度も指摘したように、元来原子力潜水艦搭載用の原子炉(加圧型にしろ、沸騰水型にしろ)であるから、大量の冷却水を必要とする。
ヨルダンのような、ただでさえ、水不足の地域に、大量の水を要する。今回事故を起こし、現在、停止中の福島第一原発の1・2・3号機だけでさえ「1時間あたり16トン」(1機当たり約5トン強)もの大量の水を要するシロモノ。そんな怪物のようにガバガバ水を飲み込み、垂れ流す原発が、水資源に苦しむヨルダンに売り込もうとすること自体、狂気の沙汰!アラブ民衆にまで放射線汚染商品を売り込もうとする、日本の「原子力ムラ」「原子力利権漁りゴロツキ巨大企業」の横暴を阻止しよう!
民主党政権は、原子力推進政策を放棄しないどころか、一層押し進めることが明らかになった。「原発は持たない」「作らない」「輸出もしない」の、安全で健康で信頼できる社会が実現するまで闘おう!
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0656:111018〕
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