「豊田直巳さんの10月後期の講演・写真展・トークの予定」など 地震と原発事故情報 その206
- 2011年 10月 20日
- 交流の広場
- たんぽぽ舎
3つの情報をお知らせします(10月20日)
◇ 日本の脱原発度は82%。(2011年10月現在)
日本の原発・全54基のうち、現在44基が地震故障や
定期検査で(82%)が停止、稼働しているのは10基(18%)
のみ。今後、再稼働を防げれば、2012年春頃には全原発
停止が実現する。電気はだいじょうぶ。
★1.原発放射能-除染の限界 避難する権利
被曝を避けることが重要 最大限尊重すべき人権
原発事故の本質は放射性物質(死の灰)の拡散=人体への危険性
山崎久隆
★2.豊田直巳さんの10月後期の講演・写真展・トークの予定
★3.高線量地点あちこち、避難区域指定 進まない福島市
除染優先は納得できぬ 子ども救う選択肢を
渡利地区説明会 憤る住民、東電の補償逃れ心配―汚染進行しているところも
★1.原発放射能-除染の限界 避難する権利
被曝を避けることが重要 最大限尊重すべき人権
原発事故の本質は放射性物質(死の灰)の拡散=人体への危険性
山崎久隆
○ 生命維持は最も基本的な人権であり、その他の権利の何よりも尊重すべき権利だから、
命の安全を守ることを目的とした放射線防護の考え方を基本としなければなりません。
他と代替が可能な、または他と代替すべき経済的損失と天秤にかけることはしてはならな
いことです。
避難する権利、移住する手段の提供、そのために必要な経済的支援は、条件無しで認める
べきなのです。その上での原状回復のための措置を考えることになります。その順番は逆
では無いのです。
個人の生命は憲法13条、25条に認められた権利であり、命への被害の発生は最優先で
防止されなければなりません。
放射性物質による人体への影響は、それがどれだけ少ない量であってもゼロでは無いとの
考え方から、「実行可能な限り低く」抑えるようにとICRP国際放射線防護委員会の勧告
でも指摘されています。
原子力施設の危険性は、突き詰めればこの放射性物質が拡散されることにより及ぼされる
人体への危険性ですから、行政庁が設置を許可した原子力施設に関して、そこから放出され
る放射性物質による健康影響をゼロに抑える義務が当然にしてあります。この大原則は、い
ささかもないがしろにしてはならないのです。
○ 除染とは
福島原発震災により放出された放射性物質は、おおむね岩手県南部から宮城県、福島県、茨
城県、群馬県、栃木県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県を汚染し、さらに新潟県、山形
県、秋田県、長野県、静岡県の一部にもその爪痕を残しています。
この中でも汚染がひどいのは福島県浜通りと中通りですが、特に30キロ圏外では飯館村、
伊達市、福島市の一部を含む原発から北西方向の強力な放射能の流れが認められています。
これらの地域は、チェルノブイリ原発事故の際には旧ソ連政府により強制移住させられた地
域に相当する放射能が残留しているところもあり、本来ならば退避をすべき地域に相当しま
すが、国が決めた暫定的避難線量、年間で20ミリシーベルトに達しないとして、ほとんど避
難地域から外されています。
そこで最近進められているのが汚染を取り除いて被曝線量を引き下げようという「除染」
です。
現在進められている除染は、大きく二通りに分けられます。
まず、平均が毎時1マイクロシーベルトないしは年間1ミリシーベルトを下回る地域にお
ける、ホットスポットと呼ばれる比較的汚染の強い場所の除染活動です。これはほとんど東
日本全域にわたって存在する可能性のあるもので、特に雨水が溜まる場所、塵などが吹き溜
まる場所、普段から汚染物やゴミなどが溜まっている場所、雨樋、路地裏、屋根の下、高速
道路や幹線道路沿いなどが相当します。
このような汚染の除去は積極的に進めるべきで、特に子どもたちが遊ぶ公園や学校などの
敷地については詳細な測定を行って除染すべきです。
茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、群馬、栃木、新潟、山形、秋田、そして岩手などの都
市部にはこういう地域が多いと思われます。宮城については一部に福島県内と同程度の高い
地域があることと山林がかなり汚染されていることで、福島県と状況はさして変わらない恐
れがありますので、別に考える必要があると思われます。
もう一つの除染はまさしく「町ぐるみ除染」とも言うべき様相を呈している福島県内各地
で行われる除染です。除染にかかる費用の大半はおそらくここに投入されることになるで
しょう。
しかしながら、比較的小規模のホットスポットと異なり、こちらの除染は極めて困難な場
合が多いのです。
○ 大規模除染の効果
大量の放射性物質が降り注いだため、地上のみならず家々の屋根はもとより、田畑山林、
空き地や公共施設など「面」で汚染されている地域が大規模除染の対象になります。ほとん
どの場合、年間被曝線量が1~20ミリシーベルトに達し、時間線量も数マイクロシーベルト
になります。しかもこの汚染地は、簡単な除染では下がりません。
特に深刻なのは森に囲まれた住宅地や農地です。
除染により放射線量が下がったとしても、数日ないし数ヶ月で元と変わらぬ線量に戻って
しまったり、場合によってはさらに高くなることさえあります。多くは森に降り注いだ放射
性物質が木々の枝葉や地上の腐葉土に蓄積し、時間と共に流れ出してくると考えられます。
山に続く農地だけで無く、広い農場なども除染は困難です。また、農業用水は山からの水に
依存しますから、山岳地帯が汚染されていれば川の水に含まれる土壌成分はずっと汚染が続
きます。そういうことを念頭に置いて行わなければ、目先の放射性物質を取り除くだけでは
効果は上がらないことになります。
屋根に手を付けないまま庭や玄関先の除染をしても、しばらくして屋根からの汚染で元に
戻るように、山をそのままにしたり、河川の水源をそのままにしては下流域の除染はあまり
効果が無いのです。
ならば、どうすれば良いのか。除染と避難は対立させてはなりません。
○ 避難すべきは避難する
除染をしている限りは避難できない。そんな決まりはありません。少なくても年間被曝線
量が1mSvを超える恐れのある地域からは、子どもたちは避難をすべきですし、避難をした
後を除染するようにすれば、二次被曝を避けることも出来ます。
屋根などの除染に高圧放水を行えば、水と共に放射性物質も飛び散る恐れがあります。そ
の真下を子どもたちが歩いているなどと言うことはあってはならないわけですから、除染を
しながら避難もすることが必要です。また、一定以上の汚染が残ってしまう山林や農地は、
除染そのもので被曝を多くしてしまうリスクを考えれば、しばらくは放置するほかないと思
われます。そのような見極めをしながら、被爆を避けるための除染をすべきであり、闇雲で
無理な除染行動は、かえって環境や健康に悪影響を与えかねないと思われます。
○ まず積極的に調査すべき
いったいどれだけの汚染が、何処にあるのでしょうか。
最近になってようやく広域の汚染地図が文部科学省から公表されましたが、県ごとに行う
航空調査のために県境で切れていたり、ホットスポットは見えなかったりと、かなり荒っぽ
いものです。
世田谷区で見つかったホットスポットは今回の原発震災と直接は関係ありませんでしたが、
高濃度のラジウム226(*)という放射性物質が長年放置されていたためでした。これを見つ
けることが出来たのも市民の綿密な調査のおかげです。
被曝を避けるにはまず調べることが大事だということが明らかになった事例です。
詳細で綿密な調査をして、避難すべき、または接近を禁止すべき汚染が無いかを見極めるこ
とが重要です。その後、どこをどう除染すれば被爆が避けられるか、または除染は困難と判断
するかを考える必要があります。
全てを除染するなどということはできませんし、するべきでもありません。除染作業で出る
膨大な汚染物の二次汚染も問題になります。
最大の目的は被曝を避けることだということを、再度確認してほしいと思います。
(*)ラジウム226 キュリー夫妻が発見した放射性物質。ウラン238が崩壊して出来る娘
核種の一つ。半減期1600年でα線とγ線を出してラドン222になる。
世田谷のラジウムは密封されていたとみられ、気体であるラドン222などの系列核種
は拡散しなかったと思われる。強力な発がん性を持ち、現在ではほとんど使われないが以
前は夜光時計の文字盤や医療用線源として使われていた。今回見つかったのはかなり古く、
塗装用のものとみられる。
★2.豊田直巳さんの10月後期の講演・写真展・トークの予定
10月21日(金)19時~ 東京・明大前 トーク・写真展
10月22日(土)13時半~東京・田町 講演・写真展
10月22日(土)17時~ 東京・駒場東大前 講演
10月23日(日)10時半~神戸市・甲南大学 講演・写真展
10月27日(木)19時~ 東京・明大前 トーク・写真展
10月29日(土)14時半~東京・御茶ノ水 講演
以下、詳細(本日は、10/22まで)
■明日10月21日(金)にJVJA写真展「311 メルトダウン」のオープニング
パーティー(参加無料)JVJAメンバーのリレートーク
10月21日(金) 19:00 – 20:30 場所 キッドアイラックアートホール5階
自由参加、一般の方も参加できます。予約の必要はありません。
http://www.jvja.net/
■10月22日「土」13時30分より
港区男女平等参画センター・リーブラ(JR田町駅東口徒歩3分)3階学習室A
写真展 10月16日(日)から10月30日(日)3階廊下
劣化ウラン廃絶みなとネットワーク 宮口高枝
miyaguchi704@xqb.biglobe.ne.jp
■2011年10月22日(土)17:00~19:30(16:30開場)
※終了後、懇親会を開きたいと思います。
【ゲスト】豊田直巳さん(フォトジャーナリスト、JVJA会員)
【会 場】駒場国際交流会館多目的ホール
アクセス:京王電鉄 井の頭線 「駒場東大前」駅下車。西口より徒歩約5分。
地図:http://www2.jasso.go.jp/s_kanto/kantomap.html
【参加費】学生:500円 一般:1,000円
【主 催】NPO法人セイピースプロジェクト
http://blog.goo.ne.jp/saypeace/e/cb93e7cc729a56df8f221162d03279df
★3.高線量地点あちこち、避難区域指定 進まない福島市
除染優先は納得できぬ 子ども救う選択肢を
渡利地区説明会 憤る住民、東電の補償逃れ心配―
汚染進行しているところも
○ 福島第一原発の事故は、県庁所在地で住宅が密集する福島市内にも高レベルの放射能
汚染をもたらした。だが国は「除染の結果を待ってほしい」と繰り返すばかりで避難区域の
指定に積極的な姿勢を見せない。「補償の見通しがなければ逃げることもできない」「人の
命より経済活動を優先するのか」。八日、市内の渡利地区で開かれた住民説明会では、深夜
まで怒りと落胆の声が渦巻いた。
○ 五時間続いた。八日午後七時に始まった福島市渡利地区の特定避難勧奨地点に関する住
民説明会。体育館いっぱいに詰めかけた四百人以上の住民が、ひっきりなしに手をあげてい
た。地区の高線量を住民たちが知らされたのは四月下旬。その後、子どもたちは屋外活動を
制限され、大人たちは町内の除染活動に黙って協力してきた。にもかかわらず、「特定勧奨
地点の指定はなし」の説明に、住民たちは「納得できない」と口をそろえた。
○ 特定避難勧奨地点は被ばく線量が年間二○ミリシーベルトを超えそうなホットスポット
を世帯単位で指定し、避難を支援する制度。渡利地区では八月下旬に指定に向けた詳細調査
が始まった。地区には六千七百世帯(計一万六千五百人)が住むが、国は事前調査で線量が
高かった千三十八世帯のみを調査対象とした。福島市が目安とする三・〇マイクロシーベル
ト以上の家が市内に二軒あったが、国は二軒には避難の意向がないとして、「避難ではなく
除染を優先する」と指定を見送った。指定を受ければ、避難先の紹介などの行政支援が受け
られる。東電から避難費用などの賠償もある。六月以降、調査が先行している南相馬市や伊
達市、川内村では計二百四十五世帯が指定された。説明会では「地域全部を調べてほしい。
線量の高いところはいっぱいある」「南相馬市や伊達市では毎時三・〇マイクロシーベルト
以下でも指定されている。なぜ福島市はダメなのか」とただす声が相次いだ。福島市の冨田
光政策推進部長は「指定は国がするもので、市が口を差し挟むことではない」現地対策本部
の佐藤暁氏は「年間二○ミリシーベルトであれば住むことにまずは問題はないが、指定しな
いと決めたわけではない。我慢しろと言うわけではないが、まずは線量を下げるために除染
させてほしい」と繰り返した。あいまいな回答は、住民たちの不安をますますあおる。町内
会に配布された線量計などで、生活環境のすみずみまで自らの手で調べている住民たちから
は「ばかにしているのか」と怒りの声が続いた。「一○マイクロシーベルト以上で計器が振
り切れるポイントがあちこちにある」という声が相次いだ。たまりかねたように手をあげた
高齢女性も「おたくの放射能は何マイクロですか、って挨拶してるんですよ。これまで生き
ててこんなの聞いたことがない」と嘆く。「おとなしい人ばかりで何も言わないと思って、
これじゃ弱い者いじめですよ」「九州電力の社員が線量を測っているのを見た。電力(会社)
側のデータではないか」と調査方法への不信感をあらわにする住民も。(中略)母親たちは、
子どもや妊婦がいる世帯に配慮がないことに失望した。「だれが子どもに二〇ミリシーベル
トを浴びさせていいと決めたのか」と憤るのは、子どもたちを放射能から守る福島ネットワ
ーク代表で、渡利地区在住の中手聖一さん。「国に出て行けと言われたくはない。私たちに
は住む権利がある。一方で、子どもが小さいので避難させてくれ、という家族もいる。どっ
ちが先ではなく、両方を後押ししてほしい」と訴えた。なぜ福島市内に「避難区域」が認め
られないのか。参加していた男性は「都市部から子育て世帯がいなくなったら産業が立ちゆ
かず、税収も落ち込む。住民の安全よりも経済活動を優先しているせいだ」と憤る。「被ば
くデータを集める人体実験をしている」とまで言い切る父母も少なくない。事前に賠償申請
の資料を取り寄せていた住民男性(四○)は、十月上旬に東電から「渡利地区は特定避難勧
奨地点にならないので、申請資料は破棄してください」と言われた例を披歴した。
(2011.10.10東京新聞『こちら特報部』より抜粋)
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