英米が注視するオリンパスの不透明なM&A手数料。財務データには優良企業イメージと乖離する数字。
- 2011年 10月 26日
- 時代をみる
- オリンパス浅川 修史財務
内視鏡やカメラで知られるオリンパスが揺れている。ブリテン人社長の解任と不透明な手数料支払いが話題になっている。内情を知るブリテン人前社長の内部告発が勢いを増している。連合王国や合衆国の捜査機関がオリンパスについて関心を示すなど、異常な展開になっている。
オリンパスの株価は前社長の解任後、短期間で半値になっている。
オリンパスの疑惑については、「ゲンダイ・ネット」の記事が詳しい。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/23598
ロイター報道 オリンパス問題で真相求める動き拡大、FBIも資金実態を調査
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23777420111025
ケンミレ株価チャート オリンパス
http://www.miller.co.jp/chart.cgi?code=7733&div=T
上記の株価チャートを見ると、短期間で半値になったのに、途中で買い戻しの動きもなく、一本調子で低下している。このことは海外の投資家が事態を深刻にとらえていることを示唆する。
未確認情報ながら、不透明な巨額の手数料の一部が、日本のマフィアに渡ったのではないか、という認識も海外の捜査機関にあるようだ。
オリンパスの不祥事についての突っ込んだ日本の「記者クラブメディア」の報道はほとんどない。したがって、世間であまり意識されていない。
こうした不祥事にはすぐ関心を寄せる東京地検特捜部や、監督官庁の金融庁の動きも鈍い。しかし、米英やロイターの報道を見ると、事態はかなり発展する可能性も高い。
海外の報道に押される形で、日本の政治家も重い腰を上げた。
オリンパスの不透明なM&A、金融庁と監視委に調査要請=民主政調副会長
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23801520111025
筆者はオリンパスの不祥事について、ネットに公開された以上の情報や知見を持っていない。
筆者はオリンパスについては、かつての名機オリンパスペン以来、好意的な印象を持っている。世界的に高いシェアを持つ内視鏡で稼いでいる優良会社という、社会的に共有されているイメージを持っている。
今回の「不祥事」を契機にオリンパスの2011年3月期決算短信を見た。
ここでいくつかの財務データを見て、世間で共有されている印象と違うものを知った。
オリンパス2011年3月期決算短信
http://www.olympus.co.jp/jp/corc/ir/event/brief/pdf/brief143PB_2.pdf
財務データがちぐはぐな印象だ。これまでしっかり営業利益を計上した企業の割には自己資本比率が15%しかない。有利子負債も5400億円程度と大きい。
この期は円高により、為替換算調整勘定が自己資本を押し下げている。しかし、この要因を除いても自己資本比率は低い。
オリンパスの売り上げは8471億円。対して総資産(資産と負債の合計)は1兆0635億円もある。この比率は、総資産回転率が低く、すなわち経営の効率が低いことを意味する。保有している資産に何らかの瑕疵がある可能性がある。こんかいの不祥事と関連があるだろう。
総資産回転率が低く、有利子負債が多い。だめ企業に多く見られる財務データである。優良企業オリンパスのイメージと乖離している。
経営者にM&A手数料で何らかの利益を得るという意図がなければ、今回の不祥事は海外の不良資産を隠す「飛ばし」にからむように見える。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1681:111026〕
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