地元の市民フェスタで講演します ~テーマは市の財政~
- 2011年 11月 13日
- 催し物案内
- 醍醐聡
主催者の熱意に押されて
この11月に佐倉市で開催される「佐倉市民活動フェスタ2011」に佐倉向日葵会が応募され、佐倉市の財政について講演を企画されたとのこと。10月上旬に会の代表のUさんから講師を引き受けてもらえないかという依頼を受けた。
Uさんとは今年の5月に佐倉市の市民グループが開いた市議会議員と市民の懇談会の場で知り合った。その時伺った会の名前は「佐倉市の財政を考える会」だった。懇談会の中で周りの年配の市民や議員の発言をものともせず、かつ、市の最新の予算をよく調べた上で堂々と発言されたUさんの姿が印象的だった。
その後、事情があって会の名前を「佐倉向日葵会」と変えられたそうだが、中味は市の財政を調べて議論をすることに変わりはないとのこと。
国と地方の公会計は私の研究テーマでもあったので、地元の財政を勉強するよい機会にもなればと思い、引き受けた。
それからは主催者が立派なポスターを作られ、Uさんのお知り合いの市民の方々の協力も得て熱心に広報していただいている。市議会議員も幾人か参加の予定とのこと。こうなると、私もうかうかしていられなくなり、目下、資料づくりに駆り立てられている。
佐倉市市民フェスタ2011参加企画 第2回佐倉向日葵会主催事業
佐倉市の町づくりを考えてみよう! 私たちの町の財政:基礎から現状分析まで(クリックしていただくとポスター原文が開きます。)
日時 2011年11月20日(日)11時30分~12時20分
会場 佐倉市立美術館4階ホール
講師 醍醐 聰
問い合わせ 080-4174-3053
sakurahimawarikai@yahoo.co.jp
国民健康保険(市国保)を中心に
~今日の日本の社会保障の不安の縮図として~
ただ、講演の時間が40分程度と限られている。また、聴きに来ていただく方々の中で市の財政に馴染んだ方はさほど多くないようで主催者からは入門コースのつもりでお願いしたいと言われている。
そこで、思案の末、
①人口規模が佐倉市と近い千葉県内の他市(具体的には、野田市、習志野市、流山市、八千代市、浦安市)との比較で佐倉市の財政の現状を説明する。ただし、Uさんによると、成田市から引っ越してくる人が少なくないので、成田市も比較の対象に入れてほしいという要望があったので了解した。
②限られた時間内で、数字をなぞるだけでなく、生活実感につながる話をできるよう、テーマは市の国民健康保険の財政に絞ることにした。というのも、近年、全国共通の問題であるが、市町村国保の滞納問題が深刻な状況にあり、生活保護とならんで国民の最後のセーフティネットと言われる国保のネットワークからこぼれてしまう国民が大量に生まれているからである。
その背景には、
*本来なら被用者保険に加入すべき現役労働者が短期雇用を理由にそこから外され、自治体の国保に流入する人々が大量に生まれている。そうした短期雇用労働者の多くは低い所得層が多く、国保負担力が低いため、自治体国保の財政悪化の要因の一つになっている。
*被用者保険と違って、事業主の保険料折半負担がない市町村国保で事業主負担に代わるべき国庫支出金の割合が近年減少したこと、各自治体も一般会計自体の財政状況の逼迫から国保特別会計に繰り入れる(法定外繰入)余力が縮小している。
*そこで、各自治体は民間委託も含め、保険料の徴収強化に乗り出し、保険料滞納者に正規の保険証に代えて窓口での自己負担を増加させる短期証や資格証明書を発行している。そのため、保険料滞納者の間では受診の手控えが起こり、それが健康をむしばむという悪循環が起こっている。
このような背景を見据えると、今日の市町村国保は日本の社会保障の実態の縮図であり、尖鋭な事例であると言ってよい。これについては「毎日新聞」が11月4日から始めた「安心が逃げていく」という連載記事が参考になる。その中の第2回目を紹介しておきたい。
安心が逃げていく 第2回 上がる国保料 滞納者増加
(『毎日新聞』2011年11月5日、東京朝刊)
私の口からいうのも気が引けるが、このブログ記事をご覧いただいた佐倉市の方々でテーマに関心を持たれた方には足を運んでいただけら嬉しい。
私の気持ちとしては、当日の講演で終わりではなく、それがきっかけになって佐倉市の市民の方々の間に市の財政への関心が高まり、自分たちの手で勉強してみよう、近隣の市町村にも出かけて自治体の財政事情を調査し、市民から財政改革の意見・提言を発信していこうという気運が盛り上がることを願っている。
講演用にまとめた資料は後日、このブログに掲載する予定です。
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
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