25日の原子力損害賠償紛争審査会に関する報告
- 2011年 11月 26日
- 交流の広場
みなさまへ
今日の審査会は、自主避難者等(避難者と残留者)への賠償についての案は出ず、賠償のイメージと称した文書を元に、賠償の範囲や期間などについて討論しただけでした。具体的な額や地理的な範囲についてはほとんど議論はありませんでしたが、自主避難者と残留者を同額にする、一律一括にする、直後の避難については全員、その後の避難については子どもと妊婦に限定する、といったことが話し合われました。
以下、傍聴しての印象です
非常に問題の多い審査会だったように思います。
一番の問題は、残留者との「同額」にこだわり、生活費の増加や何度も往復する交通費や子どもや妊婦の付き添いで必要な家族の避難にかかわる費用など、避難に関わる実費を算入することをせず、一律一括の慰謝料的なものとして、実際に避難にかかった費用に比べて大幅な減額となる可能性が出てきたことです。
私たちは、避難者にも残留者にも賠償をと主張してきました、まず、私たちは避難に際して実際にかかった費用についてあくまで「賠償」を求めているのであって、お情け頂戴的な見舞金のようなものを求めているのではありません。また、残留者と避難者が分断することのないよう、バランスのとれた賠償が必要ですが、それは「同額」ということではないと思います。避難者にしてみれば、生活費も交通費といったもう既に出て行った出費があります。借金をしている人もいます。費用は、避難区域からの避難者と変わらないでしょう。これがすべて賠償されるのは当然のことです。
これに対し、残留者が追加で支出した金額は相対的に少なく、「同額」にこだわれば大きなアンバランスが生じるでしょう。それに「同額」へのこだわりが、残留者への賠償を引き上げる圧力になる分にはいいのですが、残留者のほうが圧倒的に多いことからも、実際には逆に避難者への賠償を減額させる圧力となるでしょう。支払い方法を、実費も慰謝料もなにもかもごっちゃにうやむやにして一括一律うん万円にしてしまおうというのですからその可能性が大きいと思われます。
これまでは、自主避難者への賠償を認めようとする法律家の委員とこれに抵抗する原子力ムラ出身の委員との攻防でした。今回も、賠償の時期をめぐってはそのような構図がありました(原子力ムラ出身委員は、なんと緊急時避難準備区域を解除した9月で賠償を打ち切れと主張!)。
しかし、上記の自主避難者の実費の賠償を、残留者と同額にして一括一律にすることによりうやむやにしてしまう流れについては、大塚委員と高橋委員を除き、能見会長を含めたすべての委員が賛同し、しまいには2人の委員も同調してしまうという構図でした。原子力ムラ出身委員の誰も抵抗していないのに、はじめから妥協の線で走っていて、一体誰に、何に気を使っているのか、事務方なのか、除染派なのか何なのか、非常に不可解でした。
それにしても、同額・一律の根拠は無茶苦茶でした、行政的実務が煩雑にならないように(行政的実務ではない!)とか、自主避難者と残留者の区別が難しいとか(自己申告で済む話!)自主避難者たちは、お情け的な見舞金など求めていません。委員たちはいったい意見聴取をどう聞いていたのでしょうか賠償の期間については、12月までとしその後はまた検討という線が強い感じですが、国が除染に2年かかるといっているのですから、最低でもそのくらいの期間を設定すべきでしょう。
今後の対応については改めて提案させていただきます。
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