テント前広場の100日と野田首相の「事故収束」宣言
- 2011年 12月 19日
- 評論・紹介・意見
- 9条改憲阻止の会
■ 『素人目に…』ということがある。誰が見てもそれはおかしいということである。多分、野田首相の福島第一原発「事故収束」宣言を聞いての誰もの感想であると思う。ある新聞には小出祐章京都大学助教(原子核工学)の話として「<あきれた人たち>と言って沈黙。しばらくして<すみません。私の中でそれ以外の言葉が探せない>と言葉を継いだ」とあった。専門家の正直な判断というべきである。野田首相の今回の発言は首相としての見識を疑わせるものであり、これは日韓首脳会談での従軍慰安婦問題の発言でも言えることだ。地金が見えたということか。
■ 今回の「事故収束」宣言では「冷温停止状態」という言葉がわざわざ作りだされた。世の中には知恵者と称される小賢しい人がいて言葉を発明する。事実や事態を正確にではなく、都合のいいように表現する言葉を考え出すのである。原子炉はメルトダウンしていて燃料棒の行方も分からないのに「冷温停止」という用語を使うことがおかしいという専門家もいる。これが正しいのであろう。さすがに「冷温停止」とはいかないので「冷温停止状態」としたのだ。言葉に摩訶不思議な働きがある。だから小賢しい人種の発明が役だつこともあるが、今回は逆の効果しか生み出さない。野田首相や政府の面々の見識のなさと彼らへの不信を増大させただけである。知事や市長など地元の人たちが政府の代表に厳しい言葉を投げかけていたが当然のことである。
■ 野田の発言をみて9月25日に国連前活動を終えて記者会見をしていた佐藤幸子さんや泉かおりさんなどの発言を思い出した。アメリカでは原発事故はもう終わったように思われているところがあると。日本以上に正確な情報の伝わりにくい外国では野田の発言は疑われなく受けてられるかもしれないのである。原発輸出を強行し原発事故も終わったかのような情報を垂れ流す許し難い行為である。テントには外国の通信社の方の訪問も多い。僕らは正確な情報を伝えなければならない。テントが外国向けの情報発信という機能を果たしているのは予期せぬ効果だ。
■ 野田が無理して「事故収束」宣言をした背後には彼らなりの政治的プログラムも存在すると推察される。現在のところ7基にまで減った稼働中の原発であるが来春にはこのままいけば全ての原発が止まる。政府や経産省は再稼働のための準備を進めているが、福島第一原発の事故が収束していることは必須の条件である。彼らには再稼働の結論があり、そのために言葉だけでも収束が必要なのだ。欺瞞に惑わされることなく再稼働阻止に向かおう。 (2011年12月19日 連帯・共同ニュース第203号)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0725:111219〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。