「食品基準100ベクレル(厚生省案)をどう考えるか?」など―地震と原発事故情報 その276
- 2011年 12月 21日
- 交流の広場
- たんぽぽ舎地震と原発事故
4つの情報をお知らせします(12月21日)
12月16日、関西電力大飯原発2号機が定期検査で停止、
日本の稼働している原発は7基、全原発停止へあと一歩
★1.食品基準100ベクレル(厚生省案)をどう考えるか?
500ベクレルの暫定基準値がそもそも滅茶苦茶だった。
★2.<テント日誌 12/19(月)>
遂にテント100日目 激動の日
―― 経産省前テントひろば 100日目 ――
★3.読者からの質問に答えて
焼却施設の問題点と埋め立ての問題点について
★4.新聞・雑誌報道から
東電、電気料金に上乗せ 保養所維持管理費 高利子の財形貯蓄
★1.食品基準100ベクレル(厚生省案)をどう考えるか?
500ベクレルの暫定基準値がそもそも滅茶苦茶だった。
柳田 真
20日、厚労省案の食品基準100ベクレルが出された。(この数値自体の妥当性についての分析は明日、専門家の手による評論をお知らせできる予定です。)
そもそも「暫定基準値500ベクレル」そのものが不当なもので滅茶苦茶高い(人体に悪影響を及ぼす)ものであった。今回の5分の1の100ベクレルへ減らしたというが、新設の乳児用食品は50ベクレルだから、全部を50ベクレルとすればもう少し評価できたのに。乳幼児に悪いものは少年・少女にも悪いのである。
今後、放射能レベルが下がることを見越して出してきた数字だろうから、後だしジャンケンみたいだ。また500ベクレルの暫定基準値を経過措置と称して半年~9ヶ月も延長するのもおかしな話だ。厚労省が国民の健康を守る気があるなら暫定基準値は即刻廃止すべきだ。
○食品基準100ベクレルに厳格化
厚労省案 乳児用・牛乳50ベクレル 来年4月から適用
食品に含まれる放射性物質をめぐり、厚生労働省は20日、現行の暫定基準値に代わる放射性セシウム(半減期は約30年)の新たな基準値案をまとめた。従来の5分類から変更することが決まっている4分類のうち「一般食品」は1キログラム当たり100ベクレル、「牛乳」と新たに設ける「乳児用食品」が同50ベクレル、「飲料水」は同10ベクレル。
暫定基準値は「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」が同500ベクレル、「牛乳・乳製品」「飲料水」が同200ベクレル。(略)新基準値の設定にあたり、厚労省は基準値の算定根拠となる年間の被ばく限度線量を、現行の「年5ミリシーベルト」から5分の1の「年1ミリシーベルト」に引き下げた。「飲料水」は、全ての人が摂取し、代替品がない点などを踏まえ、世界保健機関(WHO)の基準に従い、年間の被ばく限度線量を0.1ミリシーベルト、基準値を1キログラム当たり10ベクレルとした。残りの0.9ミリシーベルトを「一般食品」に割り当てた。年代や男女別、妊婦など10区分に細分化し、各区分の平均的な食事の摂取量や、放射性セシウムによる影響の受けやすさを加味して許容できる限度値を算出。最も低い限度値は、食事量が多い13~18歳の男性で1キログラム当たり120ベクレルとなったが、より安全な基準にする必要があるとして一般食品は1キログラム当たり100ベクレルとした。さらに子どもは放射性物質の影響を受けやすいとされる点に配慮。粉ミルクやベビーフード、服薬補助ゼリーなど、乳児しか摂取しない「乳児用食品」や、子どもの摂取量が特に多い「牛乳」(化工乳、乳酸料を含む)は一般食品の半分となる同50ベクレルに設定した。厚労省は、仮に新基準値上限の食品を一年間食べ続けることも考えにくいため、実際には0.7ミリシーベルトをかなり下回るとみている。
【解説】チェルノブイリ原発事故後、周辺の子どもは、白血病や甲状腺がんのリスクが高まったとのデータもある。このため厚労省は、年齢や男女の違いによる食事量を基に、放射線の影響の受けやすさをきめ細かく分析。暫定基準値の際には「成人」「幼児」「乳児」の3区分だけだったが、「1~6歳」「7~12歳」「妊婦」など10区分とした。(略)厚労省は年明けにも、家庭の食卓に実際に並ぶ料理のサンプル検査も始め、日々の食事を通じて放射性物質が体内にどれだけ取り込まれているかを把握する方針。こうした検査で新基準値が妥当かを確認し、結果を消費者に分かりやすく伝える努力が必要だ。
(茨城新聞12月21日付より抜粋)
★2.<テント日誌 12/19(月)>
遂にテント100日目 激動の日
―― 経産省前テントひろば 100日目 ――
12月19日(月) 今日も快晴。今日でテントは100日目を迎えた。でもそういう歓びに浸っている余裕はない。今日はあの世紀のペテン「冷温停止状態・事故収束」宣言をした野田首相が昼間に新橋のSL広場でその演説をするのだという。
メルトダウン・メルトスルーしている燃料のの状態や原子炉内の状況が全くわからず、放射性物質も未だ放出し続け、被災者の救済も進んでない中での、冷温停止状態とか事故収束などというのは、政治的意図をもったペテン以外のものではない。原発輸出、再稼働、避難阻止がその政治的意図であるのはミエミエだ。(宣言をした翌日から、冷却水漏れや、地下トンネルでの高濃度汚染水の漏出が生じている。)
抗議のためにテントひろばからも何人も駆けつける。SLひろばは人で埋め尽くされ、それを異常な数の警察・公安・SPが取り囲んでいる。テントから行った某君、プラカードを上げようとすると両脇にSPが来て、「○○、どこから来たのか、テントからか」と怒鳴られたという。(えっ SPまでテントに神経をとがらせているのか!!)
プラカードが上がり、原発いらないコールも始まる中、野田首相は金総書記死去のため急遽、官邸にとって返したということで登場せず。後は大コールが広場を制する。
午後には再稼働に反対する対政府交渉が行われ、テントからも参加。80人程の参加であったが、資料には全国300程の団体・グループ名が記されている。その時間帯、テントにはアジアのジャーナリストが熱心に取材。
夜、もんじゅ西村裁判の原告でご遺族である西村トシ子さんがDVDを携えてテントに来訪。もんじゅのナトリウム漏れ事故とその調査過程での情報隠蔽問題、そして調査担当員であった動燃職員の強制死。もんじゅの闇は深い。詳しくは「もんじゅ・西村裁判へようこそ」をご覧下さい。
スペインのジャーナリストも来訪し、テントにいた若い女性の通訳で話題が広がる。彼は3・11後、何度か日本に来ているそうである。先月、ポルトガルのジャーナリストとブラジル人の通訳が、バルセロナでテントのことを知って来訪したということを伝えると、バルセロナで発信したのは彼であり、ポルトガルのジャーナリストは彼の知人だという。世界はこんなにも繋がっているのだと感動!野田首相のペテンはもう全世界に知れ渡っていることだろう。
12月21日(水)18時半からテント前で、テントひろば主催の集会が開催されます。再稼働問題、野田宣言の問題、輸出問題、避難の権利など、現在の焦眉の問題についてアピールしていきたい。ぜひ、ご参加を待ってま~す。
( Y・T )
★3.読者からの質問に答えて
焼却施設の問題点と埋め立ての問題点について
※【編集部より】メルマガ読者より、12月12日付の「地震と原発事故情報その266」の「東京に震災廃棄物(被災ごみ)がやってくる。 23区と多摩 地域で女川町(宮城県)のごみ焼却受け入れ始まる」の報告記事に関連して他の第三者のメールを引用する形でご質問を戴きました。内容的にも12月8日にスペースたんぽぽで行われた反原発自治体議員・市民連盟主催の学習会「どうする!原発事故による放射性廃棄物」の内容と重なる部分がありますので、「読者からの質問」とその質問に対する「回答」としてここに掲載します。
【質問】
ボイラーがどういうものか分からない人には全く理解できない内容だなあ…まあ、平たく言うと焼却施設の内部全体が汚染されて、困ってしまうんでないの?って話です。(ボイラーのスペックが分からないので温度等の数値は必ずしも正しくありません)100℃程度のボイラー給水は、燃焼ガスの熱を受けながら、節炭器管、蒸発管、過熱器管を経て300数十度の蒸気になる。ボイラーの各セクションにおける管の表面温度は、150~400℃前後であると思われる。
一方、燃焼ガスは焼却炉で900℃前後、ボイラーセクションやバグフィルタ(集塵器)を通過しながら最終的には200℃以下程度で煙突から放出される。焼却炉が900℃前後ということは、セシウムは気化した状態にある(沸点671℃)。大半はガス状で下流のセクションへ流れて行くことになるが、まずここで気になる事は、蒸発管や過熱管表面に付着している灰や、断熱材(耐火レンガやキャスター)にガスが浸透し汚染が蓄積するのではないか、ということ。
そして、ガスが過熱管を通過する段階から、徐々にガス温度が低下する。気化したセシウムが固体析出するのは200℃程度と言われており、下流へ行くに従い析出しやすい状態となる。給水が最初に入る節炭器管の表面温度は150℃程度と思われるので、管表面に接触することで固体に戻る。それが他の汚れ物質(灰)とともに管表面に付着堆積する。従って、連続的に排出される主灰とは別に、これはボイラーセクションの中に蓄積していくことになる。
ボイラーセクションを通過した段階では、ガス温度は200℃以下まで低下しているため、セシウム気体の多くは固体として析出しバグフィルタにて捕捉される。バグフィルタは捕集効率100%ではないため、全てが捕捉される訳ではなく、一部は通過し大気へ放出される。
大気放出される直前のバグフィルタが話題になるのは当然として、上記の如く焼却炉ならびにガスの通過する所そのものが汚染されてしまいますよということ。ボイラー管のある各セクションだけではなく、当然それらを納めている煙道ダクトに堆積するのは言うまでもない。何年おきかにボイラーの開放清掃点検が行われるが、そこで問題の発生することが想定される。施設全体が汚染された状態であるため(どの程度かは想像つかない)、内部清掃における安全対策をいかにするのか、灰の処分はどうするのか、明確にする必要がある。
苫小牧市沼ノ端の焼却炉に関する資料リンク
http://www.jfe-steel.co.jp/research/giho/019/pdf/019-18.pdf
http://www.jfe-eng.co.jp/release/news04/news_e04025_1.html
http://www.jefma.or.jp/jefma/57/pdf/jefma57-12.pdf
http://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/sisetukanri/numasyoukyaku.htm
それから、http://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/sisetukanri/numa.htmこのページ下方に埋め立て処分場の概要パンフがあり、浸出水の処理について記載されています。放射性物質は、おそらくろ過する部分に蓄積したり、汚泥に混ざったり、最終的な排水として下水道にスルーしたり、ということだとイメージします。これらについても考慮が必要になるものと思います。下水道に流れたら下水処理施設も考慮か…。
焼却炉にしても、埋め立て処分場にしても、管理基準や安全対策やなんかを明確にすべき所が沢山あると思います。逆にそれが出来ないなら、謙虚になってもらうしかないのではないかな?と。
【回答】
坂東 喜久恵
ボイラー全般についてはおおむね書かれていることと同じです。
ここでは廃棄物焼却炉についてコメントします。都市ごみの焼却炉は燃料のごみが石油やガスのように高カロリーではないので、火格子面積は大きく、又伝熱面積も大きいのが普通です。(自燃させるので)ストーカ式では、ごみを投入してから1時間半から2時間位かけ燃焼させます。ダイオキシンの発生を抑制するため、炉の上部で800℃以上(法規制)で2秒間以上のガス撹拌領域を作ります。そのあとガスは2パス、スーパーヒーター・水平蒸発管等を流れ、ボイラー出口へ。(配置は各メーカーで多少変わります)そのあとダイオキシンの再生成を防ぐため、減温塔を通し温度を急激に下げます。(ゆっくり下げると再生成しやすい)そのあとバグフィルター、洗塩装置で塩化水素と硫黄酸化物、水銀を取り、再加熱して触媒反応塔で窒素酸化物を減らし煙突からガスを排出します。
現在の当方の廃棄物焼却炉はGAHは使っていません。(SAHのみです)焼却炉の中、ボイラーは廃棄物(多種多様)を焼却しているため、クリンカーや灰がつきやすいので清掃は欠かせません。年一回のオーバーホールでは炉内、ボイラー、各機器、煙道等清掃します。炉内はその間・中間点検でも清掃します。ごみ焼却場の集じん器で集められたばいじんは特別管理一般廃棄物です。付着しているものはこれに準じて扱っています。
ダイオキシン特別措置法が施行されて以来、炉やボイラー、集塵器等は特別管理区域になり、中に入るにはタイベックスや防塵内容が規定されていて、防備が必要です。清掃作業には、炉などを全部囲い中で作業をしています。もちろん清掃委託の業者も同じです。
今度の放射能問題でタイベックスを着て行う作業場所が増えました。レンガやキャスタブルの交換・補修もかなりの頻度で行われています。東京23区の場合は、(幸いなことに)専用の埋め立て地があるので、そこに持って行って処分しています。今問題なのは、処分の基準がこれでよいのかということをきちんとしないで、トップダウンで降りてきていることです。
★4.新聞・雑誌報道から
東電、電気料金に上乗せ 保養所維持管理費 高利子の財形貯蓄
東京電力が、保養所や接待施設の維持管理費、年8・5%もの利子が付く財形貯蓄などさまざまな社員優遇に必要な費用を、電気料金を決める際の原価に算入し、電気料金で回収していたことが本紙の調査で分かった。こうした事実を東電も認めている。東電の手厚い福利厚生は、電力会社を選ぶことができない消費者の負担によって維持されてきたことになる。
電力料金は「総括原価方式」と呼ばれる方法で算出される。施設の修繕費や燃料費など発電に必要な費用を積み上げ、電力会社の利益を上乗せし、その総額を電力料金で回収する仕組み。
ただ、費用に何を計上するかは電力会社の判断に任されている面が強い。既に、官庁OBを受け入れている財団法人への拠出金や広告宣伝費など発電とは関係のない費用に入れられていたことが判明している。経済産業省の有識者会議(座長・安念潤司中央大教授)は今後、これらの費用は計上を認めない考えを示し、同省もその考えに従う方針だ。
発電とは無関係のものが費用計上されていると新たに判明したのは、ハード面では静岡県熱海市など各地にある保養所や社員専用の飲食施設、PR施設などの維持管理費。
ソフト面では、財形貯蓄の高金利、社内のサークル活動費、一般企業より大幅に高い自社株を買う社員への補助、健康保険料の会社負担など。
福島第一原発事故を受け、東電の電力料金引き上げが検討される中、経産省の有識者会議は、手厚い福利厚生費用を電力料金に転嫁することを問題視している。燃料費などに比べれば金額は小さいが、不透明な部分はなくすため、原価から除外させる方向で議論を進める見通しだ。東電自身も保養所の廃止や福利厚生の縮小などを決めている。
東電は原価に計上してきた事実を認めた上で、「(電気料金を決める)経産省の省令に基づいて、福利厚生の費用は過去の実績や社内計画に基づき適切に原価に算入してきた」とコメントしている。
以下リストは電気料金に上乗せされてきた発電コスト外費用
・社員専用の飲食施設「東友クラブ」、接待用飲食施設「明石倶楽部」の維持管理費
・熱海などに所在する保養所の維持管理費
・女子サッカーチーム「マリーゼ」、東京電力管弦楽団の運営費
・総合グラウンドの維持管理費と減価償却費
・野球やバレーボールなど社内のサークル活動費
・PR施設(渋谷電力館とテプコ浅草館)
・一人当たり年間8万5000円の福利厚生の補助(他産業平均では6万6000円)
・健康保険料の70%負担(他企業の会社負担は50~60%)
・社員の自社株式の購入奨励金(代金の10%)
・年3.5%の財形貯蓄の利子(利子補てんがない企業がほとんど)
・年8.5%のリフレッシュ財形貯蓄の利子(制度自体がない企業がほとんど)
・電力と関係のない書籍の購入代金
・業界団体、財団法人への拠出金と出向者の人件費
・原発立地自治体への寄付金
・オール電化PRの広告宣伝費
(東京新聞電子版12月20日付けより抜粋)
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[編集部より]
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