童子丸開仮訳『リビアと大嘘:戦争に利用される人権団体』(ナゼムロアヤ)
- 2011年 12月 27日
- 時代をみる
- マハディ・ダリウス・ナゼムロアヤリビア人権団体童子丸開
(以下は、童子丸開氏のホームページの次の記事からの転載です。
http://doujibar.ganriki.net/Today%27s%20World%20of%20Fraud%20&%20Myth/the_truth_of_Libyan-war-1.html )
「人権」という名の戦争犯罪
欧米マスコミと政治家たちが「人道」、「人権」、「反独裁」、「自由」、「民主主義」等々を大声で語り始めたならば、そこには必ず戦争の計画がある。破壊と殺人の意思がある。他国への干渉と政権転覆への熱意が込められる。それらは、米国・イスラエル・NATOによる、人道を踏みにじり、人権を蹂躙し、傀儡による独裁を作り上げ、自由を抹殺し、民の口をふさぐ戦争政策を合理化するための、見え透いた大嘘に過ぎない。
カナダをベースとする社会学者マハディ・ダリウス・ナゼムロアヤは、ミシェル・チョスドフスキーと共にGlobal Research誌の中心的寄稿者として活躍する。この論文は、リビアの政権を転覆させ国家指導者のカダフィ大佐を葬ったNATOと親イスラエル勢力による、戦争策謀の極めて危険な内実を告発するもので、2011年9月29日に同誌ウエッブサイトに掲載された。
リビアでの政権転覆・国家破壊と同様の手口を使いながら、米国・イスラエル・NATOによるシリアとイランへの戦争計画が着々と進む2011年12月現在、2010年後半から2011年にかけて起こった北アフリカ諸国の政権転覆、俗に言う「アラブの春」の実態を再確認する必要があるだろう。
この論文の原文は以下である。
Libya and the Big Lie: Using Human Rights Organizations to Launch Wars
by Mahdi Darius Nazemroaya(September 29, 2011)
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=26848
ここでナゼムロアヤが書いているようなことは決して今に始まったことではない。もう20年以上も昔に、ブッシュ(父)政権と「多国籍軍」が行った(第1次)湾岸戦争開戦理由の一つとなった「クウェートでのイラク兵士の残虐行為」が根も葉もない大嘘だったのは有名な話だ。その後に続くユーゴスラビアの解体とバルカン再編の戦争、アフガニスタン侵略戦争、イラク侵略戦争、そして世界各地で続く「対テロ戦争」は、まさに『嘘の大名行列』に他ならなかった。世界中が着飾った嘘にひれ伏し土下座をし、顔を上げてその正体を見ることは厳しい非難と社会排除の的とされた。
そして「テロ」が神通力を失った現代の戦争では、まず「人権団体」が口角泡を飛ばして大嘘をばら撒き、マスコミがしたり顔でその大嘘を広め、国際機関が大嘘に基づいて侵略と政権転覆の合法性をひねり出し、「反戦」や「平和」を標榜する者たちすらが平然とその大嘘を素通りさせて、その後に続く大量破壊と大量殺人、大規模略奪への道を整えるわけである。このような全てが、戦争という重大犯罪を形作っているのだ。その犯罪がいま再び、シリアとイランを標的にしつつある。
そこでは、大嘘が錦の御旗となってあらゆる悪事を正当化し、しかも嘘をついた者たち、嘘を見過ごした者たちが何の非難を受けることも責任を取ることもない。それどころか、その者たちは、その嘘を指摘する者に対して激しい非理性的な非難と罵倒を浴びせ、レッテルを貼って排除圧力を作る。これが、現代という時代の最も深刻で重大な危機ではないだろうか。
(参照:http://doujibar.ganriki.net/911news/these_big_lies_are_war_crime.html)
この翻訳はあくまで童子丸開による暫定訳であり、念のために原文(英語)を訳文の後に貼り付けておくこととする。[「ちきゅう座」転載にあたり原文は省略します。-編集部]
(2011年12月25日、バルセロナにて、童子丸開)
リビアと大嘘:戦争に利用される人権団体
マハディ・ダリウス・ナゼムロアヤ
Global Research 2011年9月29日
リビアに対する戦争は虚構の上に作られている。国連安全保障委員会は証明の為されない主張に基づいてリビアに対する二つの解決案を通した。特に、ムアンマル・カダフィ大佐がベンガジとリビア国内で自国民を殺しているというものだった。この主張は、正確な形で言えば、カダフィはリビア軍に対してベンガジと他の地域に住む6000人を殺すように命じたというものである。こういった主張が幅広く伝えられたわけだが、常にあいまいな説明しか為されなかった。リビアが、ニューヨークの国連本部にある安全保障委員会で問題にされジュネーブの国連人権理事会から追い出されたのは、この主張に基づいてのことだった。
リビアでのアフリカ人傭兵、そして国民に対するジェット機による攻撃に関するデタラメな主張もまた同様に、リビアに対する幅広いメディア・キャンペーンに利用された。これらの二つの主張は筋が通らなくなりどんどんといかがわしいものになってきた。ところが大量殺人の主張は、NATOによる対リビア戦争を正当化するために、法的な、外交的な、そして軍事的な枠組みの中で利用されたのである。
戦争の理由として人権を利用すること:LLHRとその証明できない主張
カダフィが自国民を殺害しているという主張の主な発信源の一つが、リビア人権同盟(LLHR:the Libyan League for Human Rights)である。このLLHRは実際に、ジュネーブでのある特定の主張を通して国連を巻き込んだ中心的な役を演じた。2011年2月21日に、LLHRは他の70の非政府組織(NGO)を使って、オバマ大統領、EU上級代表のキャサリン・アシュトン、そして国連事務総長バン・キ・ムンに書簡を送り、「(人権)保護責任」ドクトリンを焚きつけながら、リビアに対して国際的な行動を起こすように要求した。そのグループの中でわずか25の団体だけが自分たちを人権団体であると断言している。
その手紙は以下の通りである:
我々、署名を行った非政府の人権・人道的組織は、あなた方に対して、国連と国際社会を動かしてリビア政府が自国民に対して現在行っている大規模な残虐行為を止めさせるように、早急の行動を取ることをお願いします。弁解のできない沈黙を続けることはできません。
あなた方も知っているように、過去の長い日々の中で、モアンマル・カダフィ大佐の軍隊が、国中で何百人もの平和的な抗議者たちと無実の一般の人々を意図的に殺したと推測されます。ベンガジ市だけでも、一人の医師が200人分の死体を見たと報告しました。目撃者たちは、特別部隊と外国人傭兵と政権支持者たちが一緒になってナイフや攻撃用ライフルや大口径の武器を使ってデモ参加者を襲撃したことを報告しています。
狙撃者たちは平和的に抗議する人々を撃ちました。デモに参加する群集に向かって大砲と武装ヘリコプターが用いられました。ハンマーや剣で武装したならず者たちが家にいる女性を襲いました。病院の職員たちは、数多くの犠牲者が頭と胸を打たれ、一人が対空ミサイルで頭を吹き飛ばされたと報告します。戦車が通りにあって無関係な見物人を押しつぶしていると伝えられます。目撃者たちは、傭兵たちがヘリコプターや建物の屋上から無差別に発砲していると語ります。女と子供たちが逃げるためにベンガジのジュリアナ橋から飛び降りていたのが目撃されました。その多くが水面に落ちた衝撃で死亡し、他は溺れ死にました。リビアの政権は、外国との接触を断ち切ることでこれらの犯罪の全てを隠そうとしています。外国のジャーナリストたちは現地に入ることを拒否されています。インターネットと電話は切られるか妨害されています。
その意図に疑う余地はありません。政府系のメディアは開けっぴろげの脅迫を公表し、デモ参加者は「激しく厳しい対応」を受けることになるだろうと断言しました。
伝えられるところによりますと、リビア政府は生存権に対する大規模で組織的な侵害行為を犯しています。それは世界人権宣言と市民的及び政治的権利に関する国際規約で保証されているとおりのものです。その表現の自由と集会の自由を行使しようとする国民が政府によって殺害されているのです。
さらに、リビア政府は人間に対する犯罪を犯しています。それは国際司法裁判所のローマ規程への説明用覚書によって定義されているものです。リビア政府の無実の国民に対する大量殺人は、人間の尊厳に対する深刻な侵害を成り立たせる極めて憎むべき犯罪にまで達しています。人権団体と報道機関によって集められた口頭と映像での無数の証言によって確認されるように、リビア政府の自国民に対する襲撃は、決して単発的あるいは散発的な出来事ではありません。むしろ、こういった行動は大規模で組織的な政策と意図的に為される残虐行為から成り立っています。それには殺人、政治犯の処刑、その他の人間に対する犯罪の敷居を越えた非人道的行為が含まれます。
保護の責任
2005年の世界サミット成果文書の下で、あなた方は、リビア国民を保護する明らかで間違い様のない責任を負っています。国連を通した国際社会は、国連憲章の第6章および第8章に基づいて、リビア人民の保護を援助するための、適切な外交的、人道的そしてその他の平和的な手段を使う責任を持っています。リビア国家の要人たちが人間に対する犯罪からその国民を保護することができないことが明らかであるため、もし平和的な手段が不適切であるというならば、国連構成国は、第7章を含む国連憲章に基づき、安全保障委員会の場で、適時な断固とした方法で、集団的な行動をとることが義務付けられます。
それに加え、我々はあなた方に国連人権理事会の緊急特別会議を召集することを要求します。そのメンバーは、国連総会決議案60/251の下で、大規模で組織的な人権に対する侵害を宣言する義務を負います。その会議では次のことを行わなければなりません。
-総会を招集しリビアの理事会への参加権を停止すること。これは、大規模で組織的な人権への侵害を行う国家に対して適用される国連総会決議案60/251第8章に従うものである。
-リビアの自国民に対する虐殺を強く非難し即時の終了を要求すること。
-即刻、独立した専門家による国際的な使節団を派遣し、国際的な人権法の違反と人間に対する犯罪に関する事実と文書を収集すること。これはリビア政府が罰せられない状態を終わらせる目的である。その使節団の作業には、死亡した人々への独立した医学的調査、および、負傷者の救助と治療に対するリビア政府による不法な妨害行為への調査が含まれるべきである。
-国連人権高等弁務官、および理事会の関連ある特別手続に呼びかけ、つぶさに状況を把握して必要な行動をとること。
-理事会に呼びかけて事態の把握を続け来る5月の第16回会議でリビアの状況について語ること。
国際連合の加入諸国と上級機関はリビア国民を予防可能な犯罪から保護する責任を負います。我々は、あなた方が適用可能なあらゆる手段を用いてこの国中で暴虐を終わらせるように強く求めます。
我々はあなた方に、国際社会、安全保障理事会と人権理事会がすべて、これらの大規模な暴虐に対する傍観者になることはないという明らかなメッセージを送ることを要求します。国連の信頼性、そして数多くの無実の生命が、危機にさらされているのです。(1)
「人権を求める外科医たち」(Physicians for Human Rights)によると、「(この書簡は)著名なリビアの人権擁護者であり反体制活動家Fathi Eljahmiの兄弟であるMohamed Eljahmiの指導によって準備されたものだが、リビアによって自国民に対して行われる広範な暴虐さが戦争犯罪にまで積み上がっており、加盟国に対して、保護ドクトリンへの責任において安全保障理事会を通して行動を起こすように求めるものである。」 (2)
この書簡への署名者には、フランシス・フクヤマ、United Nations Watch(イスラエルの利益を求めイスラエルの情報源に基づいてリビア・アラブ社会主義ジャマヒーリア【リビアにおけるカダフィの支持母体だった組織:訳注】に敵対する包括的な活動を組織したもの)、ブナイブリス人権委員会、キューバ民主主義理事会(Cuban Democratic Directorate)、そして、ニカラグア、キューバ、スーダン、ロシア、ベネズエラ、リビアの政府と反目する一群の組織の名がある。これらの組織の一部は、米国やイスラエルや欧州連合に反発する国々に対して悪魔化キャンペーンを張るために作られた組織として、反感を込めて見られているものだ。付録にある署名者全てのリストを参照してもらいたい。
LLHRはFIDH(International Federation for Human Rights)【アムネスティ、ヒューマンライト・ウォッチと並ぶ三大人権組織の一つ:訳注】と結びついているが、これはフランスにその本拠地があり全米民主主義基金(NED)とのつながりを持つ。FIDHはアフリカの多くの場所で活動しており、またアフリカ大陸でNEDが行う活動に加わっている。FIDHとLLHRは2011年2月21日に共同声明を発表した。その中で両組織は国際社会に対して、国際刑事裁判所を「動員」して指名するように求め、一方で同時に、2011年2月15日以来400人から600人が死亡したとする異論の多い主張を行った(3) 。これはもちろん、ベンガジで6000人が殺されたという主張に比べると5500人も少ないものだ。その共同の書簡はまた、カダフィ支持者の80%が外国人傭兵であるという間違った認識を広めた。それが嘘であることは半年以上続いた戦闘が証明するものである。
LLHRの総書記であるソリマン・ブーフィギル(Sliman Bouchuiguir)博士によれば、ベンガジでの大量殺人についての主張は、彼が証明を求められた際にLLHRによっては立証できなかったものである。ジュネーブにある70の非政府組織グループがLLHRによるジュネーブでの主張をどうやって支持したのかを問われたときに、ソリマン・ブーフィギル博士は、緊密な関係のネットワークが基盤になったと答えている。これはお笑いぐさである。
暴虐事件の証拠も無ければ空爆による開戦の根拠も無い。その半年ほど続いた空爆では、子供と老人を含む数多くの国民の命が奪われたのだ。ここで特記すべきことは、国連安全保障理事会がこのLLHRの書簡と主張に基づいてリビア・アラブ社会主義ジャマヒーリアに対する制裁を決定した点だ。戦争へと突き進んだ国連安保理とその構成国は、ただの一度たりとも、そこで述べられる推測について調査しようとすらしなかったのである。ニューヨーク市でのある会議の中で、インドの国連大使が投票を棄権した際にこの点を指摘した。このようにして、いわゆる「人道のための戦争」が何の根拠も無く立ち上げられた。
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Global Research編集部よりの注記: LLHRの声明を盛んに持ち上げたUnited Nations Watchは米国国務省との非公式なつながりを持っている。それはクリントン政権時代の1993年に、ジュネーブにある国連機関の元米国議会代表であるモリス・B.アブラムの議長職権の下で作られたものである。United Nations Watchは、ニューヨーク市を基盤とする強力な親イスラエル・ロビーである米国ユダヤ人委員会(AJC)に正式に所属している。
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LLHRとリビア国民暫定評議会との間にある隠された関係
リビア人権同盟(LLHR)の主張はリビア国民暫定評議会の形成に結びついた。そのことは、LLHRとリビア国民暫定評議会との緊密で秘密に包まれた関係が見えるときに明らかである。必然的に、オバマ政権とNATOがそこに加わっていたことに間違いはない。
リビア国民暫定評議会が何であれ、またその支持者たちの一部が持つ意図が何であれ、それが米国とその他による道具として存在することは明らかである。さらに、リビア・アラブ社会主義ジャマヒーリアに対する告発がばら撒かれたほぼ直後に、LLHRの5人のメンバーが暫定評議会のメンバーになった、あるいはなることが決められた。ブーフィギルによれば、LLHRとのつながりを持つ者たち、あるいはそのメンバーにマフムード・ジブリとアリ・タルホーニが含まれている。
マフムード・ジブリ博士はリビア政権内の人物で、サイーフ・アル-イスラム・カダフィによってリビア政府の中に加えられた。彼は暫定評議会の首相という地位を民主的な過程を経ずに与えられた。彼がLLHRに加わっていたことは、この組織に関する現実的な疑問を持ち上げる。
その一方で経済学者のアリ・タルホーニは暫定評議会の石油・財務大臣になるだろう。タルホーニはリビアでのワシントン側の人間である。彼は米国内で仕込まれてリビアでの政権転覆計画についての主要な会議のすべてに出席した。石油・財務大臣として彼が最初に行ったことは、リビアのエネルギー資源と経済を私有化し、外国企業とNATO主導の反リビア連合の政府に実質的に譲り渡すことだった。
LLHRの総書記ソリマン・ブーフィギルは、私的な形でだが、暫定評議会にいる多くの有力メンバーが自分の友人であることを認めている。現実的な利害の問題が持ち上がる。しかし、LLHRと暫定評議会の隠された関係は利害対立の問題をはるかに超えたものなのだ。
ソリマン・ブーフィギルとは何者か?
ソリマン・ブーフィギルはあまり耳慣れない名前だ。しかし彼は、米国の戦略問題サークルの中で幅広く引用される博士論文を著した人物である。その論文は1979年に本として出版された。『The Use of Oil as a Political Weapon: A Case Study of the 1973 Arab Oil Embargo』がそれである。この論文は、アラブ人による経済的な武器としての石油の利用に関するものだが、それはロシア人やイラン人、ベネズエラ人などにとって簡単に応用できるものである。論文は、経済的な発展と経済的な戦争を調べあげており、またアフリカを含めた広大な地域に適用することもできる。
ブーフィギルの分析的な論文はワシントンの、同様にロンドンとテルアビブの、ある重要な思考の方向を反映している。それは以前から存在する心性の具象化だが、これには米国国家安全保障担当補佐官ジョージ・F.ケナン【これは著者のミスと思われるが、ケナンはトルーマン政権下で国務省の政策企画本部長を務め冷戦時の戦略の基本線を引いた:訳注】の主張が含まれる。それは、米国及びその同盟国の側と世界の残りの側との間で起こる多くの様相を持つ絶えざる戦争を通じて、常に同等ではない立場を維持する、というものである。その論文は、アラブ人であれ誰であれ、経済的なパワーあるいは敵になることを予防するために使うことができる。戦略的な意味で、ライバル経済を脅威そして「武器」として押さえ込むのである。これは重大な暗示だ。
さらに言えば、ブーフィギルはその論文をジョージ・ワシントン大学でバーナード・ライヒの下で書き上げた。ライヒは政治学者であり国際関係の教授である。彼は米国国防情報大学(Defense Intelligence College)、米国空軍特殊作戦学校(United States Air Force Special Operations School)、海兵隊戦争大学(Marine Corps War College)、そしてテルアビブ大学のシロアー・センター(Shiloah Center)のような場所で働き地位を固めているのだ。彼は米国国務省の外交研究所(Foreign Service Institute)で中東問題の顧問を務めており、 Defense Academic Research Support Program Research Grant やGerman Marshal Fund Grantといった助成金を受け取っている。ライヒはまた、Israel Affairs (1994-現在)、Terrorism: An International Journal (1987-1994),そしてThe New Middle East (1971-1973)といった雑誌の編集も行っている。
ライヒがイスラエルの利益と結びついていることもまた明らかだ。彼は米国とイスラエルの間にある特別の関係に関する本すら書いている。彼はまたイスラエルにとって都合の良い「新たな中東」の主唱者でもある。これには北アフリカについての注意深い認識も含まれる。彼の仕事は同時にソビエト連邦と中東との間にある重要な戦略的接点に、そしてまたアフリカ大陸でのイスラエルの政策に注がれてきた。
ブーフィギルがライヒの監督の下でその論文を作った理由は明白だ。1973年10月23日に、ライヒは米国議会で証言を行った。その証言は「10月中東戦争の衝撃」と呼ばれているもので、1973年の石油禁輸、および将来の同種の事柄を予防または処置するワシントンの方針と明らかなつながりを持っている。次の点が問われなければならない。ライヒがどれほどにブーフィギルに影響を与えたのか、そしてブーフィギルがライヒと同様の戦略的視点を信奉しているのかどうか、である。
「新しい北アフリカ」と「新しいアフリカ」 - 単なる「新しい中東」を超えて
「新しいアフリカ」は、かつてと同様にその国境をさらに血の中に沈めてしまう作業の中にある。オバマ政権とその同盟者たちはアフリカへの新たな侵略の入り口を開いたのだ。米国アフリカ・コマンド(AFRICOM)は「オデッセイの夜明け」作戦でその集中砲火を開始したのだった。それは対リビア戦争がNATOの「ユニファイド・プロテクター【統一された保護者?:訳注】」作戦へと移行する以前のことだった。
米国はNATOを使って第2次世界大戦後の欧州を占領している。米国は今からアフリカを占領するためにAFRICOMを使うだろう。そしてアフリカ版NATOを作り上げるだろう。米国が、人道的援助の使命とテロとの闘いという偽装の下で、リビアとアフリカでの軍事的な存在の拡大を望んでいることは明白である。そのテロリズムとはリビアとアフリカをもてあそんでいるのと同じテロリズムなのだが。
テロとの戦いという見せかけの下に、アフリカでの侵略の道が整えられる。カーター・ハム将軍は次のように述べている。「もし我々が人道的な作戦を立ち上げなければならないのなら、航空管制や空域の管理やその種の行動を使って、どのようにすればそれほど効果的にできるのだろうか」(4)。ハム将軍の疑問は、実際には、アフリカの軍事的な友好関係と統合を作ること、同時にリビアや他のアフリカ諸国に対する無人軍用機のより多くの使用を可能にする新しい基地を作ることへの誘い水にされている。ワシントンポストとウォールストリートジャーナルはどちらも、ペンタゴンがその戦争政策を拡大させるためにアフリカとアラビア半島にさらなる無人軍用機の基地を作る活発な努力を行っていることを明らかにしている(5)。このコンテキストの中でAFRICOMの司令官は、ソマリアのアルシャバーブ、北アフリカのイスラミック・マグレブのアルカイダ、そしてナイジェリアのボコハレムの間に連携があると語るのだ(6)。
リビアでの戦争は詐欺である
ハム将軍はこう語っている。「私は今でも、もし国連があんな決定をせず米国が大きな支持を受けてその先頭に立たなかったとしたら、ベンガジで生きてはいないだろうとされた大勢の人々が今日も生きていると、完璧な確信を持って信じ続けている」(7)。これは本当ではない。そして現実からはかけ離れている。この戦争は、救われたかもしれないよりもはるかに多くの命を奪ってきた。それは一つの国を破壊し、そして新植民地計画のためにアフリカに入るドアを開けてしまった。
リビア人権同盟(LLHR)の主張は、決して証拠に基づかず確認も為されなかった。国連の信頼性は、実際に戦争を推し進めた多くの人道・人権組織の信頼性と同様に、疑問に付されなければならない。どう見ても国連安保理事会は無責任な機関だが、しかしそれは明らかに外見上合法的な手続きで行動している。このパターンがいま、シリア・アラブ共和国に対して繰り返されようとしている。証明のなされない主張が、本物の民主的な改革も自由も何一つ気にかけない外国の勢力に支持された複数の個人と組織によって、なされつつあるのだ。
脚注
[1] United Nations Watch et al., “Urgent Appeal to Stop Atrocities in Libya: Sent by 70 NGOs to the US, EU, and UN,” February 21, 2011:
<http://www.unwatch.org/site/apps/nlnet/content2.aspx?c=bdKKISNqEmG&b=1330815&ct=9135143> 【戻る】
[2] Physicians for Human Rights, “PHR and Human Rights Groups Call for Immediate Action in Libya,” February 22, 2011:
<http://physiciansforhumanrights.org/press/press-releases/news-2011-02-22-libya.html> 【戻る】
[3] The International Federation for Human Rights (FIDH) and the Libyan League for Human Rights (LLHR), “Massacres in Libya: The international community must urgently,” respond, February 21, 2011:
<http://www.fidh.org/IMG/article_PDF/article_a9183.pdf> 【戻る】
[4] Jim Garamone, “Africa Command Learns from Libya Operations,” American Forces Press Service, September 15, 2011:
<http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=65344&reason=1> 【戻る】
[5] Gregory Miller and Craig Whitlock, “U.S. U.S. assembling secret drone bases in Africa, Arabian Peninsula, officials say,” The Washington Post, September 20, 2011; Julian E. Barnes, “U.S. Expands Drone Flights to Take Aim at East Africa,” The Wall Street Journal (WSJ), September 21, 2011.【戻る】
[6] Garamone, “Africa Command Learns,” Op. cit.(前出[4])【戻る】
[7] Ibid.(同上、前出[4])【戻る】
付録:リビアに対する行動を求める緊急の書簡への署名者一覧 【元の段落に戻る】
February 12, 2011 – Geneva, Switzerland
1. Hillel C. Neuer, United Nations Watch, Switzerland
2. Dr. Sliman Bouchuiguir, Libyan League for Human Rights, Switzerland
3. Mary Kay Stratis, Victims of Pan Am Flight 103, Inc., USA
4. Carl Gershman, President, The National Endowment for Democracy, USA
5. Yang Jianli, Initiatives for China, USA – Former prisoner of conscience and survivor of Tiananmen Square massacre
6. Yang Kuanxing, YIbao – Chinese writer, original signatory to Charter 08, the manifesto calling for political reform in China
7. Matteo Mecacci, MP, Nonviolent Radical Party, Italy
8. Frank Donaghue, Physicians for Human Rights, USA
9. Nazanin Afshin-Jam, Stop Child Executions, Canada
10. Bhawani Shanker Kusum, Gram Bharati Samiti, India
11. G. Jasper Cummeh, III, Actions for Genuine Democratic Alternatives, Liberia
12. Michel Monod, International Fellowship of Reconciliation, Switzerland
13. Esohe Aghatise, Associazione Iroko Onlus, Italy
14. Harris O. Schoenberg, UN Reform Advocates, USA
15. Myrna Lachenal, World Federation for Mental Health, Switzerland
16. Nguyên Lê Nhân Quyên, Vietnamese League for Human Rights, Switzerland
17. Sylvia G. Iriondo, Mothers and Women against Repression (M.A.R. Por Cuba), USA
18. David Littman, World Union for Progressive Judaism, Switzerland
19. Barrister Festus Okoye, Human Rights Monitor, Nigeria
20. Theodor Rathgeber, Forum Human Rights, Germany
21. Derik Uya Alfred, Kwoto Cultural Center, Juba – Southern Sudan
22. Carlos E Tinoco, Consorcio Desarrollo y Justicia, A.C., Venezuela
23. Abdurashid Abdulle Abikar, Center for Youth and Democracy, Somalia
24. Dr. Vanee Meisinger, Pan Pacific and South East Asia Women’s Association, Thailand
25. Simone Abel, René Cassin, United Kingdom
26. Dr. Francois Ullmann, Ingenieurs du Monde, Switzerland
27. Sr Catherine Waters, Catholic International Education Office, USA
28. Gibreil Hamid, Darfur Peace and Development Centre, Switzerland
29. Nino Sergi, INTERSOS – Humanitarian Aid Organization, Italy
30. Daniel Feng, Foundation for China in the 21st Century
31. Ann Buwalda, Executive Director, Jubilee Campaign, USA
32. Leo Igwe, Nigerian Humanist Movement, Nigeria
33. Chandika Gautam, Nepal International Consumers Union, Nepal
34. Zohra Yusuf, Human Rights Commission of Pakistan, Pakistan
35. Sekou Doumbia, Femmes & Droits Humains, Mali
36. Cyrille Rolande Bechon, Nouveaux Droits de l’Homme, Cameroon
37. Zainab Al-Suwaij, American Islamic Congress, USA
38. Valnora Edwin, Campaign for Good Governance, Sierra Leone
39. Patrick Mpedzisi, African Democracy Forum, South Africa
40. Phil ya Nangoloh, NamRights, Namibia
41. Jaime Vintimilla, Centro Sobre Derecho y Sociedad (CIDES), Ecuador
42. Tilder Kumichii Ndichia, Gender Empowerment and Development, Cameroon
43. Amina Bouayach, Moroccan Organisation for Human Rights, Morocco
44. Abdullahi Mohamoud Nur, CEPID-Horn Africa, Somalia
45. Delly Mawazo Sesete, Resarch Center on Environment, Democracy & Human Rights, DR Congo
46. Joseph Rahall, Green Scenery, Sierra Leone
47. Arnold Djuma, Solidarité pour la Promotion Sociale et la Paix, Rwanda
48. Panayote Dimitras, Greek Helsinki Monitor, Greece
49. Carlos E. Ponce, Latina American and Caribbean Network for Democracy, Venezuela
50. Fr. Paul Lansu, Pax Christi International, Belgium
51. Tharsika Pakeerathan, Swiss Council of Eelam Tamils, Switzerland
52. Ibrahima Niang, Commission des Droits Humains du Mouvement Citoyen, Senegal
53. Virginia Swain, Center for Global Community and World Law, USA
54. Dr Yael Danieli, International Society for Traumatic Stress Studies, USA
55. Savita Gokhale, Loksadhana, India
56. Hasan Dheeree, Biland Awdal Organization, Somalia
57. Pacifique Nininahazwe, Forum pour le Renforcement de la Société Civile, Burundi
58. Derik Uya Alfred, Kwoto Cultural Center, Southern Sudan
59. Michel Golubnichy, International Association of Peace Foundations, Russia
60. Edward Ladu Terso, Multi Media Training Center, Sudan
61. Hafiz Mohammed, Justice Africa Sudan, Sudan
62. Sammy Eppel, B’nai B’rith Human Rights Commission, Venezuela
63. Jack Jeffery, International Humanist and Ethical Union, United Kingdom
64. Duy Hoang, Viet Tan, Vietnam
65. Promotion de la Democratie et Protection des Droits Humains, DR Congo
66. Radwan A. Masmoudi, Center for the Study of Islam & Democracy, USA
67. María José Zamora Solórzano, Movimiento por Nicaragua, Nicaragua
68. John Suarez, Cuban Democratic Directorate, USA
69. Mohamed Abdul Malek, Libya Watch, United Kingdom
70. Journalists Union of Russia, Russia
71. Sindi Medar-Gould, BAOBAB for Women’s Human Rights, Nigeria
72. Derik Uya Alfred, Kwoto Cultural Centre, Sudan
73. Sr. Anne Shaym, Presentation Sisters, Australia
74. Joseph Rahad, Green Scenery, Sierra Leone
75. Fahma Yusuf Essa, Women in Journalism Association, Somalia
76. Hayder Ibrahim Ali, Sudanese Studies Center, Sudan
77. Marcel Claude Kabongo, Good Governance and Human Rights NGO, DR Congo
78. Frank Weston, International Multiracial Shared Cultural Organization (IMSCO), USA
79. Fatima Alaoui, Maghrebin Forum for environment and development, Morocco
80. Ted Brooks, Committee for Peace and Development Advocacy, Liberia
81. Felly Fwamba, Cerveau Chrétien, DR Congo
82. Jane Rutledge, CIVICUS: World Alliance of Citizen Participation, South Africa
83. Ali AlAhmed, The Institute for Gulf Affairs, USA
84. Daniel Ozoukou, Martin Luther King Center for Peace and Social Justice, Cote d’Ivoire
85. Dan T. Saryee, Liberia Democratic Institute (LDI), Liberia
Individuals
Dr. Frene Ginwala, former Speaker of the South African National Assembly
Philosopher Francis Fukuyama
Mohamed Eljahmi, Libyan human rights activist
Glenn P. Johnson, Jr., Treasurer, Victims of Pan Am Flight 103, Inc., father of Beth Ann Johnson, victim of Lockerbie bombing
Source: U.N. Watch (Refer to note 1)
(この記事は松元保昭氏=パレスチナ連帯・札幌 代表からご紹介を戴きました。)
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〔eye1754:111227〕
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