福島市15歳未満の被曝ガン死者推定「415人」(過去8ヵ月の積算線量)
- 2011年 12月 31日
- 時代をみる
- 原発事故河宮信郎藏田計成被曝ガン死者推定
=「幼児、学童、妊婦」の家族疎開を急げ!核汚染地内に閉じ込めるな=
図1 「福島県」5歳階層別人口と被曝ガン死者数(年間20ミリシーベルト被曝の場合
参考資料: J . W. Gofman 『Radiation and Human Health』 Sierra Club Books (1981); 伊藤昭好、今中哲二、海老沢徹、川野真治、小出裕章、小出三千恵、小林圭二、佐伯和則、塚谷恒雄他訳『放射能と人間』社会思想社(1991年)、新装版 明石書店(2011年)、図作成・著者
年少世代に多発する被曝ガン死
「図1」は、福島県の人口構成とそれに対する「被曝ガン死者数」の推定である。福島県県人口を5歳階層別に区分して、被曝線量=20ミリシーベルト(以下、ミリSv)に対する階層別の「被曝ガン死者数」を推計した。
この被曝線量=20ミリシーベルトは、先の政府有識者会議「ワーキンググループ(WG)」が設定した許容値である。その主査は長滝重信・前川和彦であり、かつて山下俊一ともども「100ミリSv浴びても問題はない」とうそぶいた御仁である。
図1は、この許容線量=20ミリSv(長滝・前川ライン)をもとに、ゴフマンモデルによって「ガン死者数」を計算した。ゴフマンモデルの対象は「公衆一般」ではない。被曝年齢0歳~55歳に対する「ガン線量」を年齢階層別・男女別に計算した。ここでいうガン線量とは「被曝ガン死者1人をもたらす集団被曝線量」である。ゴフマンがこの書を刊行してから30年が過ぎたいまも議論が続いている内部被曝問題に対しても、時代的制約の中で厳しく検証し、計算の精度を高めた。
ところが、アメリカ政府や世界の核・原発推進勢力は、ゴフマンのガン死に対する評価を敵視し、徹底的な禁圧を画策した。しかし、数年後に起きたチェルノブイリ事故によるガン者数は、事故後25年の歴史を経て、いまようやくゴフマンモデルに近付きつつある。いまにして甦り、受容されようとしている。
たとえば、「欧州放射線リスク委員会」(ECRR)の「2010年勧告」は、「国際放射線防護委員会」(ICRP)の基準値=年間1ミリSv(=毎時0.114マイクロシーベルト)は「過大である」として、これを「10分の1」に切り下げた。「年間許容値を0.1ミリSv(=毎時0.011マイクロシーベルト)とし、適用基準対象も「胎児」「乳幼児」「年少者」「大人」と4区分した。
冒頭の図1は、被曝線量「年間20ミリSv」15歳未満の年少世代にとっては、あまりにも「過酷」であることを示す。日本版緊急値とはいえ、先の「長滝・前川基準=20ミリSv」はICRP基準値(年間1ミリSv)における推定死者数の「20倍」を予期し、欧州リスク委の許容限度の「200倍」に相当する。
ただし、この「被曝ガン死者数」の意味については、2点の補足が必要である。
①1桁台~2桁台の低い線量(100ミリSv以下)を浴びた場合の、晩発性ガン死は「数年(潜伏期間)後から発現し、40年後にピークに達する」ことになる(ゴフマン)。「いまただちに影響はない」という政府の常套句は、「のちのち集団被曝線量に比例したガン死者が出る」という補足を要する。
②ゴフマンモデルにおけるガン死者数の計算では、年間被曝総線量〈 1万[ミリSv・人]当たり〉という基準線量を用いている。この基準線量の意味は「1万人が1ミリSv」、「2万人が0.5ミリSv」、「5000人が2ミリSv」を浴びるとして、その集団被曝総線量はすべて〈 1万[ミリSv・人] 〉ということである。
ゴフマンモデルは、この「集団被曝線量」〈 1万[ミリSv・人]当り〉に対して、「ガン死者は何人か」を推定した。これを用いて、0歳、5歳、10歳、15歳、20歳…55歳までの年齢集団別に「ガン死者数」を計算した。なお、年齢差無視のICRPモデル基準値は、下表のゴフマンモデルでは、46歳被曝にあたる。
被曝時の年齢 | 0歳 | 5歳 | 10歳 | 15歳 | 20歳 | 25歳 | 30歳 | 46歳 | 55歳 |
生涯ガン死者(人) | 15.17 | 13.32 | 10.53 | 5.10 | 4.50 | 4.46 | 3.889 | 0.50 | 0.05 |
結論
① ICRPモデル「一般公衆、1万人、年間1㍉Sv、死者=0.5人」をゴフマンモデルと対照すると、「46歳で被曝した場合のガン死者数」に相当する。
② たとえば、0歳「年間1㍉Sv」被曝」は、46歳「年間30㍉Sv」被曝のダメージに等しい。 46歳「1ミリSv」は、0歳の「30ミリSv」被曝に等しい。
③ ガン死推定「415人」の母集団は、福島市15歳未満「約3万7500 人」である。
その累積被曝線量は「8ヶ月間=9.45㍉Sv」。福島県が計測した事故から8ヵ月の線量を独自に積算し、ゴフマンモデルで算定した。奇妙なことに、文科省の新聞発表では福島市の累積線量「3.15㍉Sv」とある。これを逆算すると、8ヵ月間(3月12日~11月10日=5942時間)で、被曝線量は「毎時0.53マイクロシーベルト」になる。しかも、近似するはずの毎時の線量値は、新聞発表値「毎時1.31マイクロシーベルト」とは「2.5倍」もちがうという「デタラメ値」である。(詳細は別項)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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