テント日誌 1/17 経産省前テント広場―129日目
- 2012年 1月 18日
- 交流の広場
- テント村住人
不寝番の担当時間は深夜の2時30分前まである。それから眠りについたのは3時だったが冷え込む中であれこれ自問していた。が、堂々巡りを脱しえない。一体、脱原発は可能か(?)今の運動に足らないものは(?)俺はどうしてここにいるのか(?)消灯の時間までの話(雑談)なども含め反芻していた。が、これという答えはない。答えがないのが答えという一種の矛盾に置かれるのが体制や権力に対抗する側がいつも強いられるところである。これは経験的に分かる。ここでの耐え方、凌ぎ方がどんな運動でも難しいのであろうがここをどう乗り越えていくのか。それがテント広場の運動にもあるのだろうと思う。
経産省側はこの間、毎日のようにテントの監視を強め、隙あれば介入しようとしている。彼らの張った鎖で転倒し怪我した事件の責任の追及に対しては答えず、火器の使用についてうるさく写真を撮るなどしている。今日は先の事故の責任と鎖を取り除けという要求への答を前川審議官が持ってきた。もちろん、事故の責任には答えず、要求は拒否であるが帰りがけに火器の使用についてテント側の江田や正清と論争になった。我々がテント内で使用するものは安全で最低限のものであり、防寒上避けられないものだ。我々はここで日常を形成している面があり、防寒上で不可欠の範囲の物しか使用していないのであり、こういうトリビアルなところでのイチャモンを拒否する。彼は江田や正清の批判に答えられずに引きあげた。
前川審議官との論争のようにテントの問題を瑣末なところに落とし込めるのではなく、経産省の何を監視し、批判せんとしているのかというところで展開することを我々は望む。経産省としてもいい機会ではないか。我々は原発の再稼働などについて公開の討論をやってもいいし、舞台は準備していいのである。彼らが我々との公開の討論に応じることができれば、人々の経産省を見る目も変わるかもしれない(?)
この経産省では18日(水)の16時15分~19時15分まで「発電用原子力施設の安全に関する総合評価に関わる意見聴聞会」が開かれる。これはいわゆるストレステストに対する専門家意見聴聞会で第7回目である。この会を経て保安院は大飯原発の安全確認をする予定と報じられている。23日には国際原子力機関(IAEA)の調査団を来日させてお墨付きを得ようと準備している。ストレステストを経て再稼働というレールに乗った行動である。福島第一原発震災は未だに収束をせずまたその事故の検証もなされていないのに再稼働戦略は進められているのだ。「今まで安全と評価してきた人たちが再び評価したところで、結果は同じである」という声が強い中での進行である。
今回の意見聴聞会では傍聴を排除し《傍聴は別室で映像をみるだけにする》、しかも三菱重工から多額の金銭を受け取った岡本孝司・山口彰・阿部豊の三委員を残したままである。会議室での傍聴を排除することは保安院の密室性を示すものである。また、金銭を得ていた三委員が「利益相反」に反することは明瞭であるが、こうした委員を残したまま強行は保安院が何ら体質改善していないことの証明である。
経産省や原子力ムラは福島第一原発震災の直後から、原発再稼働に戦略を定めてきた。その準備をやってきたのである。保安院は東電に福島第二原発の再開の準備に入るように促したと報じられているが、彼らは4月に日本の全原発の稼働が停止する段階からの反撃の対応《戦略》を練ってきたのであり、ストレステスト→安全宣言→再稼働を道筋にしている。政府が政局で身動きの取れない間も官僚主導で事を進める準備をしているのだ。
経産省のこういう動きを監視し、不断の抗議や異議申し立てをすることがテントの重要な役割であるが、経産省は隠れた密室的に原子力行政を進めてきた従来のありようを反省し公開的に事を進めるべきだ。前で述べたようにトリビァルなことでテントに介入するのではなく、公開の討議に応じたらどうだ。
やはりまだ寒い。寒さに耐えながらのテント維持であるが、そのうちに春めいた日差しを感じることも増えると思う。最近はテント前で何時間かの座り込みにくる人も多い。少しの時間を利用してアピールなどを行う人もいる。テント周辺での行動はテントを支える力が厚みを増したことを実感させてくれるが、再稼働の動きに対決しつつ春に向かいたいと思う。ミニコンサート、舞踏、それぞれの方法でのアピール活動をやっていただきたい。防寒具の寄付をお願いしたところヒートテックスの下着などが届いている。紙面を借りてお礼を申し上げたい。我々は有形無形の励ましに元気づけられている。(M/O)
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