「脱原発」へ向け、意義ある出版記念の集い
- 2012年 2月 12日
- 交流の広場
- 池田龍夫
「脱原発」のうねりが全国に広がっているが、2月8日夜、東京千代田区でユニークな出版記念会が開かれた。原発論議が高まる中、いま注目を集めている弁護士2人が〝警世の書〟を相次ぎ出版。各界の同志が集まり、「脱原発の集い」のように祝賀パーティーは盛り上がった。
気鋭・弁護士2人の新著を祝う
海渡雄一弁護士の「原発訴訟」(岩波新書)と日隅一雄弁護士の「福島原発事故・記者会見~東電・政府は何を隠したのか」(岩波書店)刊行を祝って駆けつけた仲間は300人余。両弁護士が所属する「東京共同法律事務所」主催だったが、内輪のパーティーの枠を越えた素晴らしい出版記念会だった。著者それぞれが新著に賭けた思いを語ったが、その強烈な問題意識と情熱に、感動の耳を傾けた。このあと、奥平康弘・東大名誉教授(憲法学)が2人の業績を称える挨拶のあと乾杯。談論風発の宴は、午後9時近くまで続いた。
福島瑞穂さん(社民党党首)、河合弘之弁護士(脱原発弁護団全国連絡会代表)、原寿雄氏(ジャーナリスト)宇都宮健児弁護士(日本弁護士連合会会長)らが祝辞を述べて、タイムリーな新著刊行を称えた。会場は押すな押すなの賑わい。澤地久枝さん、佐高信氏、桂敬一氏らジャーナリストや弁護士仲間が、熱心に原発論議をしている光景は素晴らしかった。
堅い権力構造の岩盤にメス
権力構造「政・官・業・学・報」(ペンタゴン)の〝情報隠蔽体質〟に果敢に挑んで、ベールを剥がしていった海渡、日隅両弁護士の力作には敬服するばかりである。海渡氏が原子力問題に関心を持ったのは大学時代で、弁護士として30年間も各種原発訴訟を手がけてきたが、日本の司法判断のお粗末さに〝煮え湯〟を飲まされてきたという。
内容を紹介する紙幅がないため、病身の日隅氏が記者会見場に日参し、「東電・政府の情報隠し」と戦い続けた文章のほんの一部を紹介しておきたい。
事前の「情報開示」が極めて重要
「今回の原発事故対応が十分に行われなかった最も大きな原因の一つは、事前の情報開示が不十分だったことだ。津波の想定に対する新しい知見が耐震性をめぐる再評価の過程で広く明らかにされていれば、対策を直ちに成すべきであるという指摘が住民や自治体から成されただろう。……事故対応マニュアルが全て事前に開示されていれば、どのように情報がどう伝わるべきであるかが分かり、SPEEDIやERSSのデータが隠されるようなことはなかっただろう。今回のような対応を繰り返さないためには、そのような情報が開示される仕組みを設け、私たちが重大な政策決定の是非について判断できるようにならなければならない」(p200から引用)。
情報公開と国民の知る権利の行使こそ、民主主義国家の〝屋台骨〟であるとの認識を国民すべてが共有する必要性を痛感させられるのである。
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