利益相反はいけません――私の原子力日記その6(2/2)
- 2012年 2月 15日
- 時代をみる
- 原発金子勝
(3)新しい原子力安全規制体系と法律案について
1.40年廃炉の原則に関して、「長期間の運転に伴い生ずる原子炉等の劣化の状況を踏まえ、安全性を確保するための基準として環境省令で定める基準に適合していると認めるときに限り、20年を超えない期間であって政令で定める期間を限度として、一回に限り、延長の認可をすることができることとする」という例外規定が設けられていますが、削除すべきです。この深刻な福島第1原発事故の教訓を踏まえているとは考えられません。
●これは多数のパーツや配管などがある原子力施設において、金属劣化や中性子による脆化をすべて発見できるという「思い上がり」が前提とされています。
●しかも、基準を環境省令で簡単に変えられるので、なし崩しの延長につながる危険性が高いと考えられます。
2.安全規制を緩和することで安全が高まるのか、効果が疑わしい記述が見られます。たとえば、「許認可審査の重複を排除すべく、設備の型式承認制度を設けるとともに、発電用原子炉施設の設備等の変更のうち、災害の防止上支障がないことが明らかなものについて、届出制度を導入する」とあるが、誰が「災害の防止上支障がないことが明らか」だと判断するのか。いまや「やらせ」などで信頼を失っている電気事業者自身なのか。理解に苦しむ規定です。
3.今回の福島第1原発事故がもたらした事態は、立地自治体と違って、電源三法交付金をもらっていない周辺自治体が放射能被害を受けたことです。「原子力事業者が防災業務計画の協議や事故事象の通報等を行うべき関係」について「周辺都道府県知事の要件を改正する」とだけあるが、周辺自治体および知事にも立地自治体と同じく、防災対策だけでなく、原発内部への立ち入りなどを含めた原子力協定を結ぶ権利を与えるべきです。
(4)論点整理について
1.「脱原発依存」が本会議の議論の前提であるとすれば、意見分類Ⅰはそもそも論理的にはありえません。Ⅱ~Ⅳが選択肢であることは明らかです。
2.同時に、核燃料サイクル政策に継続可能性から原発の維持可能数が決まってきます。そこを無視した議論は意味がなく、極めて無責任です。
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ちなみに、先回,私が提出した六カ所村再処理施設の財務状況に関する資料に対して、事務局から反論が出てきました。会議資料5がそれですが、URLは以下です。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei12/siryo5.pdf
これに対しても、私は反論とともに、いくつかの疑問を出しました(浅岡委員の意見書の次になっています)。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei13/siryo3.pdf
その後、説明を受けたかぎりでは、以下の点がわかりました。
(1) 福島第1原発事故隠しが大きく問題になる一方、六カ所村の再処理施設の建設が遅れそこで2004年8月30日に開かれたエネ調(総合資源エネルギー調査会)電気事業分科会において、事業の「不確実性」が問題になりました。
(2) 電気事業会が2004年に改めて提出したバックエンド費用18.8兆円は、2005年に会計上の変則措置が導入されるとともに、電気料金に上乗せされる再処理料金に含まれるようになりました、つまり借入金コストも含めて、いつの間にか、建設費の増加分(約1兆4千億円)が電気料金(つまり国民負担)に乗せられていたということです。
(3)3.2万トンの処理量があれば、採算が成り立つが、すでに原発敷地内などに2万トン積み上がっているので、脱原発依存でも大丈夫ということでした。でも、本当なんでしょうか。問題は以下にあります。
(4)20年近くも再処理施設が稼働していないために無理な資金調達が行われています。
第1は、日本原燃が電力会社から前受金を1兆円(10年返済)調達しています。借入金は電力会社が債務保証をつけています。つまり銀行が再処理施設を有担保の対象とは見なしておらず、電力会社さん、債務保証をつけてよね、ということです。
第2に、しかもこうした変則措置だけでは資金が賄いきれず、日本原燃は2011年3月期に4,000億円の増資をし、それを電力会社が引き受けています。増資に関して、もし電力各社が内部留保で増資を引き受けたとすれば、新たに生じている国民負担を隠していることになります。総括原価主義でコストを乗せられる準公的企業であるはずの電力会社がとるべき行為であるとは思われません。
(5) 第3に、さらに問題なのは、再処理施設がほとんど再稼働していないにもかかわらず、すでに約4兆円積み上がっている積立額のうち約1兆6千億円を取り崩して原燃に支払っているということです。設備が動いていないのに減価償却などとして支払っているのです。もし、このまま稼働しなければドブに捨てるのと同じです。機械によっては、すでに減価償却も終わっているものもあります。
仮に数年後に稼働したとしても、問題は起きます。経過年数をとうに過ぎた設備(つまり老朽化した設備)を動かすことになるからです。20年たって、ほとんど使っていないから、新車同然だという理屈です。それで40年も動かすつもり?事故が心配されます。もし、新たな更新投資ないし追加投資をすれば、その分は積立金不足が生ずることになります。典型的なツケの先送りパターンです。
(6)いっそ、もっと実現可能性の高い小さな溶解炉にしたらどうですかとの問いには、それも大きな費用がかかりますということでした。だからといって、このままでいいんでしょうか?会計の透明性と選択肢をはっきりとさせないと、ますます引き返せなくなっていく危険性があります。
安全性が担保できない原発だけでなく、やっぱり六カ所村の再処理工場も“不良債権”なのです。
2012年02月13日
http://blog.livedoor.jp/kaneko_masaru/より転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1825:120215〕
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