争点明確化がこれからの課題―参院選開票当夜の感想―
- 2010年 7月 13日
- 時代をみる
- ナショナリズム半澤健市参院選
《対立軸の不在は続く》
第22回参院選の開票結果は自民党とみんなの党が健闘し、公社共3党と簇生新党が不振であった。戦前予想から少しだけハミ出たという感じである。
新聞社・通信社予想では共同通信が一番近かった。共同は民主49、自民46であった。外れた社をあえて言えば時事通信である。時事は民主54は微妙、自民40台半ばであった。新聞各紙は概ねこの間に分布している。(社別予想数字は7月10日発行の「夕刊フジ」記事による)
この結果をどう見るか。民主党への失望感の表れということになるだろう。もともと争点のない選挙である。メディアは消費税が唯一の争点と書いた。しかし与野党の第一党が10%というのだから争点ではない。争点ならば〈民主・自民〉対〈公明・共産・社民・国民新・みんな・新党改革〉の対決という構図である。だがそんな構図を提示したメディアは皆無であった。
本来の基本対立は二つあった。
①普天間問題の不平等条約改正―最後は日米同盟非軍事化―への連結である。
②新自由主義か日本式社民主義かの選択である。
《沖縄県遺族連合会長の真情を知る》
普天間問題は今真っ当な言動は沖縄県民にしかない。
沖縄県遺族連合会長の仲宗根義尚氏は慰霊の日(6月23日)の挨拶で菅首相を前にして次のように述べた。
▼政府は、普天間基地の移設を国外・県外と公約したが、移設先を(名護市)辺野古崎として日米で合意し、菅直人総理も踏襲を明言した。県議会の決議や県民大会で県民の意思は明確に表明されている。戦争につながるいかなる行為も反対の観点から容認できない。
今まで遺族代表は米軍基地の縮小を求めてきたが、普天間基地の県内移設反対に踏み込んだことはなかった。日米合意撤回を訴えた予期せぬ発言に5000人の参列者から大きな拍手が沸いた。仲宗根氏は例年通りの式辞でよいか悩んだが、自身の半生を振り返る中で腹をくくった。氏は父親と兄を沖縄戦で失っている。悩んだのちに、「自民党から共産党まで超党派で県内移設を拒否する県議会決議があり、県民大会も開かれた。今の沖縄の世論を高まりを伝える責務があると考えた」と語っている。(松元剛「慰霊の日 遺族連合会長の直言」、『世界』10年8月号、による)
鳩山の迷走を指弾する自民党、公明党などに尋ねたい。あなた方は米軍基地反対という沖縄県民の決意を鳩山に騙された誤った判断とでもいうのか。あなた方の理屈を詰めていくとそうなるはずだ。現地の自党の決議をどう考えているのか。
《社民主義どころか偏狭なナショナリズムの台頭》
「新自由主義か日本式社民主義か」のテーマは、「みんなの党」の渡辺喜美・江田憲司コンビのパフォーマンスで対立軸の意義が薄らいでいる。それに改革賛成派が相乗りしている。「業務仕分け」は、新自由主義の文脈で認識されている。私は「業務仕分け」を民主主義の視点で考えるべきだと思うがそう考える人間は少数のようである。
社民主義どころではない。閉ざされたナショナリズムの気配は想像以上に強い。
投票前日の夕刻、私は新宿西口広場で「たちあがれ日本」街宣車の選挙演説を観ていた。平沼赳夫、石原慎太郎、中山恭子、与謝野馨、中畑清、藤井けんじが次々に立って口々に民主党政権は「左翼政権」、「全共闘政権」だと批判した。菅直人の思想は「市民主義共和国」であるから、日本民族の誇りが失われると批判した。特に「外国人地方参政権」、「夫婦別姓」への批判は熱がこもっていた。日の丸の大旗、小旗の林立と熱狂的な拍手は昨年の総選挙投票前日に池袋でみた小池百合子の演壇を囲んだ雰囲気に酷似していた。
《対立軸を明確にして政界再編へ》
これからどうなるか。どうすればよいのか。基本テーマによる対立軸の明確化が必要である。最終的には政界再編成につながるべきだ。メディアの報道姿勢も「永田町報道」と「政治家動静」から離脱する必要がある。だが政治の現実は混迷が続くだろう。個別政策の論議に無駄なエネルギーが消費されることになるだろう。英雄待望論が立ち現れるかもしれない。だからこそ平和憲法にワイマール憲法の運命を辿らせてはならないのである。
(10年7月11日22:00現在)
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